二十年に一度の神事 伊勢神宮 第六十二回式年遷宮

二十年に一度の神事 伊勢神宮 第六十二回式年遷宮

日本人にとって、寺社への参拝は、宗教儀式だけではなく、生活に則した特別な意味合いを持っている。江戸時代までは、一般庶民の長距離旅行が許されていなかったが、神社仏閣の参拝は特別に認められていた。その中でも、富士講(地域社会で旅行積立を行い、霊峰とされた富士山へ参拝すること)と、伊勢神宮への参拝旅行は別格とされていた。

そのような歴史もあり、伊勢神宮は、今でも多くの参詣者が訪れる。特に今年は、20年に一度の式年遷宮(しきねんせんぐう)の年ということもあり、多くの参詣者でにぎわっている。

筆者は、名古屋から近鉄で伊勢へ向かった。近鉄名古屋駅に乗り変えたとたん、見つけたのが東京大神宮が奉納したこの看板。

二十年に一度の神事 伊勢神宮 第六十二回式年遷宮

近鉄で名古屋から約1時間弱。近鉄伊勢市駅でも、式年遷宮を祝うのぼりが立っていた。

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駅舎を出て、JR伊勢市駅のほうへ歩いてみると、駅前から伊勢神宮一色。おごそかな雰囲気だ。

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酒造会社が奉納したもの。単に広告とは言い切れない信仰心と、独特の雰囲気を感じる。

二十年に一度の神事 伊勢神宮 第六十二回式年遷宮

伊勢神宮への案内板も、独特の趣がある。外宮(げくう)という案内板が出ているが、実は、伊勢神宮と呼ばれる場所は、外宮(げくう)と内宮(ないくう)という2箇所が存在する。

正確な説明を加えると、伊勢神宮は、正式には「神宮(じんぐう)」と呼ばれており、豊受大神宮(とようけだいじんぐう 外宮=げくう)と、皇大神宮(こうたいじんぐう、 内宮=ないくう)と125の神社の総称である。

外宮はJR伊勢市から歩いて5分ほどの場所にあるが、内宮は4キロほど離れた場所にある。したがって、伊勢神宮全体を1日で全て参拝するのは、広すぎてなかなか大変だ。

伝統的に、外宮から参拝して、内宮を参拝するのがならわしになっているそうだ。時間に余裕がなければ外宮だけを参拝し、宿泊が可能なら1日目に外宮を参拝し、翌日に内宮を参拝すると良いかもしれない。

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駅を抜けて、外宮に向かう参道にて。

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参道から道路を渡って、外宮に入ると、独特な趣のあるのぼりが

 

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いよいよ外宮へ 外宮の祭神 豊受大神についての説明が

 

●式年遷宮(しきねんせんぐう)とはなにか

神道では、清浄と自然のものを神に捧げるを基本的な考えとして、日々の生活のことを神事とした祀りが毎日行われる。特に、伊勢神宮の外宮では御餞(みけ・食事をさす言葉)の神である豊受大神(とようけのおおかみ)に捧げる祭祀が、厳格に執り行われている。

日々の食事を捧げる「日別朝夕大御餞祭」(ひごとあさゆうおおみけさい)では、清浄な食材を捧げることはもちろん、調理に使う火も、ガスや石油は使わず、御火錐具(みひきりぐ)という神具で、摩擦熱を利用して起こされる徹底ぶりだ。

日常にまつわる祭祀や、農耕などの季節にまつわる祭祀は、年間で実に1500回を越えるとされている。それらの祭祀の中でももっとも大きな祭祀の一つが20年に一度行われる式年遷宮(しきねんせんぐう)だ。神を祀る社を全て建て替え、奉納する神宝714種1576点をすべて新しく作り替えて奉納する極めて大掛かりなもの。

社に使う建材も、木の切り出したから製材に至るまで、厳格な神事にもとづいておこなわれる厳格を保っている。

式年遷宮は、690年に持統天皇が行った後、現在まで62回続いている伝統儀式であり、元号が平成に変わってからは2回目となる。

残念ながら、奉納される神宝の撮影は許可されなかったが、外宮にある「せんぐう館」では、一部が展示されているので、ぜひ見学されるのをお勧めしたい。1200年以上もこれだけの工芸技術が受け継がれていることや、奉納される神宝の美術性の高さは、多くの人が驚嘆するのではないだろうか。

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奉納される神宝の一部が展示されている「せんぐう館」 式年遷宮についての説明資料も展示されている(入館料 大人300円 外の休憩スペースは無料で使用可)

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休憩スペース側から「せんぐう館」を見たところ

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無料で利用できる休憩スペースから、せんぐう館のまがたま池を眺めたところ

 

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せんぐう館で暑さをしのいだ後、いざ参拝へ

 

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参道を進むと、神殿の前の社務所ではご朱印状に捺印を求める人達が。(撮影規制があるため、一部を撮影しているが、実際はもっと人が多い状態)

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参道のあちこちで見られた光景。外宮をはさんだ駅との道路に観光協会のボランティアの方たちの詰め所があり、遠方から参拝する方への案内を行っていた。

 

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さらに参道を進むと、いよいよ本殿へ

 

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本殿はとにかく人、人、人。

写真で見るとさほどでもないようだが、鳥居をくぐると、塀で仕切られた広い空間が横に広がっていて、どこからも広大な社殿全体を見渡せるようになっている。人の多さに驚くが、めいめいが祈りを捧げる姿は、とても荘厳な雰囲気だ。残念ながら撮影禁止となっているため、本記事では紹介できないが、機会があったらぜひ自分の目で確かめてほしい。

社の屋根は萱葺き。苔むして独特な趣だが、このままでは建物自体が傷んでしまう。そのため、技術継承もかねて、20年に一度、社を建て替えるようになったのだろう。社殿の隣には、遷宮予定の社の建設が進んでいた。

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こちらの社殿も、近寄ると全体が見えるが、近寄っての撮影は禁止されているため望遠で撮影した。

神の住まいと言うにふさわしい広大な敷地に、社がたたずんでいる様は、とても美しい。隣に建つ社と対比すると、なんとも不思議な気分になるが、どちらも荘厳な雰囲気で気持ちが洗われる。

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日が落ちると、伊勢神宮は、また独特な雰囲気だ。

夕刻や早朝の参拝可能な時間は決まっているので注意。また、遷宮が実施される日は、参拝ができなくなるので併せて注意したい。

内宮 10月2日(水)午後1時より終日
外宮 10月5日(土)午後1時より終日

9月13日(金)以降、遷宮諸祭並びに遷御の準備等により随時規制される場合がある。詳しくは、伊勢神宮ホームページなどで確認されたい。

 

参拝記念の土産物

伊勢といえば、赤福が有名だ。もちろんお土産に最適だと思う。また、他に伊勢ならではの菓子や特産品もたくさんあるから、その中から見繕うのもいいだろう。

筆者個人が、参拝記念に勧めたいのはこの干菓子。

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神餞(みけ)と書かれた干菓子(ひがし 落雁のような菓子)

神にささげる食事という意味だが、菊の形をした上品な甘さで、なんとも御利益のありそうな趣のある菓子。外宮の社務所で入手できる。3つ入りで初穂料は300円なので、いかがだろうか。

何かと世知辛い話が続く時代だ。神頼みというわけではないが、旅の中で神に祈り、気持ちを洗って日々の生活に戻るのは、けして悪いことではないだろう。

 

※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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