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「値段は決まっていません!」満足した分だけ支払う実験的試み『鬼丸食堂』ってどんなお店?

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(※編集部より:鬼丸食堂の鬼丸さんはガジェット通信編集部に所属する編集スタッフですが、オフィスや鬼丸食堂のある原宿、そして自宅、旅先など好きな場所からリモートで編集作業してもらうという形でガジェット通信の仕事と個人で取り組んでいる鬼丸食堂を両立しています。というわけでガジェット通信からすると半分身内ではありますが、鬼丸食堂の取り組みは客観的にみても非常に興味深いものであろうということで、今回、第三者目線で取材させてもらいました)

提供する食事もドリンクも、すべて値段を決めず、お客さんに任せる“投げ銭”スタイルで営業する「鬼丸食堂(おにまるしょくどう)」。食事をして自分が満足した分だけ支払いをするという、一風変わったルールで今注目を集めています。

外食をした時、当たり前の様に決められた価格を支払う私たちにとっては刺激的な試みであり、美味しく・楽しくご飯を食べながら、物の価値や満足度について考えることができるユニークな場所。そのアイデアはどこから生まれたのか? 実際問題営業は大変ではないのか? 今回は、『鬼丸食堂』主催兼シェフの鬼丸美穂さんに色々とお話を伺いました。

――「鬼丸食堂」は、ご飯を食べたお客さんが「満足した分だけ支払う」というユニークなシステムで営業していますが、このアイデアはいつ頃生まれたのですか?

鬼丸:3年くらい前に友人から『ぷよぷよ』というゲームを作った米光一成さんの“お金がなくなり、競争がなくなり、労働がなくなる”という『米光予言』の話を聞いて、「ほんと!?でもすごく面白い!」と思ったのが始まりなんです。

――お金が無くなる?

鬼丸:価値をお金という数値に変えてモノにくっつけて交換するのではなくて、人にモノをあげるのが嬉しい “ちゅ”システムに変わるんです。

――“ちゅ”!?

鬼丸: “ちゅ”っていうのはもらった人がうれしい、それを見てあげた人がうれしい、そんなうれしさの単位で、うれしさはあげた分だけ減るんじゃなくて両方に増えたりするんです。

たとえば誰かがお花をプレゼントするっていう行為をする。そうすると、お花をくれたっていう気持ちとか想いとか全部合わさって、お花の価値そのものよりも、受け取った人は自分でお花を買うよりも、もっと嬉しかったりするわけですよ。喜んでいるその人の姿をみてプレゼントした人も嬉しくなる。


例えば上の図のように、お金でお花を買うとすると、販売者のお金は増えるが、購入者のお金は、減ってしまう。


しかし、幸せ“ちゅ”の考えだと、お花を貰ったほうはもちろん嬉しいので“ちゅ”が増え、あげたほうも、喜んでもらえたことが嬉しくて“ちゅ”が増えるということに。

鬼丸:その嬉しさを別の人に返したり。そういう想いとか、愛とか、優しさみたいなのを交換していけば、“ちゅ”の総量はどんどん増えていくし、その流通が広がればお金がなくてもなんとかなっちゃう世界が来るのではないかということなんです。想像したら楽しいですよね。

――そんなみんながハッピーになれる世界がきたら素敵です!

鬼丸:そんな「米光予言」に影響を受けて、いきなりお金をなくすのは難しいけど、お金の重さを少し軽くしようと思って自分ができることで実験的に始めたのが、料理を満足する分だけ食べていただき、満足した分だけお支払いしていただく投げ銭スタイルの食堂なんです。

――鬼丸さんは“食”を通して実験しているんですね。

鬼丸:お客さまで実験をしているという……(笑)。
980円のランチが美味しくなくてガッカリしたり、損をしたという感覚になる時ってありませんか? その逆で、こんなに美味しいのに980円は安いなあ、1,500円くらい払えるなと思うこともある。

また、パーティーなども、大体が会費制で金額が決まっているけれど、遅れてきた人は料理が残っていなくてほとんど食べられなかったり、逆にたくさん食べる人や飲む人もいる。

――人によって差がありますよね。“割り勘負け”的な。

鬼丸:「損したな~」という気持ちが生まれるのはつまらないですよね。世界が残念な方向に向かっちゃう。
価値って人によってそれぞれ違う。いろんな価値の基準で考えて、損した、得したという気持ちが出てくる。でも自分が思った価値を決めて、お金を払えば、損したという気持ちにならないでしょう。

――確かにそうですね。

鬼丸:だからこの実験食堂ではまず食べてもらって、帰るときに満足した分だけお支払いをしてもらっています。そんなの難しいという人もいるんですけど、ちょっとしたゲーム感覚で楽しんでいただければと思っています。


↑その日によって代わるテーマで提供されるメニュー。大皿に自分が食べたい分だけを取り分ける。

――あと支払はお金じゃなくてもいいとか。

鬼丸:そうなんです。でもゴミとかは困りますよ。自分でもいらないでしょう。料理を食べてもらって、その価値に見合うだろうと思えるものでお願いしています。モノとお金を合わせて支払ってくださる人もいます。

――今までお金以外で支払っていただいた報酬で印象に残っているものってありますか?

鬼丸:たくさんありますね。似顔絵を描いてくれたり、曲を作ってくれたり、陶芸家の方が自分で焼いた食器を持ってきてくださったり。ワッフルを焼いてくれたり、インドカレーの日に本格的なカレールーを持ってきてくれた人もいました。そのときは仕込んできたカレーがなくなってしまって、すごく助かった(笑)。下ごしらえを手伝ってくれたり、食材を持ってきて、一緒に作ってくれる人もいました。


↑物による支払いには、訪れた人の個性が。写真は「デザートにどうぞ」と持ち込まれた、巨大なフルーツポンチ!

――いろいろな人の価値が集まってきて面白いですね。

鬼丸:お金はとっても便利なものなんですよ。価格が1,000円なら1,000円払えば良いのだから考えなくてもよくて。だから「支払いはお金じゃなくても良い」っていうのは、逆にとても難しいと思うんです。いろいろ考えて相手が喜んでくれるかなと思いながら持って行く。面倒なことですよね。お金より重たいしかさばるものも多い。

いろいろ考えて持ってきてくださって、選んでくれているその人の姿を想像すると、料理やサービスを提供する、お金を払う、もらうだけではないうれしさや楽しさが生まれて、さっき説明した“ちゅ”を感じます(笑)。お金というものに縛られなくなる世界が本当に来るのではという気持ちになるんです。

――ぜひ実現するのを見てみたいです。

鬼丸:食堂を開くには場所や手伝ってくれる人や食材、料理を盛り付ける食器なんかも用意しなければいけなくて、どうしてもいろいろとお金がかかってしまいます。

――今の世の中だと、実際そうなってしまいますよね。

鬼丸:いつか、お金を使わずに食堂が開けるようになったら面白いと思っています。誰かが持っているスペースを使わせてくれる。食材や食器はまた違う誰かが用意してくれる。準備や片付けを手伝ってくれたり、音楽を演奏してくれる人がいる、私が料理を作って食べてもらう、全部循環させちゃう。

先日、久しぶりに『米光予言』の話をしたくて、米光さんに『鬼丸食堂』に来ていただいて、予言はけっこう現実になってきているよねという話をしていました。鬼丸食堂の実験を通じて私たちもそれを実感していたので、今後も引き続きこの実験を続けていく予定です。

――投げ銭システムで今はなんとかなっているんでしょうか。

鬼丸:実際のところ、トントンかちょっと赤字くらいです。自分たちの労働報酬はまだほとんど出ていないので、お店としてはいけないですよね。でもその時にすぐ使えなくてもいろいろなものをいただいているし、アイデアをもらったり、よい出会いもあるから、トータルではプラスかも(笑)

コストをもっと抑えなきゃと思っているんですけど、毎回いろいろな国の料理に挑戦したり、満足してもらいたいと思うとなかなかできなくて。ここはもう少しうまくやらなければいけないところですよね。お客さんの方が心配してくれています(笑)。

――スタッフは何人いるんですか?

鬼丸:基本的には私とパートナーの女性2人でやっています。その他に都度、お手伝いをしてくれる人を頼んだりしています。「食事代はいらないから手伝って!」とか(笑)。

――これからどのくらいの頻度で開催していく予定ですか?

鬼丸:先月はテスト的に週1回のペースでやっていたのですが、今後は月に1、2回で考えています。投げ銭スタイルだけでなく、ケータリングや値段、人数が決まったパーティーもお受けしていますので、そういったご要望もあればぜひ!

値段も決まっていないし、メニューもない、そんな不思議なお店ですけど、興味を持っていただけたら、遊びにきてください。満足していただけるように美味しいもの作りますので!

――どうもありがとうございました。

インタビューの中にもあったように、『鬼丸食堂』は現段階では毎日営業しているわけではないので、事前にブログやFacebookなどでチェックしてから向かうと良いかも。メニューも毎回異なるので、食べたいメニューでふらっと立ち寄るもの面白いと思います。
もちろん素人が作る料理とは一味違う美味しさがあり、お酒も用意されているのでとっても楽しいですよ!


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【今後の開催予定】
・7月26日(金)  19:00-22:00 マヤ・メキシコ料理
・8月23日(金) 19:00-22:00
・9月1日(日) 18:00-21:00
・9月27日(金) 19:00-22:00
・10月25日(金)  19:00-22:00
※掲載当初と開始時間が変更になったため、修正いたしました。ご注意ください。

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記者:

アニメや可愛いものが大好き。主にOtajoで執筆中。

ウェブサイト: http://otajo.jp/

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