ドラマ『悪霊病棟』内藤瑛亮監督インタビュー「Jホラーの新たなステージへ」

お化け屋敷プロデューサー・五味弘文と映画『おろち』やTV『ほんとにあった怖い話』シリーズ等の代表作を持つJホラー先駆者、鶴田監督がタッグを組んだドラマ『悪霊病棟』。町はずれの病院を舞台に、霊的能力を持つナースの周りで次々と起こる怪奇現象を描く、話題作です。
主演を務めるのは、本作が初のホラー作品出演となる女優・夏帆さん。そして、『牛乳王子』や『先生を流産させる会』など数々の問題作を世に生み出してきた内藤瑛亮監督が、連続ドラマに初挑戦しています(第5、6話を担当)。
お化け屋敷と呼ばれていた旧病棟を舞台としたクラシックなスタイルと、今まで見た事の無い新鮮なキャラクターの組み合わせは、新しいJホラーの展開を期待させます。今回は内藤監督にドラマ初挑戦の感想や「幽霊とモンスターの違い」など、興味深いお話を色々と聞いてきました。

――まず『悪霊病棟』の監督の1人に抜擢された感想を教えてください。
内藤瑛亮(以下、内藤):日活のプロデューサーの西ヶ谷さんという方が僕の自主映画『牛乳王子』を観て、「いつか一緒に仕事をやりたいな」と思ってくれていたそうなんですね。僕は連続ドラマの経験が無いので、いきなり大丈夫だろうかという心配はありました。でも、鶴田監督の作品は昔からたくさん観ていたし、観客だった僕が作品でご一緒出来るのが何よりも光栄だなぁと。
――Jホラーの先駆者である鶴田さんと作品作りをする喜びがあったという事ですね。
内藤:Jホラーって一時期盛り上がったけど、その後下火になって、鶴田さんはそうした状況をずっと見ている方なので、また盛り上げる為にはどうしたら良いだろうといつも考えているんですよね。
これまでの鶴田さんの作品には共通点があって「主人公が普通の人」という事なんですが、例えば『リング』なら、松嶋菜々子さんよりも貞子が強く印象に残ります。主人公が“普通の人”である方が、幽霊は本当に出るんだというリアリティがある。でも鶴田さんは「それは一度終わったことで、次のステージに行かないといけない」と考えていて、特徴的な「ホラーヒロイン」を生み出そうとしているのが、この『悪霊病棟』なんですね。ドラマを観た人が幽霊を思い出すのでは無くて、主人公を思い出す作品にしたいと。
――ホラー初出演の夏帆さんに監督から何かアドバイスはしましたか?
内藤:日本未公開の『インキーパーズ』という幽霊屋敷を舞台にした映画があるのですが、Jホラーからの影響を感じてすごく面白かったのと、主人公の女の子のコミカルな演技が面白くて夏帆さんにDVDを渡しました。
夏帆さんは、もともとホラー作品は食わず嫌いで全然観ていなかったそうですが、今回の作品の為に薦められた映画を観たら楽しかったと言っていましたね。ホラーって演じる方はすごく楽しいんです。
――本作は病院を舞台にするホラードラマという“鉄板”感がありますよね。
内藤:そうですね。病院設定なので、所作とか病院としてのリアリティは大切にしています。医療指導の方にも入ってもらって、病院を舞台としてきっちり見せつつ幽霊描写を入れていくというものがこだわっている部分です。
――暗い病院で振り返ると幽霊が……。という演出は背筋が凍ります。
内藤:今回のドラマでは鶴田さんやスタッフの方と「幽霊とモンスターの違い」という話をしました。僕はモンスターや殺人鬼が出ている映画が好きなので、無意識に演出がモンスター寄りになって。
例えば「主人公が不穏な空気を感じて振り返ると、閉まっていたはずのドアが開いている」というシーンがあったとして、僕は最初「ドアがゆっくり開く」という演出をしました。そうしたら鶴田監督に「内藤君、それだとモンスターになっちゃうよ」と言われて。閉まっていたはずのドアが「気付くと完全に開いている」というほうが幽霊的だと。そうした小さい動き一つ一つでモンスターと幽霊の違いを表現出来るというのはとても勉強になりました。