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連載終了作品がファンの応援で蘇る! 女性漫画家が「クラウドファンディング」で挑む新たな漫画の形

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インターネット上で、不特定多数の人にプロジェクト実現への支援や協力を求める「クラウドファンディング」。ベースとなるビジネスモデルは17世紀にも存在していたとされる試みと言われていますが、2010年代に入り、クラウドファンディングを支援するサイトが続々と登場。現在日本でも10つほどのサイトが存在しています。

音楽・芸術活動を行うアーティストへの支援からベンチャー企業への投資まで、色々な募集が行われているわけですが、その中でも漫画好きのオタ女が注目なのが「漫画家 佐藤智美-女子刑務所で働く医師の活躍を描いた『ムショ医』続編を描きた~い!」というプロジェクト。

2008年から2013年まで5年間『週刊漫画Times』にて不定期連載を行ってきた『ムショ医』という作品の続きを書く為に、支援を募るというもので、実現すれば連載終了作品が再び蘇る漫画界”初”の「アンコール作品」の誕生となります。

プロジェクト開始直後には、佐藤智美先生の旦那様、佐藤秀峰先生による「嫁にインタビューしてみた。」(ブロマガ内)というエントリーも話題に。今回は、佐藤智美さんに今回のプロジェクトが実現したら描きたいテーマ、「ファンが読みたい漫画を決める」という漫画連載の新しい方向性まで、お話を伺いました。

――まずお聞きしたいのですが、連載が終了した漫画をクラウドファンディングによって、再び再開させようという企画自体のスタートです。

佐藤智美さん(以下、佐藤):クラウドファンディング自体は知っていたのですが、自分がそれをやろうとは思っていなくて、佐藤秀峰さんがクラウドファンディングについてTwitterでつぶやいた事によって「何か企画をしませんか」というお声がけをいただいたんですね。その時にちょうど私の作品が打ち切りになりまして。


――女性刑務所の内で働く非常勤医の活躍や悩みを描いた『ムショ医』という作品ですね。

佐藤:はい。私の初の連載作品で、実際に女子刑務所にも足を運んで描いたとても思い入れの強い作品です。連載は途中で打ち切りとなり、コミックは5巻までしか出す事が出来なかったのですが、その後のストーリーも自分の頭にはあったので、人気が無くて打ち切りになるのは仕方ないのは分かっているけど、悔しくて。私は悲しいよりも悔しい方が涙が出るタイプで、打ち切りを告げられた後、時間差攻撃でどんどん泣けてきたんですよね(笑)。

――この作品は今「漫画 on Web」で全話無料公開されていますが、佐藤先生はインターネット上での活動がとても先進的ですよね。まだ漫画家さんの中には「無料で漫画を公開するなんて!」という考えの方が多いのでは無いでしょうか?

佐藤:私も最初はすごく迷ったんです。『ムショ医』の最終巻5巻は2013年4月16日に発売したのですが、単行本の発売とWebでの無料公開の時間は少し空けようか、とか。実は最終巻の発売日と同日にWebでの「全巻無料公開」も考えていました。電子書籍の普及で紙で読む人とwebで読む人があまり被らないという事が段々分かってきていたので、同時に公開しようと。ただ時間的なことや、クラウドファンディング・サービスのサイトを急遽変えなければならないというトラブルもあって、「同時公開」は実現しませんでしたが(笑)。個人的な意見なんですが、いまでも紙で漫画を読む人は、いくらWebで無料で公開されていようが単行本を買ってくれるんですよね。もちろん「今までお金出して買っていたのに」と文句を言う方が存在することはするんですが。

また、電子書籍の価格設定って高すぎるとバッシングされますよね。私も旧作だとそう感じてしまう事もあるんですが、完全新作だったらしっかりとした値段をつけたほうがいいし、その場所でしか読めない作品ならば単行本よりもうんと価格を下げるというのは違うと思うし。

――まさに今回のクラウドファンディングは「ここでしか読めない作品」の作品の提供ですものね。漫画の連載ってこれまでは、編集さんや出版社の方の意向で決まってきたものですが、「まだ読みたい!」という読者の声で連載を続ける事が出来るのは、本当に素敵な試みですよね。私自身、大好きな作品が打ち切りになって悲しい想いをした経験があったので……。

佐藤:漫画を出版するというのはもちろんビジネスでもありますから、一定数の収益が出ないと難しい部分がありますよね。でも、私の様にまだ描きたい話がある、そしてまだ続きを読みたいと思ってくださる方がいる、そんな両方の想いがクラウドファンディングというものでつながるのは、新しい漫画の形だなと思いますね。クラウドファンディングじゃなくても、例えば「ブロマガ」の様な有料ブログや有料メルマガで作品を連載するという形もあるだろうし、アプリにして販売するという形もあるだろうし、もう漫画の形って一つじゃないんだなって感じています。

――今回のクラウドファンディングの目標金額の「70万円」というのは、どういった指標から設定したのですか?

佐藤:今回のクラウドファンディングでは『ムショ医』の3話分、60ページくらいをイメージしているのですが、それを制作するのにかかる人件費がこのくらいの価格という事ですね。おおよその原稿料から試算して。


――クラウドファンディングの大きな特徴の一つが、支援してくれた方へのリターン、佐藤先生が今回プロジェクトを行っている「MotionGallery」で言う「コレクター」の方への特典ですね。

佐藤:特典を何にするかはとても迷いましたね。500円のチケットを買っていただいた方には作品奥付に名前をクレジットします、1,000円のチケットにはプラス「作品データ」をプレゼント、10万円のチケットには世界に一つだけの「直筆似顔絵」をプレゼント、とチケットの金額によって、特典が変わっていくわけですが、特に今回の試みならではだなと思う特典が2つもあります。まず一つは壁紙データ(カラー描き下ろし)のプレゼント。これは、単行本でいうカバーにあたるイラストなのですが、データでプレゼントしたほうが、PCの壁紙にしたり、待ちうけ画面に使ったりと色々と活用出来ますよね。

更にもう一つは「プロジェクト限定”オリジナル書籍”」でしょうか。こちらはリーズナブルな価格で「たった一部から発注、販売が可能」なオンデマンド印刷を利用した、いわゆる「自費出版」による書籍で、今どんな紙を使おうか、シリアルナンバーを入れようか、など絶賛アイデアを出している中です。私自身も出来上がりがとても楽しみな特典なんですよ。

――プロジェクトの開始から1ヶ月が経過して、現在集まっているお金が50万円弱と、期限まで2ヶ月ほどを残して7割達成しているわけですね。

佐藤:プロジェクト開始から1日で22万円ほどが集まり、皆さんのご協力に本当に感謝ですし、何よりも嬉しいのが応援コメントですね。暖かい言葉をいただいて、心から良い物を作りたいと励みになります。

――プロジェクトが実現したらこんな話を書こうと思っているよ、という構想を少しだけ教えていただけますか?

佐藤:自分の子供を虐待した母親の話を書きたいと思っています。女子刑務所って、男子刑務所と違って万引きをした人も殺人を犯した人も同じ部屋に入るんです。だから、最初は同じ部屋の人が何の罪で囚役しているのかが分からなくて、殺人を犯した人など長期受刑者が集められる会に同室の人が出かけたりすると気づいたりするそうなんです。

そして、女性の間だと自分の子供を殺した人というのが最も軽蔑される存在で。男性の間だと性犯罪を犯した人が一番蔑まれる存在だそうですが、そういった女子刑務所ならではのエピソードを描きたいです。

――それは『ムショ医』連載の為に、刑務所を取材したり、たくさんの勉強をしてきた佐藤先生だからこそ描けるストーリーですね。

佐藤:後は、連載中は主人公の生い立ちやそれまでの半生を描ききれなかったので、そこも是非描いてみたいですね。

――プロジェクトが実現し、そのストーリーが描けること。そして支援してくださった方へその作品が届く日を楽しみにしております。本日はありがとうございました。

漫画家 佐藤智美-女子刑務所で働く医師の活躍を描いた『ムショ医』続編を描きた~い!

http://motion-gallery.net/projects/mushoi2
応援は500円から可能です!


佐藤秀峰先生のブロマガ「少年 佐藤秀峰」では、漫画家同士による興味深いインタビューを読む事が出来ます。ぜひそちらもご覧ください!

少年 佐藤秀峰「嫁にインタビューしてみた。」
http://ch.nicovideo.jp/shuhosato/blomaga/ar250173[リンク]

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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