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最近よく耳にする「日本発研究論文数の減少や質の低下」という話題について、その議論や方法の賛否はともかくとして、自分の関わる研究分野がどのように評価され、どのような結果であったかを知ることは重要でしょう、と思い調べてみた。(豊橋技術科学大学 秋田一平)

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今回は秋田一平さんのブログ『circuits group@ICG』からご寄稿いただきました。

最近よく耳にする「日本発研究論文数の減少や質の低下」という話題について、その議論や方法の賛否はともかくとして、自分の関わる研究分野がどのように評価され、どのような結果であったかを知ることは重要でしょう、と思い調べてみた。

以下は、集積回路設計に携わる身としての簡単な調査過程を示したメモである。意外と長くなりました。。因みに、下記のベンチマークを参考に調査を行った。

「研究論文に着目した日本の大学ベンチマーキング2011」『科学技術政策研究所[National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP)]調べ』
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat213j/idx213j.html

本調査は端的に言うと、論文発表数や被引用数に基づくスコア(量と質)を時系列にマッピングしてみて世界における国内の各大学の論文シェアを分野(「研究ポートフォリア8分野」と呼ばれている)ごとに比較・分析しよう!今後の戦略のヒントにしよう!というのが狙いだと思われる。具体的な分野の切り方は上記本文のp.8に、スコア(Top10%補正論文数)の算出方法は同p.10にそれぞれあるので、ここでは割愛する。各大学の詳細なスコアが見れるのはおもしろい。

正直に言って、実は自分のフィールドが上記8分野のどれに相当するか確信がなかったのだが、研究に関連する主なジャーナルから割り出すことができるようだ。因みに私の場合は(ま、当たり前ですが)「工学」分野でした。自分がよく読む、または、よく投稿するジャーナルがどのカテゴリーに属するかまずは調べてみるといいでしょう。

では、先のNISTEPによるベンチマーク資料に戻って、まずは概要を見て、全体の結論にざっと目を通すと、所見(p.viより)として、日本は「物理学」は強いが、一方で、「工学」と「計算機科学・数学」のプレゼンスが見られないことを指摘されている(以下、「工学」について抜粋)。

工学は、日本全体および大学セクターにおいて、研究アウトプットの量・質ともにその伸びが極めて緩やかであるため、特にTop10%補正論文数では世界3位(1998-2000年)から11位(2008-2010年)と順位を下げ世界での存在感が低下している分野である。物理学と比較すると、第1層に該当する大学がなく(0大学)、第2層(6大学)の大学数が少なく、第3層(20大学)が多いという構造となっている。第1層の大学がないのは、工学と計算機科学・数学の2分野である。このように日本の研究を牽引するスケールを有する大学がなく、また第2層や第3層の多くの大学が論文量の増加は見られるものの、質についての低下が顕著に現れており、厳しい状況である。

という事実。手厳しい。。。

特に重要視されているのが「Top10%補正論文数」なるスコアであり、これは簡単に言うと、「各分野において被引用数が多い論文を並べて、上位10%で切って、それぞれがどこの機関における研究成果なのかをカウントする」もので、その論文がその分野に与えているインパクトを表すという見方をしている。

ここで、このTop10%~というのは、各分野ごとで見ているので、例えば分野間の被引用数のばらつきは気にしなくていいのかな、と思う。つまり、例えば「化学」、「物理学」などと、「計算機科学・数学」、「工学」では、トータルの被引用数が桁違いだったりする。そのため速報性が重要視される「化学」や「物理学」分野におけるある論文が、Top10%~に入ろうと思うと、「計算機科学・数学」や「工学」分野における論文よりも絶対的に多くの被引用数を得なければならない。そのため、分野間におけるある種の不公平感は無いように思う。

よって、このTop10%~というスコアは、しっかりと引用さえされていれば、その研究成果が掲載されたジャーナルのIFや、ジャーナル固有の被引用数などの指標(つまり、掲載ジャーナルの知名度、ブランド?)は基本的に関係はなく、「その研究論文が当該分野に与えているインパクトの大きさ」ということで、ある意味フェアに勝負できるようになっている(と思われる)。

ただ、個人的にWeb of Scienceから「工学」分野で被引用数が多い論文順に並べて(*2)、Top10%らしき論文を眺めてみると、結局のところ、知名度の高いジャーナル(*3)が多いように思われる。これについては、知名度と実際のTop10%論文数の相関を取って議論する必要があるが、大変そうなので私はやりません。。。

ということで、いち集積回路設計者として、世の中の評価方法と照らしあわせてみてどのように見られているかを認識できてよかった。でも個人的には、この分野は国際会議によるアクティビティも重要なので、この要因も含めてもらった方がいいかな、、と思った。

そして、「このTop10%補正論文数にカウントされるためには?」など、あえて結論は述べないつもりです。ただ、自分がよく目を通すジャーナル、よく投稿するジャーナルが、どのようにカテゴライズされていて、どのようにスコアリングされているかについて、その賛否については置いておくとして、一度調べてみると面白いかもしれません。

何か間違い等の指摘や、感想があったら秋田へ直接ご連絡下さい。

最後に、Top10%補正論文数が減少傾向にあるのはG7の中で日本だけらしいですね。。

以下参考

*1 自分の研究「分野」の特定方法

トムソン・ロイターのウェブページ(http://wokinfo.com/directlinks/)から、Web of Scienceサービスへ移動し、Additional ResourcesタブからJournal Citation ReportsRへ。Search for a specific journalを選択して、ジャーナルタイトルを例えば「IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS」と入力。するとそのジャーナルのIFなどが表示されるが、そこで、さらにタイトルのリンクを辿ると詳細な情報が出てきて、「Subject Categories」というのが、そのジャーナルがカテゴライズされた分野ということになる。因みに、上記のJSSCだと「ENGINEERING, ELECTRICAL & ELECTRONIC」とあったので、「工学」分野のなかの電気電子というサブカテゴリになることが分かる。一応他の主要雑誌である、「IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS I-REGULAR PAPERS」や「IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS II-EXPRESS BRIEFS」、信学会(IEICE)の各ジャーナルも確認したが、いずれも「工学」分野であったので、ひとまず「工学」に着目することとする。

*2 分野ごとにおける被引用数の多い研究論文ランキングの見方

トムソン・ロイターのウェブページ(http://wokinfo.com/directlinks/)から、Web of Scienceサービスへ移動し、Advanced Searchを選択。空欄部に、例えば「SU=(Engineering)」とし、Searchすると「工学」分野すべての研究論文が列挙され(この場合、≒237万件弱、2013年5月現在)、適宜、被引用数でソートすればランキングが見れる。でも単年内での引用数で見るとTop10%の境界では引用数が2とか1です。この辺は分母が大きな「物理学」「化学」と比較するとなかなか数値化が難しいかもしれません。これを考慮するのがTop10%補正論文数の「補正」が意味するところらしい。

*3 例えば知名度というのを、「工学」分野での被引用数が上位10%に属するジャーナルに分類するなど

*4 IF以外の雑誌の評価尺度について

「あなたのお気に入りの雑誌の順位は上がる? 下がる?:JCRに新導入された指標を見比べてみた:図書館情報学編」 2009年02月04日 『かたつむりは電子図書館の夢をみるか』
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20090204/1233768162

*5 ESI22分野と186サブカテゴリの定義

「FIELD DEFINITIONS」 『science WATCH』
http://archive.sciencewatch.com/about/met/fielddef/

トムソン・ロイターのサービスはサイトライセンスか何か必要かも。それにしても長い記事になってしまった・・・

執筆: この記事は秋田一平さんのブログ『circuits group@ICG』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年06月05日時点のものです。

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