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続々・片瀬久美子がなにを間違えているか

続々・片瀬久美子がなにを間違えているか

今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

続々・片瀬久美子がなにを間違えているか

また、「問題は片瀬久美子がLNT説はALARAに反し、閾値説こそがALARAに沿うものだと考えている点」という指摘についても、ガジェット通信の編集部で過去の私の発言や著作にそれを言明しているものがあるのか確認をして下さい。

「ガジェット通信に掲載された「LNT説とALARAの関係に関する勘違い」という記事について」 2013年06月01日 『Kataseのブログ』
http://ameblo.jp/harubird/entry-11542746899.html

これに答えてみる。閾値説派がLNT説を否定したがる理由のひとつに、「集団線量」がある。今更述べるまでもないが一応繰り返しておくと、LNT説というのは、どんな僅かな放射線でも僅かなりに有害であるというものだ。

ここから集団線量という考えが導かれる。一人一人の発癌率の上昇はわずかであっても、大量の人数を対象とすれば、癌を発症する人数は増える。一人の人間の発癌率が1%だとしても、1万人なら100人が癌になるという理屈だ。

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たとえば鉄砲の弾が飛び交う戦場で、1日に1%の確率で被弾するとする。戦場に人間が1人しかいなければ、1%の被弾はそれほど気にするリスクではないかもしれない。しかしその戦場に1万人の人間がいれば、1日に100人はほぼ確実に被弾することになる。

先に行っておくと、基本的に俺はこの考え方は正しいと思っている。というよりもLNT説を肯定するなら、理論的に集団線量が導かれるわけで、自動的に肯定せざるを得ない。

LNT説を否定したい人は、このことを否定したい。言ってみれば10%以下の被弾率なら、無害だという主張だ。10%以下は無害なら、戦場に1万人いようと、10万人いようと、被弾する人数は0になる。

ALARAというのはいわば1%ぐらいのリスクならゼロと同じじゃんという考え方だ。戦場にあえて行くのは理由があるはずで、その理由(メリット)に比べれば1%の確率で被弾するリスクはゼロとみなしていい、と。

しかしALARAの考え方をするかしないかには関係なく、その戦場に1万人の人間がいれば、100人程度被弾する。これにALARAを適用するなら、1万人の人間のうち100人程度の被弾は許容範囲である、となる。

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LNT説の真偽と集団線量の真偽は理論的には等価だ。LNT説を肯定するなら集団線量も肯定しなければならない。集団線量を否定したいならLNT説も否定せざるを得ない。

集団線量を否定するには一定以下の放射線は無害だと主張しなければならない。すなわちこれは閾値説。

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さて、下記は片瀬久美子が書いた文章だ。

こうして設定されたLNTモデルは、放射線防護のための大まかな指標としてどの程度の危険があるかを見積もり、例えば避難するかどうか等の判断のよりどころにする目的で使われます。

しかし、このモデルによって算出された集団内の死亡数は、ごく低い線量の範囲では健康影響が不明瞭なので正確さに欠けており、特に個々の人がガンで死亡する危険性を見積もるための目的で数字を出して使うのには適していません。

放射線の健康影響をめぐる誤解 片瀬久美子 | 復興アリーナ WEBRONZA×SYNODOS
http://fukkou-arena.jp/academic/放射線の健康影響をめぐる誤解 片瀬久美子/

つまりLNT説にもとづく集団線量による死亡数の算出は不適切だと主張している。これは集団線量の否定であり、すなわちLNT説の否定、すなわち閾値説なのだ。

LNT説は肯定するが(つまり閾値説を否定するが)、集団線量についてだけは認めないというのは、理論的にありえない。片瀬久美子は低線量における集団線量にもとづく死亡者数の算出は不適切だといっているのだから、これは閾値説を唱えているに等しい。

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もっとも、低線量における集団線量については、ICRPも曖昧な態度をとっているから、片瀬久美子だけがそう主張しているわけではない。

LNTモデルの適用の仕方については、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)と国際放射線防護委員会(ICRP)から次の様な方針が出されています。

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