「水」は「髪にとって悪いモノ」じゃない!? 毛髪の専門家に直接聞いた

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ヘアケア

男女問わず、そしていつの時代も気にされる「髪」のケア。いやあ、やっぱり髪は健康な方がいいし、抜けたり切れたりせず美しいままで保持したいのは当たり前ですよね。

昔とは違い、情報が整備されたとされる現在でも、正しい情報ばかりではないのはご承知の通り。誰が言ったか「ウソをウソと見抜けないと」というのはインターネットの話だけではなくなってきました。

今回、毛髪の専門家である井上哲夫さん(国際毛髪科学研究会会長)にヘアケアについてお話を伺いました。この記事を通して「本当に正しい髪の手入れ」を読者の皆さんと共有していきたいと思います。

髪にとって“悪い”モノってどんなもの

そもそも、一般的に言われる「髪にとって悪いモノ」とはどんなものがあるでしょうか。筆者の主観ですが、最近良く聞かれるのは「髪の脂がいけない!」とか「髪の栄養素(?)が不十分」とか。新しいところでは「水が髪のダメージ原因になっている」!? なんてものまで聞かれます。

他にもよく聞くフレーズでは「乾燥」や「ドライヤーの熱」なんていうのもありますね。いずれも、テレビのCMを中心に聞く情報ばかりですが、果たして正しいのはどれなんでしょう……?

「水が髪のダメージ原因」はウソ?

筆者が思いついた「髪のダメージ原因」でも、前述のように様々なものがあります。専門家である井上哲夫さんはどうお考えなのか、聞いてみました。

井上先生

井上哲夫さん(以下、井上先生)

「水の中の銅などの金属成分が髪にダメージを与えうるのか」というと、疑問は多いです。インパクトはありますし、髪に与える影響はゼロではありません。しかし、髪のダメージの主要因である、という言い方をするのはいささか心配が残ります。

通常の水道水に含まれる成分は
ナトリウムが200ppm
塩素が200ppm
マグネシウム・カルシウムが300ppm以下

が基準値になっています。

対して、銅(Cu)は1ppm以下、鉄分(Fe)は0.3ppm以下と規定されています。こうした量の――例えば銅(Cu)だけが他の金属と比べて髪へのダメージが大きいかというと、そういった違いを見分けるのは難しいです。

ちなみに水の中に含まれる金属物質というのは、金属イオンとして安定な状態であるのはまれで、大体は酸化物として存在することがほとんどです。

こうした物質が髪に付着することにより、髪の感触が悪くなるというのは事実としてあります。ただしこれは銅に限った話ではなく、カルシウムやマグネシウムでも同様の現象が見られます。他の金属と比べて特異的に銅だけがクローズアップされるのは不自然ですね。

ちなみに、これはミネラルなどが多く含まれるヨーロッパなどの水(硬水)でも見られる現象です。

他の“髪のダメージ原因”もそうですが、流行によって提唱されるものが多いですね。「水の中の金属成分」が毛髪に直接的なダメージを与えるという化粧品工業会や化粧品学会での発表や論文は見つけられなかったので、“話題作り”という側面が大きいかもしれません。

本来は皮膚科学、毛髪科学に即した考え方をすべきですので、こうした“流行”は必要ないです。

では本当の髪のダメージ原因は何?

ガジェ通:
それでは、本当に髪のダメージ原因となりうるモノってなんなのでしょうか。

井上先生:
多くの方が実感される原因としてあげられるのはやはり“パーマ”と“ヘアカラー”ですね。非常に髪を傷める要素の代表になるかと思います。初めてパーマをかけた方が次の日にくし通りが悪くなることは経験されていると思います。

他には“乾燥”そして“紫外線”が挙げられます。特に紫外線については、お肌についてみなさん気を使われると思うのですが、案外、髪の毛についての紫外線対策はおざなりになっている気がします。髪の毛は一番、日に当たりやすいから、なおのことなんですけれどもね。

髪

乾燥については、ドライヤーの乾燥もありますが、(冬などの)気候による乾燥に注意していただきたいですね。乾燥するとどうなるか? というところが問題です。乾燥すると静電気が起きますよね。この静電気が実は非常に大きなトラブルの元なのです。

静電気は脱毛の原因になり得ます。

毛根というのは皮下およそ3mmにあります。静電気が生じてこの毛根に伝わると、毛乳頭という生きている組織と毛の間の隙間にスパークが起きます。そうすると、アンペアは少ないものの5000ボルト、1万ボルトという電流が生じます。そうすると、この毛の成長が阻害されます。そういうことがたくさん起きると、毛がだんだんなくなってくるぞ、と。

一般的にはこの4要因(パーマ、ヘアカラー、乾燥、紫外線)というのが非常に大きいと思います。

髪をダメージから守るには何が必要?

井上先生:
正しいケアを行うことが必要ですね。例えばドライヤー。過度な熱を加えることは髪にとってもちろんよくないのですが、髪は濡れたまま放置するよりも早めに乾かしてしまう方が、トータルでダメージは少なくなります。

ガジェ通:
自然乾燥よりも、ですか?


井上先生:

はい。

髪の毛って、濡れると柔らかくなりますよね。何故だと思います? これは構造上証明ができるんです。

髪の成分の中で髪の強度を司っている個所があるのですが、その中のひとつに「水素結合」というものがあります。髪が水に濡れるとこの水素結合が切れます。これだけで、髪の強度が30%下がってしまいます。
(※編注・髪を乾かすと「水素結合」は元に戻るそうです)

ですので、お風呂上りに生乾きで寝ちゃったりすると、長い時間髪が濡れたままになるので、かえって髪を傷める結果になります。

ですので、髪はきちんと乾かした方がいいですね。例えばドライヤーの使い方として、冷風で乾かすという方法があります。この方法であれば、熱で乾かすことによって生じる髪の毛の負担がなくなりますよ。

濡れたままだと、濡れた頭皮にホコリを介して雑菌が付着しているケースも考えられます。「毎日洗っているのにフケが出る」という方は、きちんと乾かしていただくのもいいかもしれません。

なお、毛がアルカリ性になると、「造塩結合」という部分が切れますし、パーマ液は「シスチン結合」というのを切ります。

ガジェ通:
なるほど……。他にも何かありますか?

井上先生:
髪の洗い方にも気を配る必要があります。試しにいつも髪を洗うように、頭をゴシゴシすると「ジャリジャリ」と髪のこすれる音がするでしょう? 髪のキューティクルというのは、髪の中で一番硬い部分なのですが、これら硬い部分と硬い部分がこすれることによって、キューティクルはボロボロになってしまいます

ですので、頭皮を指先で揉みだすように洗ったら、手ぐしで毛の根元から毛先に沿って泡を外側にかき出すようにします。これを3回。こうして髪どうしがこすれないようにするだけでかなり髪のダメージが減りますよ。

手ぐしで洗う

洗う際には「揉み出す」「(こすらないように)洗髪は手ぐし」というやり方を心がけてみてください。ゴシゴシと洗う事が多い方には物足りないかもしれませんが、こうして頭皮の脂を揉みだすこと、髪を傷めないことでだいぶ変わってくるはずです。

宣伝などもビックリするような話題作りが多いですが、「正しい知識と方法」で、髪のケアを心がけていただきたいですね。

ガジェ通:
どうもありがとうございました。

井上先生は、化学式なども交えつつも「基本的な正しいケアが重要」ということを終始おっしゃってました。正しい知識を持って、美しい丈夫な髪を保ちたいですね。

プロフィール
井上哲夫

井上先生

国際毛髪科学研究会会長 & 主席講師

東洋医学を美と健康に応用する『理論漢方』のオーソリティとして、現在までに多数の理美容室で指導実績を持つ。育毛研究20年・専門分野に執筆多数。

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オサダコウジ

慢性的に予備校生の出で立ち。 写真撮影、被写体(スチル・動画)、取材などできる限りなんでも体張る系。 アビリティ「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」 「寒い場所で耐える」「怖い場所で驚かされる」 好きなもの: 料理、昔ゲームの音、手作りアニメ、昭和、木の実、卵

TwitterID: wosa

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