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「『秒速』を観てご飯が食べられなくなった」と言われます――新海誠監督が語る最新作『言の葉の庭』(後編)

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『秒速5センチメートル』など美麗なアニメーションとセンチメンタルな物語が高い人気を誇るアニメーション作家・新海誠監督。5月31日には待望の新作『言の葉の庭』が劇場公開となります。

5月5日(日)には徳島で開催されたアニメイベント「マチ★アソビ Vol.10」に新海監督が登場。「思春期っていうのは“セカイ系”だと思う」「雷で女の人の神秘性を表している」など、数々の気になる言葉が飛び出したトークショー前編は下記のリンクからご覧ください。

泣かせようとして作っているわけではないのです――新海誠監督が語る最新作『言の葉の庭』(前編)
http://otajo.jp/p/15047


水野:それではここからは、せっかくなので質疑応答をしていきたいと思います。

新海監督:実は、昨日からtwitterでも呼びかけていたんです。まずはtwitterでいただいた質問からいきましょう。

――星を追う子供では世界中の誰が見てもわかる普遍的な冒険物を作りたいという思いがあったとおっしゃっていました。対して今作では、雨、緑、万葉集など、前作に比べて日本の根っこに通ずるような内容に大きくシフトされている様に感じました。何かきっかけなどあったのでしょうか?

新海監督:『言の葉の庭』を見て、よく『秒速5センチメートル』に戻ったと思われがちなんですが、そういうつもりはないんですね。前作『星を追う子ども』との間に何があったかと言うと、まず東日本大震災があった。そこで、自分たちの足下の地面が盤石でない、普遍的でないことに気づいた。だから、いつも過ごしている新宿という場所を、きちんと描いておきたいと思ったのが一つ。

もう一つ、『秒速』には色んな反省があって。もっと「伝わるように」作らなくてはならないと思ったんです。あの作品を観て、「ご飯を食べられなくなった」といった感想もいただくんですが(笑)。自分としては、励ますような気持ちで作ったつもりなんです。『星を追う子ども』ではその反省を活かして、色々な前提を共有していなくても、ちゃんと伝わるように作ろうとした。それが、先ほど質問に出た言葉の意味です。そう意味では「戻った」ということでなく、今回の『言の葉の庭』にも連続性があると思うんです。

――大人の女性と高校生の恋愛がテーマですが、設定だけで悶えるのですが、この設定でいこう!という、きっかけをよかったら教えてください。

新海監督:これ(男女の性別)が逆だったら、あまり良くなかったと思うんですね。都条例とかに引っ掛かっちゃうんじゃないか(笑)。だけど、年下の男の子と、10歳以上離れている女性という設定によって、何か純粋な部分が取り出せるかな、と思ったんです。セクシャルな部分も含まれてはいるんだけど、手の届かないものとして女性を描こうと思った。年齢的にも社会的にもギャップがあって、それによって描けるものがあると思ったんです。

――監督の作品は、なぜあんなに背景を綺麗に描かれるのでしょうか?

新海監督:これは色々なところで話しているのですが、いわゆる原風景ということになりますか、僕は長野県の山奥で育ちました。光の変わり方がとてもドラマチックで、例えば向こうの山が明るいときに、自分のいる谷は雲の下で暗かったり。そういう風景に救われていたところがあります。そんな環境で過ごしたせいで、東京に出てきたときにつまらなかったんです。明暗の差はないし、平坦だし。ただそれは最初の3年くらいで。自分の住むところが嫌いというのは辛いでしょう?

東京の景色も好きになっていました。好きになったというより、積極的に綺麗なものを見出そうとしていました。そもそも僕はゲーム会社で働いていて、そこで背景を描いていました。そうして自分の作品を作るとなったときに、人が描けないから背景を描こうと思った。それが周りの人に褒められたんです。実際はそういう理由からで、先ほどの原風景の話は「後から考えると」という理由ですね。

――『ほしのこえ』でもバスの停留所で靴下を脱ぐシーンがありました。『言の葉の庭』の予告を見たときにデジャブを感じたのですが、『ほしのこえ』でやったことをやり直そうとした意識がありましたか?

新海監督:『言の葉の庭』は「雨宿り」の話なんです。本来の場所に居場所のない二人が、別の場所で「雨宿り」をする。『雲の向こう、約束の場所』だと二人の少年が飛行機を作っている廃屋がそうだし、『秒速5センチメートル』だと少年と少女が雪の晩を過ごす納屋がそう。あれも「雨宿り」なんですね。

――新海監督は、ひょっとして鉄道ファンですか?

新海監督:いわゆる“撮りテツ”とか、そういったコレクションする方のファンではないのですが(笑)。ただ、電車という空間や移動手段には愛着がありますね。今回も、個々のスタッフによる異様なこだわりが見られますので、お楽しみに。

この作品はスタッフが1年間、頑張って作りましたので、それだけの密度がある作品です。劇場ではサラウンドによる雨の音が楽しめますし、タブレットで観たとしても「ここまで細かく描き込んでいるのか」と絵の密度を楽しめると思います。色んな楽しみ方のできる作品です。是非ご覧ください。本日はありがとうございました。

言の葉の庭のオフィシャルサイト
http://kotonohanoniwa.jp/

(C)Makoto Shinkai/CoMix Wave Films

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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