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『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンド来日講演 全文書き起こし(2/2)

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 世界的ベストセラー作家ジャレド・ダイアモンド氏の講演が2013年2月11日、日本科学未来館で開かれた。主催者の「日本科学未来館」が進める「つながり」プロジェクトから、5つの質問がダイヤモンド氏に投げかけられた。人間が今後も活動を続けていくためのヒントとして、江戸幕府の森林政策が例に出されるなど、ダイヤモンド氏は独自の視点から考えを述べた。

・全文書き起こし(1/2)はこちらから
http://news.nicovideo.jp/watch/nw535329

■ 「生物全体の中で人間はどのような存在でしょうか」

 ダイアモンド先生、どうもありがとうございました。

 それでは、第2部では人間と地球のつながりに関する、いくつかの問いにまいります。日本科学未来館で取り組んでおります「つながりプロジェクト」では、持続可能な未来のために私たち一人一人が3つのつながりを実感することを重要と考えております。それは、「生命のつながり」「人と地球とのつながり」そして「未来へのつながり」です。第2部では、このつながりに関連して、ダイアモンド先生に5つの問いかけをさせていただき、1問ずつお答えいただきます。

――それでは、1つ目の問いにまいります。生物全体の中で人間はどのような存在でしょうか。

 5万年ほど前に、宇宙から人が来たとしましょう。彼らはどんな風に地球人を見たでしょうか。4,000種の色々な生物があります。ビーバー、タヌキ、チンパンジー、猿、または人間のようなチンパンジー、鯨、いろいろな種がいるなと思うはずです。つまり、人間は地球に存在する種の1つでしかありませんでした。

 現在、われわれは自分たちを動物だと思っていません。われわれとしては、動物と人間を別物という風に認識しているわけです。でも、5万年ほど前は違いました。その他の種と同列だったのです。

 また、進化論や遺伝学で分かったことですが、99%の遺伝子はチンパンジーのものと一緒です。われわれの遺伝子の中のどこか1%だけが違って、だから私たちは言語を話せて、博物館のような会場の中でこうして講演を聞くことができるわけです。そして、何か1%が違ったために、チンパンジーには言語がなくて、動物園にいて、そして匿われたような状態にいるのです。

 では、何が違うのでしょうか。私たちは、なぜ自分たちは動物ではなくて人間だと言っているのでしょうか――この問いは、生物学者に任せておきましょう。私の1つ目の著書『人間はどこまでチンバンジーか』という本でも、その辺は少し触れています。また言語というものが人間とその他の動物とを分ける非常に大きな要素だと思うのです。もしかしたらチンパンジーと私たちは喉の構造が違って、チンパンジーも喉の構造が変われば言語が話せるのかもしれません。いずれにしても、なぜ人間がチンパンジーと違うのかについては、まだよく分からないことが多いのです。

■ 「地球と人間はどのように影響し合う存在でしょうか」

――2つ目の質問です。地球と人間はどのように影響し合う存在でしょうか。

 率直に思うのは、人間はほとんどの自然の資源を使っているということです。他の動物ではなく、この人間たちが使っているのです。太陽光線が地球に注ぎ、それを使って光合成が行われて、草木が育ちます。実は太陽エネルギーの80%は人間が使っているのです。野菜を栽培をしたり米を作ったり、あるいは草を栽培したり森林の再生育成などにも使われています。しかし、残りは人間が使っているわけではありません。光線が注がれても、使われていないものがあるのです。残りの20%は、その他の動物や魚、カエルなどが使っています。

 それにも関わらず、人口は増えています。ということは、エネルギーの消費量が増えているということです。もうすでに、80%の太陽光エネルギーをわれわれは使っているのに、人口が増えたらどうなるか。消費率が増えて、太陽光エネルギーを100%まで使ってしまうかもしれません。すると、ネズミや魚、花などその他が使うものが残らなくなってしまいます。他の自然のエネルギーについても同じです。酸素、二酸化炭素、水、土壌、魚、森林についても、同じです。もうすでにほとんどの資源を使っているのに、これよりも人口が増えたら、自然資源がみんな使われてしまい、昆虫や蛇には残らなくなってしまいます。現在、地球と人間はこのような形で影響し合っているのです。

■ 「変化し続ける地球環境の歴史の中で、いま私たちはどのような状況に置かれているのでしょうか」

――3つ目の問いにまいります。変化し続ける地球環境の歴史の中で、いま私たちはどのような状況に置かれているのでしょうか。

 いま、私たちは地球の歴史上で、非常に特別な時代にいると思います。過去には、もっと人口が増えたとしても、それを賄うだけの消費を許容する余地があったのですが、もうすでに太陽光の80%のエネルギーを使ってしまっています。持続可能かと言えば、そうではありません。
すでに森林、魚、土壌、淡水などのいろいろな資源をすべて、どんどん利用してしまっているわけです。

 消費の速度を考えたときに、あと何年で水や森林がなくなってしまうのでしょうか。30年? 40年? それとも50年でしょうか? ――そうですね。例えば、2050年くらいのことを考えましょう。それまでに持続可能な経済を作れるのであれば、その後100年も200年も持続できると思います。しかし、もし持続可能な経済を実現できないのであれば、またいろんな魚や森林や淡水などの資源の利用をしつくしてしまったならば、それは無理です。先進国のニューヨークや東京のような都市もなくなり、日本という文明もなくなり、ヨーロッパやアメリカという国々も消えるでしょう。例えばニューギニアの伝統的社会の人のような暮らしをして生き延びられたとして、その先はどうなるでしょうか?

 どういう形で未来を生きるかを決断するのは、私たちです。水や土壌や魚の問題があり、それをどういう風に解決していくかだと思います。解決するのであれば、ぜひしたいところです。そのときには、持続可能な未来があると思います。30年から80年後ですから、私が生きていたら解決を見ることになるかもしれませんが、それはわかりませんね。

■ 「この先、人間が活動を続けていくために、私たちはどうあるべきでしょうか」

――4つ目の問いにまいります。この先、人間が活動を続けていくために、私たちはどうあるべきでしょうか。

 どのようにすれば私たちは持続可能になれるのか。日本を例に取って、お話ししましょう。1600年代の、徳川将軍の江戸時代です。このときの日本は鎖国政策をしていて、自給自足の生活を営み、木材は輸入していませんでした。しかし、城を作るためには多くの材木の消費をしましたし、家は木造だったので江戸では火事が多く、焼失した家の再建にはさらにたくさんの材木を消費しました。近場の森林が伐採されつくした後、徳川の将軍たちは、城や町を作りつづるけるために本州をさらに北上して森林を伐採しなければならなかったのです。

 しかしそれは問題だとわかり、彼らは持続可能性のあるやり方で対応したのです。彼らは、2つのやり方で木の消費量を減らしました。まず、ある種類の木はある目的のために使うものだと決めました。さらに、科学的な森林学の専門知識を使って、森林の再生もしました。1600年から1700年の日本の森林について書かれた書物を読んだ方はいらっしゃいますか? 森林伐採の詳細な手引きについて書かれた書物があるのです。例えば、幹の太さが何センチだったならば何年物の木だから伐採してもよいと書かれています。そうして森林の再生をして、1855年になって鎖国をやめた後には材木も輸入をするようになったのです。

 森林は現在、多くは持続可能な形で管理されています。しかし、ニューギニアのように管理されていない場合もあります。森林だけではなく、魚もそうです。アラスカはサーモンで有名なのですが、ちゃんと持続可能性がある形で管理しています。しかし、寿司ネタとしてよく使われるクロマグロはどうでしょうか。世界の中でも一番価値の高い物だと思いますし、地中海で取れるクロマグロも日本でとても人気があります。これらは、日本円にして1,000万円などかなりの高額で取引されているのですが、その資源量は下がっています。江戸時代の森林のようにうまく管理されていないのです。10年後、クロマグロが寿司で食べられなくなる可能性はあり得ます。徳川将軍の森林管理の仕方を継承するかどうかは、われわれの選択です。

■ 「科学、そして科学技術はどのような役割を果たすべきでしょうか」

――最後になりました。ただいま、私たちがどうあるべきかについてお答えいただきました。それでは科学、そして科学技術はどのような役割を果たすべきでしょうか。

 持続可能な社会を作るために、科学技術は何ができるのでしょうか。科学技術はもちろんある役割は果たすと思います。しかし、科学技術があればすべての問題が解決するかというと、私は違うと思います。科学技術はすべての問題の解決にはなりません。

 科学技術は、確かに解決の1つの糸口にはなると思います。例えば、再生可能エネルギーを見つけて、化石燃料の代替物として使うことです。40年後の社会を考えてみると、おそらく風力発電をしているはずです。その時には、現在よりももっと改善された風力発電所を作ることができていると思います。また、太陽電池も改善されていると思います。潮力発電も考えられます。こうした分野に関しては、技術革新でなんらかの持続可能な社会を作る貢献ができるでしょう。

 しかしながら、多くの人――特にエンジニアリングや技術系の人――は技術革新で、すべてが解決できると思い込んでいるのですが、それは間違いです。

 なぜかと言うと、すべての科学技術はマイナス面が予測不可能な形で出てくるからです。エンジニアが新しいテクノロジーを作ったとします。プラス面ももちろんありますが、マイナス面がまったくないものも絶対にありません。

 一例を挙げましょう。まるでジョークみたいと思われるかもしれませんが、本当の話です。私の学生時代の家庭教師は、1909年から1910年あたりに初めて自動車がアメリカに紹介されたとき、何を思ったか。この技術がすべての問題を解決すると思ったのです。「この自動車は素晴らしい」と。「自動車があることによって、馬が街からいなくなる。馬車は騒々しく汚いが、自動車があれば街が静かになってきれいになる」と思ったそうです。じゃあ、いまから私が外に出てみましょうか――びっくりするほどの、思ってもいなかった悪影響が存在しているわけです。自動車が導入されたことで、マイナス面ももたらされたわけです。

 私たちがいま知りたいと考えている、持続可能な社会の作り方は、実は現時点ですべてわかっているわけです。江戸時代からもうわかっています。したがって、新しい技術を開発するのではなく、1600年から江戸幕府がしていたことをすればいいのです。江戸幕府は、持続的な社会を「政治的に」作ろうと思ったわけです。でも現在、ヨーロッパもオーストラリアも日本も米国も、その政治的な決断ができていないのが問題なのです。技術はあるのですから、むしろ政治的な決断をしてもらうのが大事なのではないでしょうか。

■ 「ぜひ他の国のモデルになり続けていほしい」

――それでは本講演の最後に、ここ日本にてご来場の方々に向けてメッセージをお願い致します。

日本は大変素晴らしい国です。先進国であり、大変にクリエイティブな国です。日本はまだ進んでいない他国のモデルになります。実は、いまから7年後には出版したい次の本で、社会が変化する状況にどう対応するかを書きたいのです。
それにあたって、過去200年の話をするときに、日本のことも明治時代から話をしたいと思っています。1868年から日本は選択的に変革をしていきました。工業化をして、憲法を制定して、民主主義になりました。公共の教育制度を作り、そして国防を築き上げてきました。それでも、日本人は日本人であり、漢字を使い、その前と同じ部分も継承しているのです。いまでも天皇はいらっしゃいますし、いまも素晴らしい日本の文化は続いています。
しかし、日本は現在、いろいろ問題に直面しています。それは皆さまの方がよくご存じでしょう。米国も世界もさまざまな問題に直面しています。だから、メッセージとしては、現在の日本、そして世界全体が徳川将軍から持続可能性について学ぶだけではなく、ぜひ1868年の明治維新からもどう歴史的な選択をしてきたのか学んでいただきたい、と言いたいです。日本は新しいものを活かして、それとともに伝統的な強みや価値観も維持してきました。今後50年後も日本は日本であり、その時にもぜひ他の国のモデルになり続けていほしいと思います。そんな国ですから、私は日本を訪問するのがとても好きなのです。

(拍手)

◇関連サイト
・日本科学未来館 (Miraikan)
http://www.miraikan.jst.go.jp/
・つながりプロジェクト2013 基調講演 「ジャレド・ダイアモンドの地球~現代の高齢化社会に生きる私たちが、過去の人間社会から未来へとつなげられること」 | 日本科学未来館 (Miraikan)
http://www.miraikan.jst.go.jp/event/130123107584.html
・昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
http://ichiba.nicovideo.jp/item/az4532168600
・昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来
http://ichiba.nicovideo.jp/item/az4532168619

(中西洋介)

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