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人気サービスの裏方さん、『ニコニコ動画』を支える人

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近年、目覚しく発達した通信インフラにより、人々の間で交わされる時間あたりの情報量は飛躍的に上昇しました。そしてそんな環境の変化により、様々な人が時間や場所を気にすることなく、様々な仕事に携わることが可能になったわけです。

そうした環境の変化により、どのような人が、どのような場所で、どのような仕事をすることが可能になったのでしょうか。今回は、動画にコメントを付けて楽しむことや、簡単な機材で生放送を行うことが可能な動画共有サービス『ニコニコ動画』の裏側で働く人にスポットを当てたいと思います。さてさて、人気サービスの裏側ではどのような人々が働いているのでしょうか。

・コメントを削除するという仕事

記者  こんにちは。今日はよろしくお願いします。

木村氏 こんにちは。わざわざ北海道までお越しいただいてすみません(笑)。

記者  いえいえ、とんでもないです(笑)。それでは早速なのですが、始めさせていただきます。

木村氏 よろしくお願いします。

記者  木村さんは『ニコニコ動画』に携わるお仕事をされているということですが。

木村氏 そうですね。だいたい1年くらい前から携わるようになって、今現在まで続けています。

記者  それはどういった作業になるのでしょうか?

木村氏 『ニコニコ動画』というサービスは、アップロードされた動画に無数の人がコメントを付けられるのが特徴なんですね。お茶の間でテレビを見ながらああでもないこうでもないと言い合うような感じで(笑)。そのコメント内に問題のある言葉が含まれていないかを監視するのが、主な業務になりますね。

記者  「問題のある言葉」とはどういったものなんでしょうか?

木村氏 残念なことなんですが、本当に少数ではあるんですけど、中には人を傷つけるような発言される方もいまして……。そういったコメントを見つけては削除しているわけです。そうすることによって、よりいっそうユーザーさんに楽しんでもらえるようなサービスになればなと。

記者  そのコメントは全て1人で削除しているんですか?

木村氏 いえいえ(笑)、他にも作業者はいますよ。間違った削除が発生しないためにも、複数でチェックするような体制になっています。コメントがあってこそのサービスですからね。そのあたりは絶妙なバランス感覚で、厳密にやらなければならないと思っています。

記者  では仕事をする際の注意点などはあるんでしょうか?

木村氏 作業に入る前はテンションを上げるようにしてますね。こう、コメントに気圧されないようにというか、負けないようにというか(笑)。寝起きが悪いので「よーしやるぞ」という気持ちになりたいんですよ。あとはそうですね…普段から予習をするようにはしていますね。

記者  どういった内容になるのでしょうか?

木村氏 アップロードされる動画のジャンルというのは色んなものがあるんですよ。そういった動画の背景には独特の文化があったりするので、間違って問題ないコメントを削除しないよう、なるべく色々な動画を見るようにしています。最近の動向なども分かるので、動画のランキングには必ず目を通すようにしていますね。

・一つの“言葉”にも色々な意味がある

記者  何をきっかけにしてこの仕事を始めたのですか?

木村氏 今は『アンビシャス』という社会福祉法人にお世話になっているのですが、これはいわゆる障害を持つ人の自立支援などを行っている組織なんですね。そのアンビシャスにこの仕事のオファーがあったんです。それで施設側が作業の希望者を募って、そこで手を挙げたうちの1人だったわけです。

記者  どういうところが気になって手を挙げたのですか?

木村氏 元々『2ちゃんねる』などのネットサービスを利用していたのもあって、インターネット上のサービスへの興味はありました。そんなサービスの1つである『ニコニコ動画』に携わる仕事ということだったので、強く惹(ひ)かれましたね。

記者  パソコンを使った仕事はどんなところが楽しいですか?

木村氏 インターネット上には色んな情報が溢れているじゃないですか。こんな国があったのか、こんな動物がいたのか、とか。もう本当にどうしようもない、どうでもいい情報から、目から鱗の発見まで様々なものがある。自分の知らなかった世界が見られる、発見があるというのは楽しいです。

記者  では辛いところはありますか?

木村氏 まぁ一般的ですが、肩がこる、目が痛くなるなどの症状が出ることですかね(笑)。

記者  作業の中で困ったことというのはありますか?

木村氏 うーん、そこまで困ったということはないですかね。ただコメントを削除する時には迷うことがよくあります。例えば日常生活で使われるような「アホ」という言葉にも、色んな意味がありますよね。単に中傷である場合もありますし、場合によっては褒め言葉になることもあるじゃないですか。だから迷った時はコメントを書いた人の気持ちになって考えたり、他の作業者に聞いたり、上司に聞いたりしますね。

記者  仕事を通じて学んだ事などはありますか?

木村氏 やっぱり言葉を扱う作業なので、コミュニケーションの大切さ、ということになりますかね。発言した側に害する意図がなくても、人を傷つけてしまうこともある。そこらへんのバランスというものは、いくつになっても難しいと感じます。もちろん、他の作業者とのチームワークや上司とのやりとりという意味でも、コミュニケーションは大切だといえるでしょうね。

記者  答えづらいかもしれませんが、今の給料には満足していますか?

木村氏 特に不満ということはないですけど、これ以上にもらえるというのなら断る理由もないですよね(笑)。いやもう本当に、病気以外はなんでも欲しいですよ。

・仕事柄というわけではないが、動画サイトはよく見ている

記者  木村さん自身について少し伺いたいのですが。

木村氏 はいはい(笑)、いいですけど、それほど面白いエピソードはありませんよ(笑)。

記者  まず1日のスケジュールを教えて下もらってもいいですか。

木村氏 とりあえず朝起きます(笑)。そして目を覚ますためまずはコーヒーを飲んで、作業場に向かいますね。それから夕方くらいまでは仕事をしていますよ。仕事が終わったらご飯を食べたり、お風呂に入ったりしますね。だいたい21時過ぎぐらいには落ち着いて、本を読んだりゲームをしたりしています。

記者  睡眠時間はどれくらいになるんですか?

木村氏 そんなに長時間は眠らないですね。平均すると6時間くらいでしょうか。最近は携帯ゲームにはまってしまったので、つい寝床に入ってからもやってしまうんですよね。夜中に釣りのゲームで魚と格闘しています(笑)。

記者  パソコンの扱いには慣れていらっしゃるようですが。

木村氏 はじめて触れたのは12、3年前くらいになりますかね。ただ頻繁に使うようになったのは4年ぐらい前です。前職はホテルマンだったのですが、職場で使っていました。その後に事故を起こして入院したのですが、その生活が退屈で(笑)。そこでパソコンを使うようになって、退院後には自分専用のマシンを購入しました。

記者  『ニコニコ動画』の存在はいつ頃知ったのですか?

木村氏 1年ちょっと前です。仕事を始める頃ですね。今はこんなに面白いものがあるんだ、というのがその時の正直な感想でした。

記者  毎日巡回するようなウェブサイトはどんなものがあるんですか?

木村氏 とにかく動画をよく見ます。それと音楽も聴きますね。よく考えると全て動画が見られるサイトですませてますね。作業中もそんな感じですね。別に自分が作業しているからというわけではないのですが、8割がたは『ニコニコ動画』にべったりということになってしまっているような気がします(笑)。

記者  よく見るテレビ番組などはないのでしょうか。

木村氏 テレビはそんなには見ないですね。見たら面白いし特に嫌いということもないのですが、短い時間の中でも楽しめるという動画サービスに自分の感覚が馴染んできているのでしょうか。ふとした瞬間の1、2分ぐらいでササッと楽しめるじゃないですか。誰にでも分かるような敷居の低い面白さで。また秀逸なコメントなんかがついていると、思わずにやっとしてしまいますよね。

・将来は?

記者  座右の銘はありますか?

木村氏 ポピュラーではありますが、「継続は力なり」ですね。この仕事も継続していきたいですし、今の人間関係だって続いたらいいなと思います。あとは信念という程のものではないですが、「何事も勉強」ということくらいですかね。

記者  自分に影響を与えた出来事というのはありますか?

木村氏 影響を与えた出来事というのはそれほどないですかね……。ただ影響を受けた人物なら居ます。

記者  それはどういった方なのでしょうか?

木村氏 先ほどお話したサラリーマン時代、ホテルマン時代の上司なんですけどね。とても仕事ができる人だったんですよ。いつかその人に追いつきたい、追い越したいという気持ちは今でも強く持ち続けています。

記者  今年1番のニュースはなんですか?

木村氏 それはやっぱり、この『アンビシャス』の施設を卒業できるようになったことですね。

記者  どちらかに家を借りて、生活されるということですか?

木村氏 そうです。前々から1人暮らしをするのが夢だったんですよ。通信の大学を受講していたのですが、それも卒業できたのでいよいよ生活費を捻出することができるようになりました。『ニコニコ動画』の仕事があるおかげで、ようやく夢が1つかないました。

記者  では最後に、今後の目標などあったら教えていだけますか?

木村氏 国内旅行はあんまり興味がないのですが、海外旅行に行ってみたいんですよ。1人暮らしの夢はかなってしまったので、今度はお金をためて外国に行きたいんです。韓国で焼肉を食べたりしたいですね。それと、スカイダイビングをやってみたいです。高いところは怖いんですけどね(笑)。

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アンビシャス
デイサービス:
在宅の重度の障害を持つ方に対し、入浴・給食・生活相談などを行うとともに自立生活プログラム、アート活動、作業活動、レクリエーション活動等を通し、社会参加のための支援が行われている。滞在設備も整い、自立までの生活支援もある。
目的:
障害者のみを対象にした施設としてではなく、障害のある方もない方も一緒に憩うことが、出きる場所として『みんなのオアシス』を目指しています。
http://www7.ocn.ne.jp/~ambi/index.html

木村さん
障害内容:
原因:11年前のバイクの自損事故
頚髄損傷(両上肢及び体幹の著しい障害、両下肢機能全廃)
両脚・両手の指の自由が利かない状態。 移動は車いす利用。
PCのキーボードは指関節を使って打たなければならず、
マウスは両手で挟んで操作する状況で作業に当たっている。
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