女ひとりカニ道楽〜タラバガニ2.5キロ5番勝負〜
タラバガニ2.5キロ。
実家の父が送ってきたのです。
だいたい7年ぐらい結婚していたと思うのですが、毎年父のカニを一緒に食べていた旦那さんが、昨年出て行きました。
うちはわたしとネコが3匹という陣容になり、そのことを父も知っているはずなのですが、2.5キロは今年もやって来ました。
Twitterで「誰か食べにこない?」と声をかけてもリプライがゼロでした…。
「ひとりで食えってか」
これは、結婚に失敗した娘への父からのエールかもしれない。
「わかった、やってやる。ひとりで全部たべる!」
にしても、2.5キロ。でかいです。しかも活きています( ;∀;)
ラクに成仏させてやりたいのですが、一気にゆで上げるにも、これまでカニをゆでていた大鍋は旦那さんが持って行ってしまい、家にあるお鍋ではどれも入らないのです。
思案の挙句、うちの中で一番でかいステンレス製品「タライ」をよく洗ってガス台にセット。
普段、ふきんとかを漂白しているステンレスタライです。
なんだかすごく悪いことをしているような気持ちになってきました。
そういえば、満州から引き上げてきたおばあちゃんは、子供のわたしによく言っていました。
「今の人はモノが余っていて贅沢をしすぎなの。おばあちゃんたちは、引き上げの時に、洗面器一つで、洗濯もしたし、煮炊きだってしたし、行水もしたのよ」。
「そうだ、ナベなんかいいんだ。大事なのはカニをゆでることだ。形にとらわれたら駄目だ」
おばあちゃんの言葉を脳内に響かせながら、わたしはタライに水をザバーっと満たして、お塩をザザーッと入れました。
ところが煮立った塩水に、タラバをひっくり返して入れようとするも、脚が邪魔して入らないのです。
軍手をはめた手で、脚をバリバリと折りこんで、何とか茹でることができました。
そして茹で上がったカニは…
なんかもう面倒くさいぐらいデカイ。
タラバカニは、実はカニではなく、ヤドカリの仲間。
他のズワイガニや松葉ガニや、毛ガニなどとは違い、お味噌があまり美味しくないのです。
脚と胴体のお肉しか、食べるところがありません。
「このままゆでガニを食べ続けても飽きるよなぁ」
いろんな調理法で、この2.5キロのカニを完全消滅させることにしました。
名付けて「カニ2.5キロ5番勝負」。
ROUND1 そのままたべる
ゆでたてをそのままいただきました。言うことなしの美味しさ。
無言で食べ続けました……。
それにしても、カニはひとと一緒に食べるとなんだか集中できないし、ひとりで食べると虚しさがハンパないですね。
左半身の脚3本でもう、おなかいっぱい。
ROUND2 かにごはん
食べ終わったからを、はさみで4,5センチぐらいの幅に切り、軽く洗ってからナベにカラとニンニクひとかけを叩いたのを入れ、ごま油で炒めます。
カラが乾いてカラカラになったら、そのままお水をカラがかぶるぐらい入れ、弱火で煮出します。
冷蔵庫にしなびた長ネギが入っていたのでそれもいっしょに入れました。
小一時間も煮ると、少しピンクがかっただし汁が取れます。
これで、まずはカニご飯をつくりましょう。
お米1合
だし汁 お米と同量
塩 ふたつまみ
しょうゆ カレースプーン3杯ぐらい
カニの肉
を、炊飯器か鍋にセットして炊きます。
わたしの米炊き道具は、ガラス鍋にガスコンロなので、すこ~しおこげができました。
お弁当にしていただきました。
ROUND3マロニーのプー・パッポン・カリーふう
器は、カニの甲羅です。食べ終わって甲羅を洗って、ねこにかぶせようとしたのですが、うまくいきませんでした。
パクチーとライムが冷蔵庫に残っていたので思いついたレシピです。
カニのカラだしをおたまで2杯分ぐらいと、
カニの胴体の少し大味なお肉の部分を、
カレー粉でさっと煮ます。
味をととのえるのは塩で。
より東南アジアっぽい味にするなら、嫌いでなければ味の素をパッパッとふりかけるといいですね。仕上げに卵をぐるぐるぐる~っと混ぜ入れて、たまごがいい感じで固まったら、マロニーを絡ませます。
これで、プー・パッポン・カリーふうマロニーのできあがり。
ROUND4 カニカレーのリゾット
プー・パッポン・カリーふうのカレー汁を、カレースプーンで大盛り3杯ぐらい残しておきます。これを使いまわします。
お米1合
お水 お米と同量
プー・パッポン・カリーの残り汁スプーン3杯
トマトケチャップ カレースプーン2杯分
生ハム 4切れぐらいを細かく刻む
以上を炊飯器とか土鍋なんかで炊いてください。炊いてみて、味が足りなかったらお塩で調整を。
アルデンテに炊いてリゾット風にしました。粉チーズを振ってたべました。おいしかったです。
ROUND5 ケランチム(韓国風茶わんむし)
お肉は全てたべつくし、残すはカラでとっただしが、おたま2杯分になってしまいました。
カラのだしさえあれば、カニにもうひと頑張りしてもらえます。
カニのカラのだし おたま2杯分
塩、しょうゆ
たまご 2つ(よくかきまぜておく)
だしを塩、しょうゆで味を整えて、茶わんむしのおつゆみたいな味にしておいてください。
(ちょっと凝りたい人は、鰹節でとっただしと合わせるといっそうおいしいです。)
作り方はほんとうに簡単なのですが、一人で写真が撮れなかったので、わかりづらいかもしれませんが言葉で説明します。
だしをナベにかけて沸騰させます→たまごを流し入れ、だしと混ぜあわせます→だしとたまごが混ざって、ふたたび沸騰しかけたら、最後大きく2,3回かき混ぜて火を止めて蓋をして蒸します。
久しぶりに作ったので失敗してしまったのですが、もっとフワフワに出来るのです。味は◎。
ケランチムの上にせている緑色のものは「ディル」です。普段良くスモークサーモンの上に乗っかっていますが、ディルはセリ科なのでこういったあっさりの茶碗蒸しやお吸い物とかにも合いますよ。
まとめ
お肉もだしも完全に使いきり、2.5キロ5番勝負はなかなかいい試合展開ができたのではないかと思います。
ここまでやればカニも成仏してくれることでしょう。
ちなみに、つくったごはんはすべて、キッチンで立ったまま食べました。
なぜそう思ったのかわからないのですが、
「こんなおいしいごはんを、座ってひとりで食べたらなんか、孤独に押しつぶされそうになる」と思ったからです。
ひとりごはんは、御行儀が悪いぐらいがちょうどいいのかもしれないですね。
◯ごちそうさまでした。
※中島麻美さんの『ごはんレシピ』をもっと見たい方はこちらの一覧をどうぞ。実際に作った方やアレンジしてみた方は、感想をツイートなどで是非教えてくださいね。
お米料理が好きな中島麻美です。 チャーハン、まぜごはん、どんぶり、たきこみごはんにお世話になっています。 酒のつまみは唐揚げが好きです。定食はとんかつが好きです。 出版社でOLしています。仕事柄会食が多いです。 2口ガスコンロ、2畳足らずの狭いキッチンからお届けします(・∀・)
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