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【TSUTAYA図書館問題】Facebook市長がセキュリティ研究者に「公開討論を」「お背中流しまーす」と誘うも断られ「卑怯だ」と怒る

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佐賀のFacebook市長とTSUTAYAが発表した新図書館構想の中にあったTカード利用にまつわる懸念をセキュリティの専門家が質問したところ、まともな回答が得られず、しかもFacebook市長はその後のTwitterでの意見のやりとりにご立腹。「もうTwitterは議論する場じゃない」とブログで発言。しかしなぜかその後もTwitterで発言を繰り返しています。

TSUTAYAと共に発表した構想の中には既存の図書カードを廃止し、すべてTSUTAYAの会員カードである「Tカード」に移行するというものも含まれていました。要するに図書館で本を借りたい市民はTカード会員になることが強制される格好です。また、会員になるにはTカードの利用規約(T会員規約)にも同意が必要となります。会見のUSTREAM放送もおこなわれ、ネット経由で視聴していた人達からもTwitterでさまざまな意見が寄せられました。さらにネットで非常に有名なセキュリティ研究者である高木浩光博士が懸念点をコンパクトな4つの質問にまとめて提出しました。

会見中、その質問は読み上げられましたが、4つの質問中、回答がきちんとなされたのは1つだけ。あとは「まだ決めていない」「これから詰める」といったその場しのぎのもので、まともな回答は得られず、肝心な部分に関して事前に熟慮がなされていないということが露呈しました。

回答を得られなかった質問について、もう一度整理してみます

「本の貸出履歴はCCC(TSUTAYA)に渡すのか」
  答え:まだ決めていない
「T会員規約は市民全員に強制するのか」
  答え:これから詰める
「T会員規約に合意すれば購買履歴が外に提供される可能性があるのを知っているか」
  答え:無回答

「上司や国会議員に働きかける」とセキュリティ研究者に圧力

新図書館構想には一部斬新なアイデアも含まれており、会見後もホットな議論がネットで巻き起こっていましたが、その後Facebook市長もCCC(TSUTAYA)もセキュリティ研究者である高木氏に助言を求めることはしなかったようです。助言は求めないものの、市長側で決めたテーマでの公開討論を佐賀でやろうという提案がブログに掲載されました。さらには地元の温泉に一緒に入ろうという誘いも。その時の市長ブログの最後は「お背中流しまーす。」で締めくくられています。しかしその提案が断られると一転、高木氏に「卑怯だ」「逃亡した」などとの言葉をTwitterで浴びせました。

経産省経由の圧力も「逃げてますね〜。今週上京してあなたの職場にこのblogを持って行きます」

それだけにとどまらず、経済産業省経由、国会議員経由で高木氏個人に圧力をかけることを公言し、数多くのツイートをおこなっています。市長は経済産業省や霞ヶ関、国会議員経由でセキュリティの研究者に圧力をかけることによって何を得ようとしているのでしょうか。何故、佐賀での公開討論を断ったら圧力を受けなければならないのでしょうか。これに対し高木氏は「脅迫と受け止めつつあります」とツイートしています。

市長の高木氏に対する連続ツイートから一部抜粋します。(ちなみにFacebook市長は元総務省の官僚ですので、霞ヶ関や国会議員とのコネがあるようです)

Facebook市長のTwitter発言より一部抜粋(これは一部です):

・あなたがリツイートした内容も含めて上司に報告し判断をしてもらいますし、多くの国会議員にその内容を報告します。

・僕は霞ヶ関そして国会議員に働きかけます。国会で取り上げてもらいます。

・非公式に経済産業省本省からは違う反応が返ってきてますよ。

・国家公務員としてその言動はあり得ない。責任問題ですよ。国会で取り上げてもらうべく、国会議員に働きかけます。

・逃げてますね〜。今週上京してあなたの職場にこのblogを持って行きます。上司に判断してもらいましょう。

・では、僕があなたの上司にあなたのblogを携えてお願いに行きますよ。ちなみに元経済産業省事務次官には伝えましたが、「困ったものだ。」と言ってましたよ。

・逃げたらダメですよ。あれだけ言っておいて。卑怯だ。

Tカード強制によって市民が得られるものは?

若者の半数は既に持っていると言われるTカードですが、中高年への普及はこれから。高齢化の進む地方の図書館との提携は中高年に対するTカード普及を進めたいCCCの思惑と一致します。また、CCCの平成23年度3月期決算短信を見ると、TSUTAYA直営事業のみ赤字となっており、運営費を出してもらえる地方の図書館との提携はTSUTAYAとしても前向きにやっていきたいところでしょう。今回の提携によるTSUTAYA側のメリットはわかりやすいのではないかと思います。

それに対し、市民側のメリットはまだ明確ではありません。現在提示されているTカード強制移行のメリットは「持ち歩くカードが減る人がいる」「本を借りたら1ポイントつく」のみ。果たしてこれだけのためにTカードへの強制移行をやる必要があるのか、きちんと考える必要があるのではないでしょうか。

アイデアに満ちた新図書館によって市民は新しい体験を得ることができると思います。しかし図書館に民間の会員カードを導入したり、本を借りた人にポイント付与したりといった前例のない試みも含むわけですから、できるだけ多くの人で問題がないか検証したほうが良いのではないかと思います。専門家の意見をはねのけるのではなく、助言をしてもらう方が市民のためになるのではないでしょうか。

そしてなによりも、市長とTSUTAYA側がまずやるべきことは圧力ではなく高木氏の質問に対する答えを少しでも早く公表することです。

高木氏の最新エントリー:
「個人情報」定義の弊害、とうとう地方公共団体にまで
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20120508.html

Facebook市長の関連エントリー:
公開討論会しましょうよ。
http://hiwa1118.exblog.jp/15838328/ [リンク]

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記者:

ニュースサイト『ガジェット通信』発行人。未来検索ブラジル代表。東京産業新聞社代表。ハリウッドエンターテイメントビジネス誌『Variety Japan』Senior Editor。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラクターに興味がある。好きな食べ物はシュークリーム。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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