「科学万能主義」みたいなものを勝手に脳内で設定してシャドウボクシングしてる人(不倒城)

「科学万能主義」みたいなものを勝手に脳内で設定してシャドウボクシングしてる人

今回はしんざきさんのブログ『不倒城』からご寄稿いただきました。

「科学万能主義」みたいなものを勝手に脳内で設定してシャドウボクシングしてる人(不倒城)

たまに見るんですが。

これは断言していいと思うんですが、「科学は絶対的に善であり、間違うことはない」「科学は万能である」と思っている人がいたとしたら、その人は「科学って何?」というところからよく分かっていない人です。

そして、私が知っている限り、ちゃんと論拠をもってニセ科学批判をしている人の中にそういう人は一人もいないと思うんですが、どういう訳か、「科学万能主義」「科学絶対主義」みたいなものをワラ人形に据えて、それを批判するという人は結構頻繁に目にします。

例えば先日、科学万能主義が云々、ということを枕に、牛乳有害説を取りあげている人を見かけました。どうもあまりアクセスを送らない方が良さそうな案件だったのでリンクは貼りませんが。

まあ牛乳については、乳糖不耐症の人とかもいるし、体質に合わない人は飲まない方がいいんじゃないの、けど牛乳自体が有害って言うのは明白におかしいよね、という程度の意見なんですが。私が知っている限り、牛乳有害説を批判している人の中に「科学は万能である」という人は一人も観測出来ないので、具体的には誰を指しているのか教えてもらえると嬉しいなーと思いました。

ちょっと前にはこんなツイートも観測しました。

「科学は絶対的に善であり、間違うことはない」
と思っている人。その自覚のなさ。

ニセ科学批判の人、かなりの割合でそうなっている印象がある。

人の心を「科学」という言葉でねじ伏せようとするとこうなるのかな。

「ニセ科学批判の人、かなりの割合でそうなっている印象がある。」ということなんですが、これも同じく、ニセ科学批判界隈の人で「科学は絶対的に善であり、間違うことはない」と言っている人を観測したことが一度もないので、出来れば具体名を挙げてもらえればなーと思います。

科学というのは凄く広い言葉なんで、一言で説明するのは難しいのですが、共通する方法論というのはあります。科学的方法とか、科学的手法とか言われるヤツです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E6%96%B9%E6%B3%95
(「科学的方法」2017年09月22日時点 『ウィキペディア』)

細かく解説すると長くなるんでざっくり書きますと、「測定可能性」「再現性」「論理的整合性」辺りがここで取り上げたいキーワードになります。

つまり、

・実験によって測定することが出来、
・同じ条件であれば、誰がやっても同じ結論を導くことが出来、
・証拠を元に、きちんと筋道だった結論が得られること

を科学の対象とするんだよ、という話ですよね。まあ分野によっても色々変わってはきますし、ここで書いてあることが全てじゃないのは当然ですが。

これって、裏返すと、

・一人で証拠もなしに勝手に導いた結果は科学的に正しいとは認められない
・反証の機会を提供しないものは科学的に正しいとは認められない

っていうことですよね。

つまり、「一人でやると間違えるから、色んな人が検証して、皆が正しいと賛同出来るものを正しいと考えましょう」というのは、科学の重要な考え方の基盤なんです。「人間は間違えるから、皆で確認しましょう」っていう考え方なんです。

ある事象が「科学的に正しい」と一旦認められたとしても、それが後から覆されることっていうのは全然珍しいことではありません。科学は、常に検証するものですし、常に反証可能性を考慮するものです。

現実、論文は色んな人に検証・確認(査読と言います)してもらえないと妥当だとは認められないし、一度認められたものが後からひっくり返されたりもする。

一人、あるいは仲間内だけで勝手に「正しい」と言っていることよりも、皆で「正しいかな?正しいかな?」と議論され続けられているものの方が信頼できる。多分当たり前のことですよね?

その辺のことが分かっている人であれば、間違っても「科学は万能である」とか「科学は絶対である」なんてことは言えない筈なんです。逆に、「万能も絶対も存在しないから、その時点でなるべく妥当だといえることを「正しい」と考えようね」というのが科学、という風に言ってもいいかも知れません。まあこれも随分ざっくりした話なんですが。

ただ、いわゆる科学的方法と相性が悪いものを信奉している人達にとっては、「科学絶対主義」「科学万能主義」というものが存在した方がどうも都合がいいらしいんですね。

「偏狭な」「自分たちの理屈以外を認めない」「他の考え方を許容しない」というようなイメージが科学にあった方がぶん殴りやすいし、「科学から迫害されているけど実は正しい私たち」を演出しやすい、ということなんでしょうか。科学を「権威」と設定して、敢えてその権威を否定してみせることで注目を稼ぐ、元々その分野をよく知らない人に「そうだったのか!」と思わせて信用させる、といったテクニックを使われる人も散見されます。

そういうの好きじゃないなあ、と。

私はどちらかというと科学的方法を信頼している方なので、科学を何か勘違いしたワラ人形にしようとしている人たちがいると気になりますし、「科学ってそういうもんじゃないと思いますよ」と言いたくなります。そういう人たち自身はもう手遅れだったとしても、もし同じように科学を誤解している人がいれば、出来れば誤解を解きたいなーと考えている次第です。

今日書きたいことはそれくらいです。

執筆: この記事はしんざきさんのブログ『不倒城』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2017年09月22日時点のものです。

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