ぶっ飛び邦題ながら笑えて考えさせられる傑作コメディ! 『ジーサンズ はじめての強盗』【映画レビュー】
モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンという主演全員がアカデミー賞俳優という、レジェンドたちの夢の共演が叶った映画、『ジーサンズ はじめての強盗』が公開中! 小規模公開ながら実はいい成績を記録しているとかいないとか、な本作は、1979年の『お達者コメディ/シルバー・ギャング』(こっちの邦題もすごいw)のリメイクで、平均年齢80歳以上のジーサンたちが、人生最後の賭けで銀行強盗に出てしまうというコメディー作品です。
“年寄りの冷や水”のオンパレードなので終始いけないと思いつつも微笑ましく笑ってしまうが、まったく笑えない現実的なことも盛り込まれている本作。我々もいずれ行く道、ジーサンズの受難と希望を描く『ジーサンズ はじめての強盗』とは?
『ジーサンズ はじめての強盗』は前述の名優たちが、体を張ったアクションで演じきった人生一発逆転を目指すストーリー。務めていた会社の突然の年金打ち切りによって絶望のドン底に落ちた平均年齢80歳以上のジーサンたちが、頼れるのは自分と同志だけと地底からはい上がるため、銀行強盗を思いつく。ウィリー、ジョー、アルの3人は同時に生まれて初めて真面目な生き方も捨てることを決意して、人生のクライマックスにすべてを失うかもしれない命がけの大勝負に出る! その様が実に痛快なヒューマン・コメディーなのです。
この映画で扱っている老後の年金、住宅ローン、病気、リタイア後の生活などという身近な問題は、まさしく高齢化社会が絶賛到来中の現代の日本も直面なう! な問題。ただ、シリアスながらもアカデミー賞に輝く芸達者な3人がコミカルな演技で表現しているので、鬱屈した気分になることはまったくない。それどころか、破天荒で行動力がありすぎるジジイたちにあこがれの念を抱いてしまうほど、この映画は前を向いている痛快作なのです! それにこの3人の共演はもう最後かも……と思うと、自ずと観たい衝動にかられてしまいます。
この『ジーサンズ はじめての強盗』のメインテーマは、“困難に負けず、自力で乗り越えていく”ということ。ただ、3人がしでかしている銀行強盗は立派な犯罪なので、それをそのままお手本にしてはいけませんが、年金や生活という自分の人生を奪われそうになった時、それをただ傍観して泣き寝入りしてしまうことも言ってみれば間違い。人生で理不尽な局面に立たされた時、勇気を出して立ち向かえるかどうか。その気概こそがテーマなのです。
なにしろ初めての銀行強盗なので、人生の経験値が豊富な3人とはいえ、しっかりと準備をする。その道のプロの指導を仰いで強盗の技術と感覚を磨いていくが、その過程も笑えます。映画の初めではしょぼくれていたジーサンたちが、盗みのイロハを学習していく過程で、ほんの少しだけ輝いているような気も。おそらく会社勤めの40年間に比べて、銀号強盗の準備をしているいまが一番輝いているかもしれないという笑えないユーモアがありながらも、そのシーンでは“人が何かに一心不乱に打ち込む姿は何歳になっても美しい”ということが言いたいのだ、と理解したい。まさしく生き生きとしているのです。
時に今の日本においてもブラック企業やノー残業手当など、ウィリー、ジョー、アルの3人のように、組織で尽したところで報われないなどという辛い現実が多々あります。ハッキリ言って、この『ジーサンズ はじめての強盗』を観たところで、目の前の過酷な現実への具体的な解決策が得られるわけではありません(だって銀行強盗なのだから)。とはいえ、3人が老体にムチ打つ姿を観て、明日も頑張ろうと思えることだけは確か。『ジーサンズ はじめての強盗』というタイトルを聞いて、「親に向かってなんだこの邦題は」と思うかもしれないが、ハードルをちょっと下げて鑑賞すれば、その分“返り”も多い映画なのでおすすめです。
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