「原発は地震には耐えた」はウソだった?

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 東日本大震災から一年が経ち、同時に福島第一原発の事故からも一年が経ちました。2011年12月16日、野田佳彦総理は福島第一原発の「冷温停止」を宣言しましたが、これは事態の収束を意味するものではありません。
 原子核物理学者の小出裕章氏の著書『図解 原発のウソ』(扶桑社/刊)によると、原発事故は収束どころか、まだまだ解明されていないことが数多く残されているようです。
 
■「冷温停止」宣言の欺まん
 野田首相は福島第一原発の1〜3号機を「冷温停止状態」にさせたとして「発電所そのものは収束に至った」と語りました。
 しかし、これでもう安心、というわけではありません。「冷温停止」とは原子炉内の圧力容器の中に健全な形で水が蓄えられていて、さらにその中に炉心が存在することを前提としたもの。その条件下で圧力容器の温度が100℃以下になるかどうかという話であり、今回の事故のように炉心が溶けて圧力容器の外に出てしまっている状況下では温度がいくら下がったところで意味がないのです。
 溶け落ちた炉心がどこにあるかということはまだわかっていません。問題はそれを解明して、どうやって閉じ込めるかということだと小出氏は語ります。
■「原発は地震には耐えた」は本当か?
 今回の事故で起こった水素爆発は、地震と津波によって発電所が「全所停電」し、原子炉が冷却できなくなったことによって起こったとされています。この電源喪失について、政府や東電が津波によるものだと主張していることもあり、「原発は地震には耐えた」という認識が広まっていますが、これに小出氏は疑問を投げかけています。
 原子炉の通常の冷却システムが止まった時、とにかく非常用復水器で炉を冷やすことが最優先となることは東電の作業員もわかっていたはず。しかし実際はそれを手動で止めてしまいました。
 小出氏はこの件について、配管のどこかが破れてしまっていたのではないかと推測しています。配管が破れた状態で非常用復水器を動かすと冷却材が漏れ出てしまいます。そのため仕方なく手動停止したのではないかというのです。そして、仮に配管が破れていたとしたら、その原因はおそらく地震ではないかとしています。
 その場合、当然日本中の原発が問題となり、耐震指針の見直しが必要となり、再稼働どころではありません。
 本書には、事故から一年経った福島第一原発で何が起きているのか、一年の間に放射能汚染はどれほど広がったのか、収束させるにはどうしたらいいのかが、多くのカラー写真やデータと共に解説されています。
 時が経つにつれ事故発生当時の衝撃が薄れつつありますが、この事故がまだ謎に包まれたものだということを忘れてはいけません。これから原発をどうするべきか、という問いに自分なりの答えを持つためにも、原子力発電や放射能の知識は得ておくべきなのかもしれません。
(新刊JP編集部)


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