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【寄稿連載】第九話 ホームレスと不法占拠

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ホームレスのおっちゃんの溜め息

今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

第九話 ホームレスと不法占拠

神さんは二人に、この機会にホームレスから抜け出そうではないかと訴えた。しかし二人からは良い返事は聞けない。特に黒さんは年齢的なこともあって、まともに話も聞いてくれない。

年齢的なこととは、神さんはまだ40半ばだから仕事を見つけやすいが、自分は50半ばを過ぎているから無理だと言う。それならば、生活保護をもらいながら、ゆっくりと仕事を探したらいいだろうと言うと、今度は国や都の世話にはなりたくないと言いだす。

このやりとりを、最初の会合から何回繰り返してきただろうか。俺がおっちゃんたちのことが気になって、また公園にやってきたときも、神さんは二人を説得している最中だった。俺が来ていることも気がつかないほどに、三人は言い合っていた。相も変わらず、神さんと黒さんの言い分は平行線をたどっている。前さんはほとんど会話に入らずに、酒をちびちびと飲んでいる。

俺はある程度まで近づいていたが、まだ気がつかない様子だった。聞くつもりもなく聞いていたが、その時に初めてこの公園から退去命令が出ていることを知った。

俺は少しだけ驚いた。俺はホームレスのおっちゃんたちはずっとこの公園にいるだろうと思っていた。それだけ見慣れた光景だったのである。しかしよく考えれば、おっちゃんたちは勝手にこの公園にテントを張って住んでいるのである。だから不法占拠である。これは違法である。それゆえに、この公園から出ていってくださいと言われても、仕方がないのである。

これはホームレスのおっちゃんたちも、わかっていたことではあるのだろう。しかしわかってはいたが、ここ何年間も黙認してきて、急に国際的なイベントがあるので今月中に出ていってくださいと言われても、納得がいかないのではないだろうか。

俺があれこれ考えているうちに、神さんたちはようやく俺の存在に気がついたようで、俺のほうを振り向いた。特に黒さんはかみつかんばかりの顔をしていた。俺はすぐに今までのことを謝った。そして自分でもわからないが、今聞いたこともあったからか、自分にできることがないかと尋ねた。

三人は顔を見合わせたまま、きょとんとしていた。

続く

執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

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記者:

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