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【MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談(2)】SPIDERが変えるテレビ視聴 – PTPの野心

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「新しいテレビの楽しみ方を探る」をテーマにお送りしているMIRO(MobileHackerz)と竹中直純(未来検索ブラジル取締役、PTPの仕掛け人)の対談シリーズ。第2回は、竹中直純が『SPIDER』開発の背景と、その魅力を語ります。

聞き手:ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)

(第1回はこちら

■テレビ全録で”質的変化”を
それでは、竹中さんがPTPで、多チャンネル同時録画できるハードディスクレコーダー『SPIDER』プロジェクトに携わった経緯をお聞きしたいのですが。

竹中 はい。まず、現在のインターネットの常時接続の便利さは、常時接続が一般的になる前はフツウの人に全然理解されなくてですね、何を言ってるんだって言われた時代があったんですよ。

それと同じようにですね、テレビ番組を全部録っておくことによってこそテレビの解放につながるというか、質的変化につながるという確信があってですね。

PTPのなかでも、いろんなかかわる人がいて、その人たちが希望するものの総体としてのSPIDERというのが今プロダクトとして出ていますけれども、僕のなかでは絶対に24時間録っておかなくてはいけない確信だけはあったんですよ。もうだいぶ前のことです。

10年以上前からそういうものを作りたいなと思っていて。たまたま、PTPの代表の有吉(昌康)さんという人が、「TiVo」が出始めたときにアメリカで見てきてですね、「なんかスゴイものがある」と。テレビ番組を後でみんなでわぁわぁ話題にして話すということはずっとやられてきたことだから、TiVoみたいなデバイスがあれば、それをインターネット上に持ってくることが絶対にできる。

PTPっていうのは「Power To the People」を略した名前(社名)です。今は社名変更して、略称だったPTPが正式名称になりました。消費者として、視聴者として番組を観てる人が後からでも観れるようにすると、番組の批評ということが客観的にできて、ひいては番組の制作なんかにもいい影響を与えられるかもしれないというのが、PTPの有吉さんが考えたことで。

僕は別に、「消費者に力を」とかそんなことは考えずに、便利というか質的な変化が僕にどういう影響をもたらすのか、すごくやってみたくてですね。僕はハードウェアは作れないので、チャンスを待ってたんですね。

もともとPTPっていうのは、テレビ番組にかかわる批評ができればいいなと思っていたんですが、最初は批評が集まりやすい携帯電話とか、映画とか化粧品のレビューをひたすら集めるサイトを作ったんですよ。2000年当時は、24時間とにかく録って観るみたいなことは技術的にまだ。ハードディスクも小さいし、CPUのパワーも足りないのでできなかったんです。というわけで、レビューサイトを始めたんですけれども、レビューサイトじゃまぁ立ち行かないわけですよ。『価格.com』みたいなでかいところがでてきて、うまいことやって(笑)。最初は価格.comよりPTPの方が勝ってたんですけど、いろんな問題がありPTPは競争に敗れ気味だったわけですよ。

競争に敗れると、広告は取らないっていうポリシーだったので、どうやってビジネスをやっていくのか難しくなってきて。「サービスを整理するかもね、どうする?」っていう暗いミーティングでですね、僕が「有吉さんが最初に会社を作るときに目指していたテレビ番組のレビューっていうのをやるにはどうすればいいだろうか、もう一度始めから考え直してみませんか」と言ったんです。

■ハードウェアを作ってみよう
竹中 それが4~5年前なんですけど、その当時やっとハードウェア的にもハードディスクが250GB、CPUが『Pentium 4』(インテル)とか。1GHz超えるCPUや1GBを超えるメモリーが見えてきたし、もうできるだろうということで、「やってみよう。ハードウェアを作ってみよう」ということになり、PTPのこういうプロダクトに結びついているんです。ただ、それを始めたのが、1年後にアテネオリンピックがあるっていうタイミングだった気がする。2003年の頃ですね。結局、一般消費者に出せるようになったのは2008年の春ですから、実に4年遅れたわけですよ。

MIRO 大変ですね。

竹中 ソフトウェア自体は、雑誌で見つけて飛び込みでスカウトした籠屋(健。こもりや)さんという方が非常に優秀でですね、わりと早い段階で今のSPIDERのインタフェースに到達できていたんですけれども。ハードウェアはやっぱりコンシューマープロダクトって壊れないように作らないと、サポートが大変じゃないですか。電源が安定しているかどうかとか、ハードディスクに変な振動がいかないようにとか、熱をどう排出するかとか何年かかけて調節して、やっとモニター販売できるようになっているというのが現状です。

SPIDERのユーザーインタフェース(UI)のことを教えてほしいんですが。

竹中 それはさっきMIROさんがおっしゃっていた「動画を持ち歩きたい」と言ったのとは対称的で、「リビングでふんぞり返ってリモコンで操作したい」というのがSPIDERの考え方です。

実際、デジタル対応するまでは旧来のテレビの画質で観るしかないし、地上デジタル(地デジ)の画質で観たければ地デジで観るしかないんですけど。それさえあきらめれば、というか画質にこだわらなければ、完全にテレビがSPIDERのモニターになります。今やってるテレビを十数秒遅れて観るのでよければ、ライブ視聴みたいなこともできますし、番組表から観るっていうのもできるんですけど。クルクル回る「Front Row」みたいなメニューデザインです。Front Rowのマネって言われると嫌なので、Front Rowより全然先にあの形になっていましたから、念のため(笑)。

テレビって遠くにあるじゃないですか。だから遠くからオペレーションしやすい工夫が随所にされている。それはやっぱりMIROさんの『24時間ワンセグ野郎』がPCのストリームで観るのと対照的で、のぞき込むんじゃなくて、環境のひとつになるものとして結構、気を遣ってるところのひとつですね。

MIRO 24時間携帯ワンセグ野郎も、今は全部PCベースでやってますけども、それはPCにしたいからPCにしてるわけではないんですね。ですがどうしてもワンセグ野郎のそのものに関しては、元のデータがワンセグなので画質的にリビングの大画面では観るわけにもいかなくて。

竹中 観てみたらいいんじゃないですか? やってみたの?

MIRO やりましたよ。

竹中 どうでした?

MIRO いやぁ、なんていうか。実はうちはリアプロジェクションの巨大画面のテレビを使ってるんですが、61型で観るワンセグはすごかったです(笑)。 もう、これはいったい何が映ってるんだ? っていう状態で。

竹中 そうかぁ(笑)。解像度が上がっていけば上がっていくほど体験として豊かかというとそれは分からなくてですね。たしかにワンセグは限界を超えてるとは思うけども、どっかにありますよね。

MIRO それは分かります。たとえば今、画質をあきらめればテレビが完全にSPIDERのモニターになるって話がありましたけども、やっぱり私の家でも似たようなもので、SPIDERはないけれど、ハードディスクレコーダーの『コクーン』(ソニー)はあるわけですよ。

竹中 うんうんうん。

MIRO いまだにアナログレコーダーのコクーンが現役で。コクーンを使ってるとテレビは完全にモニターになるんですよね。たまたまライブで観たい番組があるときだけ地デジに切り替えるっていう。

竹中 僕も土曜日の夜9時から『世界ふしぎ発見!』(TBS)を観るときだけ、電話をかけなきゃいけないんで、地上デジタルに切り替えるんですよ。あとは全部SPIDERですね。

深水 『クリスタルヒトシくん』?

竹中 そうそう。クリスタルヒトシくんをゲットするためにですね。何年も頑張ってるんですけど、なかなか難しいんですよね。だから、知らない番号から電話かかってくるとすごいドキドキするんですよ。「もしかして当たったんじゃないか?」と思って(笑)。出ると「すみません、○○銀行なんですけど・・・」みたいなことがあるんですよねー(笑)。がっかりですよ。

■後からみんなで楽しむテレビ
竹中
実況スレッド勢いブラウザ』みたいなものが、SPIDERにはまだないんです。違うアプローチとしてできるようにUIを作ってるんですけど、番組の途中でですね、面白いと思ったらみんなに届けるというか、「このシーン面白いよ」みたいなことができたりして。

番組って時間枠があるじゃないですか。0分0秒から54分くらいまで、みたいなね。そうじゃなくて途中にいきなり行くっていうのがテレビ体験としては非常に面白いものですよね。だから、一つの番組の間に面白くないところが山ほどあっても、そこだけ観てほしいものっていうのがあって。

テレビって外部で観てるときは別ですが、録画したら、その枠を全部観なくちゃいけないような気になりません?全録してるとそれもなくなるから、帯の中で「ここ観よう」みたいなことができるんですよね。たとえば、僕が最近みんなに送ったシーンなんですけど、オホーツク海の海底にタラバガニが大量に歩いてるっていう。観た人います? 日曜日のね、コート立てたおっさんがアニメで歩くような番組。

MIRO 夕方の? 『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)だったっけ。福澤さんだったかな。

竹中 そうそう。あの人がやってる番組の真ん中から後ろぐらいにですね。北方領土で漁業がどうのこうのみたいな重いテーマなんですけど、潜水夫が潜って下にカニがウワーッと歩いててですね(笑)。

MIRO (笑)。

竹中 これがすごい衝撃で。「うーわめっちゃ面白い」って、それだけを送ったんですが、そういう観方がテレビでできるっていうのは、やっぱり全録してないとできないので。しかも他の人に送ってね、それを観てくれるだろうと期待できるということは、その人も全録してるわけですよね。

MIRO 「こういうのあったよ」って友達に教えたいんですけど、動画を送ると著作権上問題あるんで、結局送れるのはメタデータで何時何分何秒から何時何分何秒のどこのチャンネルっていうものになる。そういう場面に遭遇すると「全録の環境をみんな持って欲しいな」と思いますね。

竹中 そういうのが法律的にね、1ヵ所に集中して、みんなが何万人も同じ所を観られる設備が整ったとしても、各家庭に全録の環境はインフラとかリソースの問題から見てもムダが多いんだけど、これ(全録環境)しかないっていう感じしますよね、ここ20~30年は。言いすぎかもしれないけど、でも10年ぐらいはそうですよね。

そうなる、ならなきゃいけないと思うんですよね。今、YouTubeとかニコニコ動画にTVのクリップを上げてみんなでワーっと書き込むのは当然のようにされてますけど、非常に著作権法的には問題がある。黒に近いグレーですね。それがちゃんと法律が変わる前からクリアできる快適な番組選びを実現できるには、SPIDERとかワンセグ野郎のような装置が必要ということですよね。

MIRO その番組って何時ごろ?

竹中 テーマがふたつあって、後半だったので、最新の。35分か40分か。

MIRO 「ハナサキガニと領土問題」

(ワンセグ野郎で確認、盛り上がる)

竹中 どこにいても観られるのがよいですね。SPIDERは家に帰って観ないといけないから。

でも、『ロケーションフリー』(ソニー)、『Slingbox』(アイ・オー・データ機器)といった機器で観られるようにはなってるんですけど。リビングを主に考えているのと、必要に応じて作っていったがゆえに、モバイルで観られるというものとはスタートが違うものなんでしょうね。

外に持ち出すのは、SPIDERとしては次の段階と思っています。

MobileHackerz X 竹中直純スペシャル対談(3)』に続く

MIRO プロフィール:
MobileHackerzの中の人。デジタルガジェットをこよなく愛するモバイル男。でも最近「自転車」にハマり、引越して電車移動の時間が短くなりでガジェットをいじる時間が少なくなってます……。

竹中直純プロフィール:
有限会社未来検索ブラジル取締役、武蔵野美術大学講師。インターネット草創期より、数多くのWeb サイトやシステムの設計・運営に携わるプログラマー。技術家を自称している。現在は、システム開発のみならず、Web関連のディレクションやプロデュースを多数手がける。

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記者:

宮原俊介(編集長) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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