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「鳥さんが僕のお友達さ」やたらに増える独り言…メランコリックな源氏と愉快な野郎たち~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

源氏34

須磨での日常、源氏と愉快な野郎たち

源氏が須磨に来てあっという間に半年が過ぎました。日増しに秋らしくなり、夜は特に波音が近く聞こえます。何もなくても秋は寂しいのに、海辺での初めての秋は一層、身にしみるものがありました。

「波音が迫ってくるようだ…」源氏は独り目を覚まし、轟く波を聞きました。ただそれだけなのに、涙が溢れ出てきます。そばにあった琴をかき鳴らしてみますが、あまりに哀切な音になるので手を止めて「風は、恋しい方から吹くのだろうか。私の泣き声に混じって波音が聞こえてくる」。

メランコリックな源氏のつぶやきに、惟光らも目を覚まし、こらえきれずもらい泣き。それを見て源氏はハッとします。「ああ、自分だけじゃない。京が恋しいのは皆同じなんだ。でも私のせいで、しなくてもいい思いをさせてしまっている…」。

源氏はとても寂しがり屋です。でも、ここで自分が「京が恋しい、寂しい」と言っては、従者たちを心配させてしまうだけ。家族や恋人を置いて自分と運命をともにしてくれている、彼らの主としての自覚が足りなかったな、と反省したのです。

翌日から源氏は、昼間は冗談を言って笑わせたり、皆でいろいろな色の紙に落書きをしたり。率先して気分をあげようと努力します。源氏って、身分の上下に関係なく、とにかく人に気を使うタイプなんですね。

源氏は出来杉君のようになんでも万能ですが、特に絵が上手。京にいた頃は、話に聞いた海や、山の景色を想像して絵を描いたものでしたが、今は本物の海が目の前にあります。源氏は、リアルで躍動感あふれる絵をたくさん描きました。

源氏のスケッチに惟光たちは感心して、「有名な絵師を呼び寄せて、色をつけさせたらもっと素晴らしいでしょうね」と言い合います。このスケッチ、今は何気なく描きためているだけですが、のちのち源氏の出世に大いに役立つとは、誰も思いもよりません。

5人の従者たちは全員男。まったく女っ気がなく、何から何まで自分たちでやらないとダメな不便な暮らしですが、彼らは幸せでした。いつもぴったり源氏にくっついて、たまに「ああ、なんと殿はお美しい」とうっとりしながら……。

朝早く起きてお経をあげ、日がな一日、絵を描いたり合奏したり。寂しさを紛らわせるべく、源氏の須磨での暮らしは淡々と過ぎていきます。なんだかんだで、この男所帯は結構楽しそうです。

「今日は十五夜…」源氏、宮中でのお月見を思い出す

明るい月の光に、源氏は今夜が中秋の名月であることに気が付きました。「今日は宮中でも音楽の夕べだろう。帝や朧月夜、京の人びとも同じ月を見ているのだろうなあ」。月を眺めていると、過去のことが走馬灯のようによぎります。源氏はこらえきれず声を上げて泣きました。

夜が更けても、源氏は部屋へ入ろうとせず、まだ月を見ています。「月を見ていると心が慰められるな。京の都は月のように遠いけれど…」。そういえば、兄上とゆっくりお話をしたなあ。優しいご様子が、本当に父上によく似ていらした。「帝から賜った衣は今ここにある」。源氏はやっと部屋に入ります。

去年の中秋の名月は清涼殿(宮中で帝が居る御殿)にいたのに、今は配所で帝から下賜された御衣の香りを拝している…というのは、大宰府に左遷された菅原道真の漢詩を引用しています。

源氏もまさに道真の漢詩と同じ境遇。信じられないような運命の暗転に、恋しさと辛さの両方からの涙が溢れます。誰に言うわけでもなく、手元に残った御衣を思い、独りでつぶやいた秋の夜。「惟光たちの前で言うと心配かけるから」というのも手伝い、源氏の独り言がやたらに増えます。現代に彼がいれば、ツイッターをおすすめしたいですねえ。

「今でも思い出した時にメールを出す」そんな女性とすれ違い

トップクラスの政治家が行くと悲惨ですが、中流クラスの人間にとっては、太宰府は栄転の地でした。太宰大弐(だざいのだいに、九州エリアの長官)が上京するため須磨を通り、源氏の琴の音を聞いて挨拶に来たのです。源氏とは旧知の仲で、彼の大弐の息子の出世を後押したこともあり、大弐の家族もみな、源氏の不遇に同情しました。

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