ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
「ジャスティス・リーグ」特集サイト

犬おぼえがき「リリー」

DATE: BY:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫
img_0929rb

大きな黒い犬リリーの飼い主のマージは、私たちが11年前にこの地に引っ越して来た時の一番最初の犬友達だ。
モコモコと大きなリリーを初めて見た時「スタンダードプードル?いや、それにしては太めかな?」と思い「何という犬種ですか?」と話しかけたのがきっかけだった。
「ブービエ・デ・フランダースと言うのよ。フランダースの犬って小説知ってる?あの犬はブービエらしいのよ。」という答えに「え!パトラッシュ!?パトラッシュがこんな黒くてモコモコって、イメージ違うんですけど!」と思いつつ「へ〜そうなんですか」とリリーをモフモフさせてもらった。
(余談ながら、小説出版当時の19世紀にはまだ固定された犬種ではなかったので、色もサイズも様々なタイプのブービエがいたそうだ。)
世話好きなマージは、お勧めの動物病院やお得なペット用品の店を教えてくれたりして、ずいぶんと助かった。

リリーは当時1歳。元気を持て余すお年頃に加えて、元々は牧畜犬という犬種ゆえ、それはそれはエネルギッシュな犬だった。
ちょうど同い年でドッグパーク1の走り屋だったうちの犬と意気投合して駆け回っていたものだ。
私の顔を見ると「バウッバウッ」と低く太い声で吠えながら駆け寄ってきて「撫でて撫でて〜」と言わんばかりに頭をグイグイ押し付けて来るリリーは、うちの犬だけでなく私にとってもだいじな友達だった。

しかし大型犬の宿命で、リリーはうちの犬よりも早いスピードで年を取っていった。7歳か8歳の頃には、他の犬の「走ろうよ」「おすもうしようよ」という誘いに応じることもなくなっていた。そんなリリーを見るのは少し心が痛んだ。
それでも散歩の時にリリーの姿を見かけてマージと立ち話をするのは相変わらず嬉しいひとときだった。年を取って落ち着いたリリーは、マージと同じ年頃の親友同士という風情だった。若い頃のリリーはそれなりにマージを悩ませ、レッスンやセミナーのハシゴをしたというのが笑い話になるくらいに。

img_0937

2年前のある日、いつものように犬たちと散歩をしていると、コッカースパニエルを散歩させているマージに出会った。「あれ?どうして?」と少し混乱したけれど、マージに会うのはかなり久しぶりだったことに思い当たった。
「もしや…」と恐る恐る「リリーはどうしたの?」と尋ねると、2ヶ月ほど前に急性の病気で旅立ってしまったということだった。
言葉に詰まったけれど「でも長く苦しんだりはしなかったんだ?」と言うと「うん、前日まで普通に暮らしていたから、幸せだったと言えるかもしれない。」と応えるマージに「幸せだったと言えるかも?リリーが幸せじゃなかったら、どんな犬なら幸せだと言うのよ。」と二人して軽く泣き笑いをした。

その時マージが一緒にいたコッカースパニエルはシェルターの一時預かり犬だった。
「リリーがいなくなって1ヶ月ほどボーッとしていたんだけど、やっぱり犬のいない生活はダメなのよ。メリハリがなくてねえ。」と言うことだった。うん、それは良く分かる。
「でもまだ他の犬とリリーみたいな関係を作る気にはなれないの。だから一時預かりのボランティアを始めたのよ。普段は犬のいる生活を味わえるし、旅行の計画を立てることもできるし、悪くないわよ。」うん、その気持ちもわかる。

リリーが旅立って2年余り経つけれど、マージは今も一時預かりのボランティアを続けている。世話好きな彼女の気性に合ってもいるのだろうが、あのモコモコリリーの抜けた穴はきっと余りにも大きいのだと思う。
けれどマージがリリーの穴を埋める犬と出会っていないからこそ、2年の間に何匹もの犬がマージの元から新しい家族の所に迎えられていった。まるで旅立った後もマージの手を焼かせながら心のサポートもしているみたいだ。リリー、なかなかやるじゃないか。

(画像は著者撮影)

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: ガニング 亜紀) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

ガジェ通ウェブライターの記事一覧をみる ▶

記者:

ウェブサイト: http://rensai.jp/

TwitterID: anewsjp

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。