BiSH“BiSHの伝説はBiSHが創る”運命も批判も弱さも跳ね飛ばした革命の一夜……新時代のポップアイコンへ

BiSH“BiSHの伝説はBiSHが創る”運命も批判も弱さも跳ね飛ばした革命の一夜……新時代のポップアイコンへ

 今年エイベックスからメジャーデビューを飾り、楽器を持たないパンクバンドとして日本中で人気沸騰中のBiSH。様々なジャンルの若者から愛され、ひとつのポップアイコン/ロックアイコンになりつつある彼女たちが、10月8日 日比谷野外大音楽堂にて【BiSH Less Than SEX TOUR FiNAL“帝王切開”】を開催した。

BiSH キュートな野音ライブ写真一覧

<「BiSをもう一度始める」BiSHが背負った運命……自分達の物語を歩む為に>

 結成から約3年半にわたり音楽シーンの常識を覆し続け、近年最もセンセーショナルな異端児アイドルグループとして活躍してきたBiS。横浜アリーナでの解散ライブに至るまでのストーリーは今や伝説として語り継がれているが、そんなBiSのマネージャー・渡辺淳之介が「BiSをもう一度始める」と始動させたグループがBiSHだ。当初はBiSのストーリーやスピリッツを踏襲するようなアプローチも目立っており、昨年の【TOKYO IDOL FESTIVAL 2015】(以下TIF)では出演キャンセルという事態に陥りながらも(http://bit.ly/1ImWRA9)その直後に【TBS】なるTIFのリストバンドがあれば無料鑑賞できるフリーライブを敢行。ただでは転ばないパンクス精神を見せつけ、大きな注目を集めた。

 しかし「BiSをもう一度始める」というコンセプトは、BiSHメンバーにとって十字架となっていたのは確かで、BiSを上回るセンセーションやおもしろを期待する者からは「物足りない」と言われ、チッチがダイエット企画に失敗してキャプテンを剥奪された際は「覚悟の違い」を指摘され、彼女たちのアイデンティティであるクソ真面目さすら「無価値」と評されることもあった。そんな中でエイベックスからのメジャーデビュー、ライブのセットや演出、ミュージックビデオのクオリティもメジャークラスの内容になり、今回の野音ワンマン直前には都内を宣伝用のBiSHトラックが走り回ったり、ゴールデンタイムにメジャー1stアルバムのTVCMが流れたりと、彼女たちを取り巻く環境は大きく変わっていく。

 メンバーもその速度に必死に追いつこうとパフォーマンスレベルを強化、楽器を持たないパンクバンドというキャッチコピーに相応しい小生意気さも覚醒させながら、自身のワンマンやツアーはもちろん、どんなイベントやフェスに出て行っても、様々なアーティストのファンが一体となって肩を組んでヘドバンしたり、全力でシンガロングしたりする光景を創造できるようになっていく。そして計ったかのようなタイミングで、BiSH史上過去最大規模となる日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ。メジャーデビューから僅か5か月でこれを実現してしまったことは驚きだったが、果たしてBiSHはこの地に相応しいライブが出来るのか? そして前述した様々なしがらみや壁をぶっ飛ばす事が出来るのか? 自分達の物語を歩む為に6人はどんなライブを見せてくれるのだろうか?

<6人の気迫「ダンスも歌もヘタクソだけど、ウチらは負けへんで!」>

 そんな期待と不安が入り混じった状態で会場入りすると、まずステージのインパクトに度肝を抜かれる。ど真ん中にBiSHのロゴがあしらわれた超巨大なバルーン。両サイドに「SEX」「帝王切開」とそれぞれ記されたこれまた巨大なバナー。そして、おそらく完全に見た目的な格好良さ、それも子供視点な格好良さを追求して設置したと思われるスクリーン3つ! かの長渕剛@富士山オールナイトライブまでは行かないまでも、エクストリームなSF作品然とした光景が眼前に広がっており、思わず笑ってしまう。そこへ前説役として登場する渡辺淳之介。自分の両親も観に来ていたそうで若干緊張しているようにも見えたが、彼にとっても大一番の野音公演について「僕のアーティストの中で野音でワンマンやるの、初めてなんですよ。やりたくてやりたくていつもやりたいと思ってたんだけど出来なくて、今日、この満員のお客さんの前でBiSHがここに立てるのは、本当に嬉しいッス。今日、みんながここに居たということを自慢できるステージに……BiSHがします!」と、メンバーとバトンタッチ。

 SEの「2001年宇宙の旅」がドラマティックに響き渡り、ステージ上の巨大バルーンが破裂すると、そこにBiSHメンバー6人が登場! 大歓声に包まれ、壮観な野音の光景を感慨深げに見つめながら、もはや何を叫んでるのか分からない奇声を上げながら「BiSH-星が瞬く夜に-」を披露。3つのスクリーンにデカデカとガムシャラに歌い踊る6人の姿が映し出され、その両サイドで「SEX」「帝王切開」が怪しくカラフルに光り、満員のオーディエンスは共に歌い踊り肩を抱き合って頭を揺らす。何もかもが強烈な光景。そして何より強烈だったのがステージ上の6人。アイナは同公演前のインタビュー(http://bit.ly/2dxL9sl)で「私たちは気迫で勝負できる。ダンスも歌もめっちゃヘタクソだけど、ウチらは負けへんで!」と語っていたが、その言葉通りにとんでもない気迫でパフォーマンスする6人の姿は、セットのインパクトにも観客の熱量にも一切劣っておらず、その様だけで冒頭から涙すら誘ってみせる。もう誰にも「物足りない」などと言わせない。そんな想いが痛いほど伝わるアクトで、6人はあらゆるノイズを自らの力で吹き飛ばしてみせた。

<全ての者にとっての代表曲へと昇華された……丸裸の「オーケストラ」>

 その後も、白いサイリウムの光に包まれたアユニ・D作詞ナンバー「本当本気」、作曲したRUKA(ナイトメア/The LEGENDARY SIX NINE)へのリスペクト代わりにヘドバンを繰り返した「IDOL is SHiT」、アイナがモニターの上「帝王切開」の隣で決死のシャウトをまくし立てていく「DEADMAN」、輪になったメンバーが手を振り上げるのに合わせて照明もバンアップするエモーショナルな演出も光った「Primitive」、ハシヤスメ・アツコ主演のコントで「ハゲ!」コールまで巻き起こした「Hey gate」、強引にステージに引き込んだセキュリティースタッフにチッチがガチビンタを喰らわせた「TOUMIN SHOJO」、ハグ・ミィの脱退時の想いやその後も走り続けたメンバーの姿とシンクロして涙が込み上げた「サラバかな」、立ち込めるスモークの中でモモコがこの上なくキレのある格好良い表情を覗かせた「OTNK」、約3000人(6000本)のトゲトゲが突き立てられた「beautifulさ」等々、すべての楽曲が同公演のハイライトになり得る、これまでのBiSHのストーリーに無駄なものなど何ひとつなかったと確信させる一撃一撃であり、BiSHのことを愛おしく感じずにはいられないライブがそこには繰り広げられていた。

 そして、アンコール。ステージ上には大所帯のストリングスチーム=オーケストラが横一線に並び、チッチが夜空を見上げながら「見上げたあの夜空に 浮かぶ星達 ふと君の声が あの頃輝いてたかな? 今になっては ずっと分からないまま―――」とアカペラで優しく歌い上げると、そこに疾走するバンドサウンドと壮麗なストリングスの調べが鳴り響き、メンバーの眼前には6色のサイリウムが一斉に輝きを放つ。そして、6人のメンバーは時に抱き合い、時に手を繋ぎ、目と目を合わせ、すべてのフレーズに溢れる想いを乗せながら「オーケストラ」をここに居合わせた全ての者にとっての代表曲へと昇華していく。この曲の終盤、泣きながら腕にしがみ付くリンリンを抱きしめながら「この手と手繋いで 笑いあった声 忘れはしないよ こんなにも流してた涙も 語る声も オーケストラ―――」と堪えきれない涙と共に歌い叫んだアイナの姿。思わずもらい泣きしてしまう者も多かったかと思うが、結成時から感情表現が上手じゃなかったBiSHが、いよいよ丸裸の自分で、しかも野音という大舞台で全てを溢れさせてしまったこの瞬間は、きっといつまでも我々の中に刻まれ続けるし、この先のBiSHのストーリーにおいても大きな意味を持つことだろう。

 なお、同曲の公式ライブ映像(https://youtu.be/O13MtmA-16g)はYouTubeに公開されているので、ぜひともご覧頂きたい。

<もう彼女たちはBiSの後継者でも、他の何者でもない……>

 その後、更なる感動の大団円となった「ALL YOU NEED IS LOVE」にて同公演は終了。いつまでも客席に手を振り続ける6人の表情は晴れ晴れとしており、リンリンの海外の子供みたいなテンションでの「せんきゅーべりまっち」といった感謝の言葉も手伝って、客席も清々しいほど笑顔満開。「以上、BiSHでした! ありがとうございましたー!」

 「We are BiSH!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 終演後、客席からは「感動した」「泣けた」「良かった」というやたらピュアでストレートな感想が次々と耳に飛び込んできた。これだけのライブを見せられた直後にアレコレ難しい事を言う者などいない。それは彼女たちがすべての否定的な言葉と対峙しながらも、時にはもう無理だと、私には続けられないと自分の弱さに負けそうになりながらも、それでもBiSHを諦めなかった結果だろう。もう彼女たちはBiSの後継者でも、他の何者でもない。自らの意思とその足で未来を切り開いていく、そしていつしか新時代のポップアイコン/ロックアイコンとして伝説となるグループ、それがBiSHだ。BiSHの伝説はBiSHが創る。そのストーリーにぜひとも注目してほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada

◎ツアー【BiSH Less Than SEX TOUR FiNAL“帝王切開”】
10月08日(土)日比谷野外大音楽堂 セットリスト:
01.BiSH-星が瞬く夜に-
02.ファーストキッチンライフ
03.ヒーローワナビー
04.本当本気
05.IDOL is SHiT
06.デパーチャーズ
07.DA DANCE!!
08.Dear…
09.DEADMAN
10.ぴらぴろ
11.Primitive
12.Is this call??
13.スパーク
14.Hey gate
15.TOUMIN SHOJO
16.サラバかな
17.MONSTERS
18.OTNK
19.beautifulさ
En1.オーケストラ
En2.ALL YOU NEED IS LOVE

◎MTV LIVE『BiSH Less Than SEX TOUR FiNAL“帝王切開”』
放送日:2016年11月21日 23:00~24:00

◎ツアー【BiSH NEVERMiND TOUR】
01月08日(日)ZEPP NAGOYA
01月14日(土)PENNY LANE24
01月15日(日)PENNY LANE24
01月28日(土)なんばHatch
02月18日(土)仙台PIT
02月25日(土)DRUM LOGOS
03月19日(日)ZEPP TOKYO

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