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「僕含め公人にプライバシーない」 雑誌『噂の眞相』元副編集長が語る「野良犬ジャーナリズム」全文(後編)

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雑誌は「読まれる記事で数字を取る一方、そのお金でファクトをとる」のが理想

 『噂の眞相』元副編集長の川端幹人氏と、『週刊朝日』元編集長の山口一臣氏の2人を迎えたニコニコ生放送「青木理のニュース現場主義『雑誌ジャーナリズムのチカラ』」(2011年10月10日放送)。番組の後半では川端氏が「公人にプライバシーはない」とスキャンダル雑誌に長年携わった同氏らしい主張をした。実際、川端氏は『噂の眞相』副編集長時代、女性と一緒にいるところを編集部員に撮られ、同誌のサイトに掲載されたこともあるという。

 以下、番組を全文書き起こして紹介する。

・[ニコニコ生放送] 全文書き起こし部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv66272093?po=news&ref=news#00:59:53
・検察からジャニーズまで「タブーなし!」 雑誌『噂の眞相』の”野良犬”ジャーナリズム全文(前編)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw133820

■週刊誌編集長の女性関係まで掲載した『噂の眞相』

週刊誌を俯瞰した「週刊誌記者座談会」

青木理(以下、青木): たぶんこれは次のテーマにつながっちゃうんでしょうけど、例えば、さっき言った『週刊現代』でやってこられてた加藤さん。僕みたいな、この業界の人間から見ていると、面白いスクープ、すごいスクープもあれば、何だこれというのももちろんあるんですよ、いろいろあるんだけど。

 でもすごいこのスクープ主義で取材力で、あの時の確か『週刊現代』のキャッチフレーズは「取材力ナンバー1週刊誌」というタイトルだったんですよね。実はあまりそれが売上には結びつかなくて、むしろ今山口さんが仰ったような企画ものだったりとか、何て言うか、長編の読み物だったりとか・・・。

山口一臣(以下、山口): 最近の『ポスト』のセックス特集とかね。

青木: あるいは「お墓はどうやって買うのか」ね。そういう・・・。

山口: ウチもやってましたけど、「老人のセックス」とかね。

青木: 「老人のセックス」とか。そういうのが読まれるような、というかそういうのがどっちかというと売れるというかというところも実際あるなという気はするんですね。

山口: ある、ありますね、はい。

青木: だからそれは・・・。

山口: だからそういうところで数字を作りながら、何て言うのかな、売上を伸ばして、稼いだお金で実はそういうファクトを取ってくるという取材をしたいなというのは理想的だと思うんですけどね。なかなか上手くいかないですよね。

青木: せっかくだから、ちょっと何か質問ありますか。

杉浦加奈(以下、杉浦): そうですね。いろいろな雑誌がありますけど、スタンスの違いがあるから、読者がそのリテラシーじゃないですけど、そういうものを理解していないと、選んだりということができないじゃないですか。なのでリテラシーの違いを記載したような雑誌が欲しいと思いました。

青木: この週刊誌はこういう趣旨で・・・。

杉浦: はい、それすごい欲しいなと思いました。

青木: それがね、この『噂の眞相』だったんですよ。『噂の眞相』の毎号・・・。

杉浦: 「週刊誌記者座談会」と、こういう形。

青木: そう。「週刊誌記者座談会」というのがあって、これは岡留さんは最後まで、実際にこの座談会が開かれているという風に僕には言い張っていたんだけど、実は全部あれ川端さんが書いてたんでしょう?

杉浦: ちょっと『噂の眞相』を見たい。

川端幹人(以下、川端): いやいや、アンカーは僕がやっていましたけど。

青木: これこれ、これですね。

杉浦: これなんですね。

川端: 「個別に」開いていましたよ。

青木: すごく面白かったんですね。これを読むと、毎月1回読むと、だいたいその月の週刊誌がどんな風なことで動いていて、売上が伸びたとか落ちたとか、この週刊誌はこんなスクープをやったけど、実は裏側がこんなことだということをね。

杉浦: 今そういうものはないですよね。

山口: 本当ね、僕が編集長をやっている時にこれがなくて本当に良かったですよ。どうも何とかの編集長は最近どこに出没してるみたいなのとか、そういうのがいっぱい書いてありますからね。

青木: だって僕はこれ本当に仁義ないなと思ったけど、週刊誌の編集長の女性関係とか写真を撮ったりとかして、載っけてましたものね。

川端: それは普通。

青木: 自分たちがやっているんだから、やられて当然だろうというのが「『噂の眞相』イズム」だったんだろうけど、これはすごいなと。

川端: しかも山口さんのこととかもね、書いてたもんね。

山口: 書いてたっけ。

川端: うん、ねえ。

山口: ああ、書いてたね。

青木: 何書いてたんですか?

川端: いや、左遷された時とかさ。

山口: そうそうそう。

青木: だからこういう雑誌があったんですよ。今確かに、杉浦さん仰る通り、あまりそういうのはないんですよね。だからその辺川端さんとか、ネットとかでね・・・。

川端: はははは。

青木: 「週刊誌記者座談会」みたいなことをね。ちょっとやったらいい。

山口: これ面白いですよね、だけどね。

青木: これ本当に面白い。ただどこもたぶん『噂の眞相』の企画はみんなこの連載はすごく面白かったんですよ。例えば、佐高信さんの連載なんかも面白かったし、それから筒井康隆さんの連載なんかもあったんだけど、これはみんなどこかが引き取ったんですよね。例えば佐高さんの連載は『創』という雑誌でしたよね。『週朝』に行ったのも何かありましたよね、なかったっけ? 『噂の眞相』から。

山口: ありましたよね、何かね。

川端: 何かあったっけな。

青木: 「中吊り倶楽部」というのは、だって事実上その「週刊誌記者座談会」の・・・。

川端: ちょっと変形版みたいですね。

山口: 変形版みたいですね。

青木: でも率直なところ、こんなに自由にはもちろん書けなかったんでしょう。

杉浦: 今はもうそういうものが書けない時代になっているということですか。

川端: いや。

青木: いや。

杉浦: そうでもない?

川端: そんなことはないと思います。むしろ「一行情報」は今の時代は無理だと思いますけどね。

青木: いや要するに、やっぱりこの・・・。

山口: それは週刊誌の中に「週刊誌匿名記者座談会」は無理です・・・自分のところの悪口も書かなきゃいけないから。

青木: でもそれをやろうとしてたわけでしょう。

山口: ちょっとはやっていたよね。

青木: いや、だからやっぱりこの『噂の眞相』という雑誌が本当すごかったんだけれども。でもそのなくなった雑誌のことをいつまでも悲しんでいてはしょうがないので、だから確かに杉浦さんの言う通り、雑誌がどんなポジションなのかというのを簡単にちょっといくつか雑誌があるんで、川端さん、解説してくださいよ。

杉浦: 一言解説で。

青木: 例えば向こうが・・・。

川端: 何かとっかかりがあるとしゃべれるけど、どういうポジションて一言に言われても・・・。

青木: でもだけど・・・。

山口: だからいや、大きく分けると新聞社系と出版社系というのがあって。新聞社系は残念ながらもう生き残りがこの2つ、いわゆるB5版ザラ紙週刊誌の類で言うと、結局生き残りがこの2つだけになってしまって。

青木: 『週刊朝日』と『サンデー毎日』ですね。

山口: いわゆる出版社系で言うと、『文春』『新潮』系と『ポスト』『現代』系に分かれるかなという感じで。『ポスト』『現代』はどっちかというと、サラリーマンをターゲットで、『文春』『新潮』はもうちょっと女性にもウイングを広げていて。見て分かるけれども表紙が『ポスト』や『現代』は表紙にばーっとこう・・・。

青木: 女性がね。

川端: 特集がありますけれども、『文春』や『新潮』はこういう落ち着いた表紙でやっていて。(読者の)年齢層も高くて、僕、前に調べたことがあるんですけど、『文春』『新潮』『週刊朝日』『サンデー毎日』が1つの市場を食い合っているというような感じになっていて、『現代』『ポスト』はそれより若干低めの年齢で、もう少し男性に寄っているという感じかな。

杉浦: 女性向けの週刊誌とかの特徴というのはあるんですか。

川端: 例えば・・・。

山口: 『AERA』が一時期、今もそうですけども 女性向けの特集記事、例えば「働く女性はこうしなさい」みたいな記事が沢山載っていたので、女性の読者は比較的多くなっているというのはあるかもしれないですね。

青木: あと『文春』なんかは女性の読者が結構多くて、僕『文春』の人に聞いたことがあるんだけど、あれは読者が4割近く女性じゃないかな。

杉浦: 多いんですね。

山口: そうです。そういう意味で言うと『週刊朝日』も6:4で4が女性。

青木: 女性でしょう。だから基本的に『ポスト』とか『現代』とか『FRIDAY』にはヌードがあったりとかするんで、なかなか女性が手に取りにくい。男性寄りに振った。例えばエッチな漫画があったりとか、それからポルノ小説があったりとか、どっちかというと男性サラリーマン向けに振っていて、『文春』なんかは女性が本当に読むというか、女性の読者がすごく多い。だから逆に言うと売上なんかはちょっと安定していますよね。

山口: そうですね。

青木: というような特徴はあるし、だからさっき言った、新聞社系だとやれることというのは、やっぱり新聞社系だから、どっちかと言うと、例えば芸能だったりとか、そんなに芸能プロダクションとかとは関わりがないので、芸能系の問題点なんかは比較的やりやすい。

 逆に『現代』『ポスト』なんていうのは大手出版社なので、芸能系なんかはできないけれども、でもその代わりまたやれることというのは、沢山いろいろあるしということですよね。だから検察なんていうのは、むしろ『週朝』で一生懸命山口さんが頑張ってやられたけれども、むしろ本来であれば『現代』とか『ポスト』のほうがやりやすいと言えばよっぽどやりやすいという。

山口: 出版社系よりはまぁ。

青木: やりやすいですよね。

■週刊誌のなかでも「ひと際異彩を放つ」、『週刊新潮』

川端氏「新宿の公園で警視庁広報課と『週刊新潮』編集部が草野球をやっている」

川端: あと『週刊新潮』というのは、この中でちょっとひと際異彩を放っていて、非常に権力側のスタンス・情報に依拠した、いわゆる記者クラブとは別な意味でそういう記事が多いということですね。新宿区の戸山公園というところに野球場があるんですけど、そこに行くとたまに警視庁の広報課と『週刊新潮』編集部が一緒に草野球をやっているんですというぐらい。

山口: 知ってる、知ってる。

川端: そうそう、警察と慣れてるしという。

山口: 公園ね。

青木: ただ別に『新潮』の肩を持つわけじゃないんだけど、『新潮』なんていうのは例えば学会批判とかね。

山口: ええ、そうですね。

青木: 『週刊新潮』がやっているし。あと意外と皇室ものはある意味タブーなんですよね。皇室ものというのはちょっと突っ込んだ報道をすると、いろいろと業界の人が来たりするので、なかなかやれないんだけれど。『週刊新潮』の皇室ものというのは、ちょっと斜めから見ていて読みようによってはものすごく皮肉な原稿が載っていたりとかして。やっぱり皇室ものなんかは『週刊新潮』が頑張っている感じがします。

山口: 今青木さんが言ったので気が付いたけど、新聞もそうかもしれないけど、やっぱり結構個人だよね。だから『新潮』の創価学会はやっぱり門脇(門脇護副部長)さんだったわけだし「何とかの何とかはやっぱり誰々がいたから」という感じなんで。

川端: そうですね。だから『新潮』がやっぱり代々皇室に強いのも、やっぱり斎藤十一という人が皇室に対して、ちょっと皮肉的なスタンスを持っていて。『週刊新潮』というものを作った陰の天皇と言われている人なんですけど。もともとは太宰治の担当編集者だった、すごい伝説の文芸編集者でもあるんですけど、『週刊新潮』というのは初めて出版社が・・・1950年代はそれまで『週刊朝日』とか『サンデー毎日』とか、新聞社系の週刊誌しかなかったんですね。それで1950年代の終わりぐらいに『週刊新潮』が初めて出版社系で週刊誌をつくった。

青木: だから何て言うのか、いろいろあるけれども、確かに山口さんの仰る通り個人っていうのは大きいんですよね。

山口: それがだから反映されやすいんだと思います。紙面というか雑誌の雰囲気にね。

青木: もっと言うと、新聞・テレビもそうなんだけど、結局これを言っちゃうと、議論が飛んじゃうんだけど、やっぱり基本的には個人に帰結するんですよね。だって雑誌って例えば山口さんが編集長じゃなかったら検察批判というのは、おそらく週朝には出なかっただろうしね。あるいは『噂の眞相』というのは、ある意味すごい箱だったけれども、これも岡留さんと川端さんという個人プレーみたいなところもあったわけだし、本当にいろいろな雑誌でいろいろなことができるといっても・・・ただ1個言えるのは、個人がやろうと思ったときにやれる幅あるいは自由度というのが、新聞・テレビよりも雑誌の方がおそらく大きいということなんですよね。

山口: 大きいでしょうね。本当にさっきの話に戻っちゃいますけど、圧力がかかっていないかと散々いろいろな人に会うたび言われるんですけど、本当に具体的に「この記事やめろ」とか変な話「クビにするぞ」とか、そういうのは本当になかったです、編集長をやっているあいだ。

青木: いま神林(広恵)さんて出たんですよ。どんな方だか分からない人がいると思うんですけど、川端さんはひどいんですよね・・・言ってもいいでしょう? 別に。

川端: 何ですかね。

青木: 要するに、さっき言ったこの『噂の眞相』の検察批判をしていた時に、さっきの宗像さんという人が宗像特捜部長だったんですけど「『噂の眞相』を許せん」と。「俺の悪口ばかり書きやがって」と言って、雑誌では初めて名誉毀損で強制捜査に乗り出したわけですよ。それで『噂の眞相』の編集長と、それからいろいろな経緯があって、もう1人デスクで神林広恵さん、いま女性でフリーライターで活躍されているんですけど、この2人が起訴されちゃったんですね。要するに刑事被告人になって、あれは有罪になったんですね。

山口: そうです。

青木: 前科者になっちゃったんだけど。実はその警察批判をずっと書いていたのは川端さんなのに。

山口: 本当はこの人が捕まらなければ。

青木: そうそう、この人が捕まらなくちゃいけない。だから、さっき神林さんというのが出てきて、それが分からないとかわいそうだから。

山口: 当時ちょうどオウム事件の頃で、『噂の眞相』の上祐(史浩)と言われていたんです。

青木: 何ですか、それ。

山口: だから麻原(彰晃オウム真理教元代表)と石井(久子元オウム真理教幹部)が捕まったのに、上祐だけが捕まっていないということ。

杉浦: ここでひとつ質問が来ています。福岡の男性からの質問です。「なぜ紙媒体にこだわるのですか。電波やネットという媒体があるにも関わらず、いまだに雑誌という紙の媒体にこだわるのはなぜでしょうか。記者が今日取材したことを話すだけの動画では駄目なのですか」という内容です。

青木: これはどうしたらいいですかね。まず山口さんから。

山口: だからそういう、もちろん基本的には、これは釈迦に説法ですけれども。やっぱりそのコンテンツをつくるのが僕たちの仕事なんで、メディアは何でもいいと思っているんで、いろいろな形で広げていけると思います。

 たださっき言ったように『週刊朝日』の場合は、取りあえずの目の前のお客さんというのがある程度の年齢がいっている人たちで、その人たちがこの紙をまだ求めているので、これは単純に紙をやめて次のメディアに行くということにはならないと思いますけれども。紙を出しながら、具体的に言うと、例えばUSTREAMをやったりですね、ホームページを立ち上げたりとかですね。『ポスト』とか『ポストセブン』は、もう『ポストセブン』だけど本当にニュースサイトとかをやっていますんで、そういう形でいろいろな広がりというのは今後出てくると思います。

青木: 川端さん、どうですか。

川端: 僕、ちょっと今コメントにも出ていますけど、最大のネックは収入のモデルが確立されていないということだと思うんですね。

山口: ああ、そうですね。

青木: まさにそうですね。

川端: 結局のところ、やっぱりフリーモデルなんですよ、ネットって。電子書籍って、今は出版界も地獄に落ちてきた最後のクモの糸みたいにすがっていますけど、僕はこれも書籍は可能性があると思いますけど、雑誌的にはなかなか厳しいんじゃないかなと思っていて。やっぱりこれだけウェブ上で無料の情報が氾濫している中で、どうやって同じウェブで勝負をして、お金を稼ぐのかというところがやっぱり問題になってきて、やっぱりたぶん皆さんが思っているよりも、実はジャーナリズムというのはお金がかかるんですよね。

 例えば、二次情報をこうやって勝手にしゃべるとか、何かについて論評をしているだけだったら、こういうものでもいいと思うんですけど。北海道に行って2週間ずっと粘って何かを追いかけていくだけで、そのロジスティクス(生産にいたるまで)のお金はものすごく膨大なものになるわけじゃないですか。それをやっぱり維持して、しかも空振りに終わることもあるわけで、それでもお金は払わなければいけないわけですよね。無駄打ちも含めて、それを支える。要するに、タニマチというのは今まで出版社だったわけですけれども、それがあるのかということですよね。アメリカとかだと、今そういうサイトがあって、例えばこういうことを取材をしたいといって寄付を集めて、フリージャーナリストがやるという、ウェブ上のサービスみたいなのもあるように聞いているんですけど。

 日本でも岩上(安身)さんとかがやっていらっしゃるじゃないですか。でも実際ね、でもそんななかなか日本でお金が寄付では集まらないという現状があって。そこがどうしたらいいのかが・・・。

青木: たぶんそこが一番深刻な問題で、これは実はまじめにやればやるほど金がかかるんですよね。

山口: そうですね。

青木: 特に例えば何でもいいですけど、じゃあ『噂の眞相』がやった、この則定(前東京高検検事長)氏の女性スキャンダルというのは告発者が女性がいたわけでしょう。でもその証言と取るためには、彼女は大阪に行って、大阪のホテルで泊まったと言われれば、当然大阪に行って取材しなくちゃいけないんで、女性を告発者の安全を守ろうと思ったら、ホテルを取ってある程度きちんと管理というか、フォローしてあげなくちゃいけなかったりとか、関係の取材なんてことをやっていたらね。下手すると1ヶ月、2ヶ月すごいお金がかかるわけじゃないですか。

 それをぺイをするのは、例えば『噂の眞相』という雑誌でそれを取材した川端さんに、あるいは山口さんに来てもらってしゃべってもらうというのはある意味いいんだけれども、その取材をする支えるという、その金銭的な面というのは、残念ながらたぶんネットでは今のところ不可能でしょう。・・・でもないですか。

山口: いえ、そうですよ。

青木: 不可能でしょう。

山口: たぶん不可能だ。それとさっきファクトが少なくなってきたという話をしましたけども、やっぱりそれは取材力が低下しているということは本当に財力がなくなっていることと二アリーイコールなところがあって、今仰ったような関係ですよね。それは本当に深刻かなと思いますよね。

川端: 思いますよね。

青木: そうですよね。だから・・・

山口: これから例えば世に出てこようというフリーの人に、昔だったら、つかみ金と言っちゃ失礼ですけども「これだけ取材費を渡すから取材してきなさい」みたいなことができたんですけれども。今はどんどんできなくなっているんで、どれぐらい成果が上がるだろうかということを精査した上で、いくらかかるんだなと。チケットは格安で行けよとか泊まるところは一番安いところへ泊まれよみたいな取材しかできなくなっているというのは現実としてありますよね。

青木: これ最後のトークテーマはもう出さなくていいのかな。

杉浦: はい、まだ質問が沢山で・・・。

青木: では今のはそういう話です。はい、どうぞ。

■『週刊朝日』で新聞・テレビ批判はできるか

「『こういう記事は掲載できない』というのは幻想」と山口元編集長

杉浦: 次の質問なんですけど、山口さんに質問です。やはり『週刊朝日』では新聞・テレビ批判はできないのでしょうか。

山口: だからそれもさっき言いましたけれども、僕が編集長になったときにスタッフに言ったのは、やっぱりある意味、そういう意味で言うとスキャンダリズムは週刊誌の真骨頂なので、大事にしたいという話をして。

 例えば、そういうことを言うと、当時の『週刊朝日』のスタッフが「でも『週刊文春』みたいな記事は書けませんよね」ということをよく言われたんですよ。だから「具体的に『週刊文春』のどの記事が書けないんだ。うちの右トップにできない記事はどれだ?」という話をしたんですけれども、基本的にないわけですよ。そんなことはみんなが持っている幻想だと。ただ1点だけ、「朝日新聞の悪口は書けないぞ」と。それは言いましたけど。

青木: それはいいと思うんです。さっき言った通り、検察批判でヤバくなっている山口さんに朝日新聞批判までさせたら絶対クビですよ、そんな。だから・・・。

杉浦: 間違いないですね。

青木: そこまで求めちゃいけないんです。だから『週刊朝日』はさすがに朝日新聞批判はできないだろう。朝日新聞批判が読みたかったら、例えば・・・。

山口: 『文春』。

青木: まともな批判が読みたかったら『文春』を読めばいいし、そうじゃない批判が見たかったら『正論』とか読めばいいし。

杉浦: ああ、さっきのあれですね。

山口: だからニーズごとに使い分けて。

青木: そうそうニーズごとに使い分けたほうがいい。まあなかなか難しいですよね。『週刊朝日』が朝日新聞批判するというのは難しいし、それはそこまで求めちゃったらちょっとかわいそうだなというところがあります。

杉浦: もう1つ質問があるんですけれど、山梨県の男性からの質問です。「週刊誌では、政治家や官僚・政財界のいわゆる公人について、愛人や熱愛報道を繰り広げています。これはプライベートなこととも言えますが、どうして報道的な意義があると言えるのでしょうか」ということなんですけれども。

川端: それは、じゃあ僕が。

青木: どうぞ、どうぞ。

川端: 僕は基本的にはすごくこの部分においては過激な意見を持っていて、「公人にはプライバシーはない」という風に思っていて、それは芸能人も含まれるんですけど、僕自身も含まれると思うんですけども。

 ネット、ウェブ上ももちろん含めて、メディアで発言している人間にプライバシーはない。それは要するに、例えばメディア上で、いわゆるフェミニズム的な発言をしていながら、実生活で例えば女性に対して横暴であるとかいうのは、明らかにそのメディア上の記号的な価値が、本当に正しいものなのかどうかというのをチェックする権利というのは我々にあると思うんです。

 そういう意味で言うと、それを暴くのがスキャンダルだと思っています。そういう意味で言うと、僕すごくネット上のそういう風潮がちょっと懐疑的なのは、例えばツイッターとかそういう系だと暴いた側が叩かれるという傾向があるじゃないですか。例えば最近だと、ロンブーの淳の件で、要するに淳がかつて事故前に原発擁護派だったということを、淳から直接ダイレクトメッセージをもらった人間が公開したら、とにかく炎上してしまったと。それがやっぱりすごく謎な感じがあって、何かツイッターそのものが記者クラブ化しているんじゃないのという感じがして、小さな世間がいっぱいできてきてて、そこの中で作法があってその作法を守らないと・・・。

青木: 炎上しちゃう。

川端: 炎上してしまうと。だから意外と週刊誌のほうが自由で、意外と、例えばイリーガルギリギリな方法で何かを暴いて、さらすということをしても批判はされないわけです。怖いのは名誉毀損裁判だけですよね。ところがツイッターとかFacebookとか何でもいいんですけど、ウェブ上である程度責任主体のあるものというのになると、みんなものすごく過剰に防衛的になっているんではないかという気がするんですね。

青木: (それは)川端さんの今の話で、僕は川端さんとちょっと違う意見を持っているんだけど、川端さんに反論できないようなね。川端さんが『噂の眞相』の副編集長時代だった時に、ある若手のライターというか社員に張り込みをしろと言って、渋谷の道玄坂を張り込みをしていた。カメラを持って。そうしたら張り込みさせたことを川端さんが忘れて、ホテルだか飲み屋だかから、彼女と一緒に出てきたという。それをずーっとビデオに撮っていたんですよ、編集部員が。その編集部員は「ちきしょー、ちきしょー」と言いながらビデオを撮っていた。そのビデオを何と『噂の眞相』は、自分のところのネットに載っけているので。

杉浦: 素晴らしいですね。

青木: そうそう、だからそれぐらいのことをやっている人なので、確かに「公人のプライバシー」はないというのは納得できないところもないんですけど。山口さんはいかがですか。

山口: 僕はもう川端さんと近くて、特に政治家の場合はやっぱり選挙には出られるわけで、やっぱり投票行動の判断材料の1つだと思うんですよ。ある種の人格みたいな部分じゃないですか。本当にこの人に別に愛人がいようがそういう指摘されるようなことがあろうが、その人の政策が素晴らしいから投票するという人がいてもいいし、でもそういう人は嫌だという人ももちろん世の中には一定数いるわけで、それはやっぱり一つの大事な情報だという風に思いますけど。

青木: たまたまそういう質問が出ちゃったんで、ちょっと自分で宣伝したいんですけど。今月の『月刊文藝春秋』に僕ちょっと記事を書いたんですけどね。その中西光子という、昔、宇野宗佑(元首相)のスキャンダルを暴いた女性の、今はもう60何歳ぐらいですか。インタビューしたりとかして記事を書いたんですけれど。僕は今だにちょっと答えが出ないところがあるわけですよ。

 すなわち、例えばこの宇野宗佑の記事に関しては、鳥越(俊太郎)さんなんかに聞くと、要するにこれは明らかに買春だった、だからこれは違法行為じゃないかということで書いたと言うんです。例えば福島みずほ(社民党党首)さんなんかにも話を聞いたんだけど、要するに公的な権力を使ったりとか、強姦だったりとか、それからセクハラだったりパワハラとかいうことがあるんだったら報じる意味はあるけれども、単なる不倫とか、あるいは山拓(山崎拓)の場合なんかだと、あれは性癖の問題でしょう、「変態セックス」というね。あれはいろいろ公的なことを使ったのかもしれないんだけど、単なる不倫だったりとか、単なる男女関係であれば、報じる必要はないのではないかという議論も、僕は一理あるなと個人的にはちょっと思います。そのことについて、僕ちょっと今月『月刊文春』に書くんですけどね。なかなか難しいところだなという気はしますけれども。

山口: 今何か「不倫以外のことを暴けよ」という風に(コメントがあった)、確かにそうなんだよね。でも何を暴くべきことで、何が暴くべきでないものなのかという判断は誰がするのかなというのが僕はあるような気がしていて。

 なので、何が言いたいかというと、やっぱり基本、僕は記者が知ったことというのはどんどん世間に伝えて、それを世間に評価され、判断されるというスタンスなんですよ。だからまあそれは別に下半身の話だろうと、政策的な話だろうと、あるいは業者と癒着してお金を取っているという話だろうと、ある種やっぱり等価、等しくやっぱり読者に見せて、その評価は世間に委ねるという方ほうがいいのではないかなとちょっと思っていますけどね。

青木: さすが過激ですね。『噂の眞相』の編集長だった岡留さんが言ってましたね。「聞いた話は書く。書けない話は飲み屋でしゃべる」って言って。

杉浦: なるほど。

青木: 失礼しました。これは冗談ですけど。

■「襲撃された直後も脂汗をかきながら記事を書いた」

川端氏が襲撃された事件について語る青木氏

杉浦: 次の質問もあるんですけれども、東京都の女性からです。「以前りそな事件で新聞記者が殺されてしまったとネットの記事で見たのですが、タブーに切り込んで危ない目に遭ったことはありますか」、という質問なんですけれども。

山口: それ(そういう事件があったということ)はちょっと知らない。

青木: それは知らないけど、タブーに切り込んで危ないことがあったという意味で言ったら、それは川端さんですよ。川端さんは『噂の眞相』の副編集長時代に、別に具体名を言ってもいいのかな、あんまり言わないほうがいいか。要するに右翼団体が編集部に来て、あれは雅子さんの記事だったのかな。皇室の記事で。

川端: そうですね。

青木: 皇室の記事に関して抗議に来た後に、編集部内で大暴れして、あの時に怪我したんですよね。だから実際にこの人は怪我をするような目にも遭っているわけですね。どうですか、それについて。

川端: そうですね。でも恥ずかしい話、その事件があるまで自分がまさかそういう目に遭うだろうとは思ってなかたったんですよね。やっぱり自分は大丈夫だろうと思いながら、これだけ危ない記事を書いているという。やっぱりその事件があったあとに、すごく恥ずかしい話なんですけどフラッシュバックがあって。次の月でしたか、運が悪いことに皇太后が亡くなったんですよ。それで書かなきゃいけないじゃないですか。やっぱり『噂の眞相』としては襲撃事件は当然知れ渡っているので「筆を曲げた」と言われたくない。でも何か・・・でも担当は僕なんで。

青木: 皇室は全部川端さんですね。

川端: うん、すごい脂汗かきながら書いた覚えがありますけど。今度書いた本には、そういうことも含めて書いたんですけど、一応それは何かタブーに関する本で、タブーの要因を探るという。「暴力」と「権力」と「経済」という3つに分けて、それがタブーを生み出す・・・。

青木: ああ言ったほうがいい。(本が出るのは)筑摩書房ですよね。

川端: そうですね、はい。

青木: 山口さんはいかがですか、身の危険とか感じたこととかありますか。

山口: 僕自身はそんなに具体的な暴力とかはないですけれども、せいぜいちょっと脅迫めいた手紙とかFAXが来るとかその程度です、基本的には。ただ日本では襲撃されたというのは、『FRIADAY』の襲撃事件と川端さんの件と。

青木: あと溝口(敦)さん。

山口: 溝口さんが切られたという件があって、それぐらいですよね。

川端: 『FRIDAY』は何度かありますよね。山口組にも確かあったと。

青木: 言論に対するということで言ったら、やっぱり朝日新聞の小尻さんが撃たれた阪神支局事件というのがあるし。あとちょっと言論人じゃないけども伊丹(十三)監督がね。

山口: ああ、そうですね。

青木: やられたのもあるから。やっぱりどっちかというと、やくざだったりとか暴力の世界について、あるいは皇室ものなんていうのはあるかもしれないです。

山口: あとね、やっぱり宗教団体みたいなものをやっている時に、無言電話みたいなのが結構いっぱい来た時期もありました。でも僕自身、個人で言うとその程度ですよね。気持ち悪いけどそこまで怖くないというか。

青木: 僕は個人的に言うと、これは『噂の眞相』なんかにはちょっと書いたんですけど、公安警察とか公安調査庁の悪口を書いた時に、家の前にずっといましたけどね。別に身の危険は感じないけれども、僕のプライバシーはどうなるのかなみたいな感じのことは思ったことがあったけど。まあそれはそんなところです。

山口: あとよくあるのは、税務調査が入るってあるじゃないですか。

川端: ああ、ありますね。

青木: やめてください。変なこと言わないほうがいいですよ、それは。

杉浦: 雑誌ジャーナリズムの世界って奥が深いですね。

川端: いや、でもありますよね。出版社に税務調査が入る。

青木: そうそうだから、国税(庁)の悪口を書くと、だいたい入るんですよ。まあそれはそうでしょう。

川端: だから、基本的にいわゆる暴力とか権力を使った圧力よりも、だんだん経済を使った圧力にシフトしてきているというのは、やっぱりすごくある。

青木: あるでしょうね。

川端: しかもそのほうが。

青木: 効くからね。

川端: 効くんですよね。

青木: そうです、はい。

杉浦: そんなところで、テーマ5つ目です。「生き残れるのか? 雑誌ジャーナリズム」。多くの紙媒体が売上の低迷に悩んでいるわけですけれども、これから雑誌はどうなっていくんでしょうか。何か読者の高年齢化という問題もありますよね。

青木: だから、さっき山口さんが仰った通り、『週刊朝日』でもう団塊の世代でしょう。

山口: はい。

青木: それから、さっき言った『文藝春秋』なんていうのは、たぶんもっと上でしょう。『月刊文藝春秋』はもっと上でしょうし。週刊誌、大抵おそらくもう団塊の世代ですよね、ほとんど。例えば、『SPA!』という雑誌がありますね。ここにあるか。『SPA!』という雑誌があって、これなんかは最初はおそらく20代から30代くらいをターゲットにして作っていた雑誌なんだけど、今はおそらく40代ぐらいになっているようなことをちょっと聞いたことがあるんですけど、ちょっと詳しくはわからないんですけど、だいぶ上がってきちゃっていて。

 やっぱり雑誌はこうやって衰退していく一方なのか、僕は今日それだけは何度も言いたいんだけど、ぜひ雑誌ジャーナリズムというのはすごく大切で、誰かさっき質問でも来てましたけど、それがネットに置き換わっていくんだったらそれは全然構わないんだけれども、置き換わらない現状の中で、やっぱりこのまま雑誌ジャーナリズム、雑誌がどんどん弱っていくと、やっぱり日本のメディア、情報、ジャーナリズムというのが本当にヤバいんじゃないかなと思うんだけれども。山口さんはどうですか。

山口: それはさっき川端さんが仰った通りで、ひとつはだから本当に雑誌を読んでほしい。それはあえて言うと、まさに日本の言論を守るために雑誌を読んでほしいということをひとつは言いたいんですけれども。付け加えて言うと、僕はさっき言ったみたいに、メディアが変わっていってもいいと思っているんで、あえて言うと情報に対してお金を払うという癖というか、さっき青木さんも説明していただいたように情報にはコストがかかっているんだということをぜひ理解してほしいなと思うんですね。

 前にマスコミに就職が決まった学生さんを集めて、ざっくばらんにその現場の話をしてくれというので話をした時に、こういう風に言われたんですね。「新聞社のウェブサイトというのは、ユーザーフレンドリーじゃありませんね。どういうことですか」。例えばうちで言うと「asahi.com」なんかがあるんですけども、「asahi.com」の記事はある一定時間アップされているんですけども、時間が経つと消えてしまう、検索機能が付いてないという話をされたんで、「検索できるデータベースは別途有料で出しているんです」という話をしたら、「それは金を取るんですか」と聞いてきて、「君はどこに就職をするんだ」と聞いたら新聞社なんですよ。「あなたの給料は誰がどういう風にして払っているんだ。あるいはその新聞記者の取材をするための電車代から宿泊費から何から誰がどうやって払っているんだということをちょっと考えてください」という話をして、それでもやっぱりキョトンとされてしまうんですよね。

 だけどやっぱり、こういう記事を作るということには、本当に当たり前なんですけれどもコストがかかっていて、そのコストを皆で負担し合っているから多様な言論というものがそのまま担保・保障されているということをご理解くださいということを繰り返し言っていくしかないかなと思うんですね。

青木: 今コメントで「朝日、給料高い」と出たんです。確かに高いんです。おそらくマスコミがこれまで新聞も出版社もそうですよね、全般的に。僕みたいなフリーランスはご存知の通り、給料とか収入というのはそんなに高くないんだけれども、ただ社員の編集者だったり新聞社の社員というのはものすごく高かったので、これが高すぎたからだんだんもうちょっと下がって行くのだろうと、これは間違いないんだけれども。

 ただ山口さんが今仰った通りきちんとした取材を、特に権力の悪であるとか、あるいは偉い人の問題点であるとか、政財界の癒着であるとかという厳しい取材をすればするほど、取材にコストと時間と金がかかる。プラス場合によっては、さっきお2人も仰った通り、身体的なものは仮に無かったとしても経済的にいろいろ圧力を掛けられたりとかして非常に辛くなるということを考えると、山口さんの仰る通り、特にいいと思った情報には相当な、あるいは皆さんが相当だと思っている以上に金がかかっているんだということは、ちょっと分かってほしいというのはあります。

山口: あと難しいのは、今ちょっと(コメントの)書き込みがあったんですけれども、やっぱりコストに見合っている情報だと思わない限りお金を出さないよという風に言われてしまうと。つまり何というのか大事な情報だけどあまりニーズが無い情報とか、そういうものがこれからどうなっていくのかというのはちょっと心配になりますよね。

青木: いや。それはまさに仰る通りで、今まで新聞だったり雑誌だったりとかはパッケージで売っていたから、だから9割くらいはお金のこれで買ってもらって、でも実は読者は少ないけれども、これ絶対に書かなければいけないやつだったりとか。

山口: 分かります。分かります。

青木: 地味だけれども大切な情報というのをパッケージだから売れたけど、単体にしちゃったらとてもじゃないけどペイしませんよということが起きてしまうということですよね。だからその辺は確かに言えると思うんですよね。どうですか、この「雑誌ジャーナリズム」の未来というか。

川端: いや、僕は正直言って、たぶん大手出版社の雑誌に関しては、別にジャーナリズム系だけじゃなくても、ほぼ絶望的だろうと。もうこれは山口さんには悪いけど、良い悪いは抜きにしてもおそらくなくなってしまうんではないかと思うんです。それはやっぱりさっきもちょっと話が出たんですけど、決定的な問題は給料が高すぎるということなんですよ。

■雑誌でお金がかかるのは「大手マスコミの社員の給料」

「大手マスコミ社員は、給料を守ることが目的化してしまう」

川端: さっきその「お金がかかる」と言ったんですけど、実はもっとお金がかかっているのは大手マスコミの社員の給料なんですよ。何が絶望的かと言うと、給料を守るということが目的化してしまって、メディアを出すんじゃなくて、ほぼいろんな会社はね。今度は不採算部門のメディアを切っていって、要するにテナント商売とか昔国有地を安く払い下げてもらった土地に20階建てくらいの建物を建てて、どんどんテナントを入れていって・・・。

青木: TBSでしょう。

川端: TBSもそうですし、朝日(新聞社)も中之島でやっているじゃないですか。共同(通信社)もそうでしょ。

青木: 共同はあまりやっていないんじゃないかな、あそこは営利しちゃいけないから。

川端: そうそう。

山口: 共同はでも上をホテルで使ってるよね。

川端: 上ホテルじゃん。

青木: あれは別会社にしているんじゃないの?

山口・川端: だからダメ。

青木: それあまり詳しくない。

川端: それは、別会社を経営しているということではなくてテナント料をもらっているわけじゃない。そうやってそのお金を稼いでいかざるを得なくなってきて、どんどん不動産部門だけが強化されていくみたいな状況になっているんだと思うんです。ただ、逆にお金はかかるんだけど、一方でもしかするとすごく給料をタイトにして、ある程度ビジネスモデルとしてきちんと、例えば今だったら雑誌を作りながら、いわゆるYahoo!とかlivedoorとかにニュースを売るニュース配信料で稼ぐというビジネスモデルも出てきているし。これはちょっと批判的なんだけど、フリーにしても広告モデルでお金を稼ぐという方法もあるかもしれない。

 まあそういう形で、あるいはさっき言ったように、このあいだITの人のお話を聞いたら、今その「one thousand true fans」という概念がアメリカではあるらしくて、それは要するに1000人の本当のファンがいれば、いろんな表現活動ができるよという。例えば1人のジャーナリストが「one thousand true fans」をつかんで、そうすると年間1万円出してもらって年間1千万じゃないですか。その1千万でどこまでやれるかわからないですけど、そういうような形の小さなジャーナリズムみたいなものは、いろんな形で出てくると思いますけど。今のいわゆる巨大化したメディアのパッケージみたいなものは、もうちょっとたぶん、通用しなくなるんじゃないかなと。

山口: メルマガなんかはそうだよね。まさに少数なファンで。

杉浦: そうですよね。

青木: メルマガはもちろん大切なんだけれど、個人ではできない取材というのはあるでしょう。チーム取材、例えば『週朝』だって検察批判がなぜできたかと言えば、例えば山口さん1人でやっていたらできないんですよ。

山口: もちろんですよ。

青木: それは、社員もいてフリーの人も使ってというチーム取材というものを支えるというのは、これはなかなか・・・例えば、1人の評論家だったり1人の文筆家で「この人はいいんだ。支えよう」ということがあったとしても、そのチーム取材、もっと言えば『週朝』レベルでもできない取材というのがあるかもしれない。例えば、東日本大震災の取材、原発取材なんていうのは、もっと巨大なチームが必要になるかもしれない。そういうものをどんな風に支えるのかというのもあるんですけれど・・・。

川端: それ、難しいね。

青木: ちょっとそろそろ時間が過ぎたので、ただ結論的に言えば、将来的にどういうメディアが立ち上がってくるのか、あるいは少なくとも新聞・雑誌というのは、緩やかになのか急速になのか朽ちていってしまうという危機なんだけれども、ただ当面のやっぱり週刊誌ジャーナリズムというか雑誌ジャーナリズムというのは、すごい大切なのでぜひ買ってほしいというところが僕なんかはあるんですけれども。

山口: いや、まったくその通りで。今の段階でお願いベースで「とにかく支えてください」ということ、別にそれはどんな雑誌でもいいですから「雑誌に対してお金を払ってください」と言い続けるしかないかな。

青木: これ僕がやっちゃいますよ。本当はこれどっちかと言うと杉浦さんの分なんですけど、川端さんに最後。

杉浦: はい、川端さんに一言。今回の・・・。

青木: 最後の一言。

川端: この間、実は原発問題でツイッターをやっていた時に、あまりにも週刊誌記事が読まれていないことに衝撃を受けて、よく(ジャーナリストの)上杉隆って「僕は黒い池上彰だ」というじゃない。

 だから、だったらネット社会に「ちゃんと週刊誌でこんな面白い記事をやっているよ」みたいな(美術館などで中枢的な役割を果たす)キュレーターをやろうかなとふと思って。だから、「黒い佐々木俊尚」になろうかなと思ったんだけど。

青木: 確かにだから、これ(本を開きながら)「匿名座談会」みたいなのをここまで別にディープじゃなくてもいいけれども、今週こんな週刊誌にはこれが載っていてこの記事の背景は・・・みたいなことはやってもいいですよね。

川端: それは僕がやるかどうかはとりあえず置いておいて、そういうものはたぶん、あってもいいんじゃないかと思うんですよね。そこで1つの導入にするというか。

青木: そうですね。

杉浦: 山口さんはどのように、最後の一言を。

青木: 最後の締めの言葉をもう1回言えと言っています。

山口: とにかく衰退しつつある業界の希少動物と呼ばれていますので、特にこのB5版のザラ紙週刊誌については、本当にレッドブックと言うんでしたっけ?

川端: 絶滅ですね。

山口: 絶滅危惧種なので、ぜひ皆さんのお力をいただいて、1日も長く生き残りたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。それしか言えないですよね。

青木: どうも本当、お2人お忙しい中どうもありがとうございました。楽しかったです。

杉浦: ありがとうございました。青木さんはどのように。

青木: 僕もですか。

杉浦: ぜひ、ぜひ。

青木: 僕も本当は思いますよ。僕は新聞出身なんだけど、雑誌が無くなると本当に平和になっちゃうんですよね。確かにエロもあればいい加減な記事もあるし、それから本当じゃないんじゃないの? という記事も沢山あるんだけれども。でもやっぱりその雑誌の中に雑誌が無かったら表に出なかった情報って、たぶんこの何十年間か探してみたら、世の中を動かしたネタの相当部分を雑誌が出しているというのは間違いなくて。

 それからもう1つ言うと、これだけ付け加えたいんだけど、スクープもそうなんですけど、いわゆるノンフィクションの作品という発表媒体、月刊誌ほとんど無くなっちゃっているんです。昔は月刊誌が沢山あって、いろいろ「ノンフィクション」という一種の文芸の分野と言ってもいいんだけど、なかなか優れた長編の本になる様なノンフィクションというのが沢山あったんだけれども、月刊誌が次々潰れて週刊誌も非常に厳しくなって、そういう取材って、さらにお金がかかるわけですよね。それもなかなかできなくなっているというところで、ものすごい雑誌がこれ以上弱ると、本当に僕は日本の活字文化というかメディア文化というのが本当に衰退するので、ぜひ・・・。

杉浦: 雑誌、頑張れですね。

青木: 雑誌は頑張ってほしくて、ぜひ買ってくださいということですね。

杉浦: その取り扱う情報によって、読者そして編集者がメディアを選択していくというのもこれからあるかもしれませんね。

青木: 大切です。

山口: そうですね。

杉浦: というわけで本日は「青木理のニュース現場主義」第2回目「雑誌ジャーナリズムのチカラ」をお送りしました。ゲストの皆さん、ありがとうございました。

青木: どうもありがとうございました。

杉浦: そして最後までご覧いただいたユーザーの皆さん、どうもありがとうございました。また次回も観てくださいね。それでは、さようなら。

(了)

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