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スティーブ・ジョブズが、生け花を「犬の糞」といった理由

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月明飛錫

今回は逍花さんのブログ『月明飛錫』からご寄稿いただきました。

スティーブ・ジョブズが、生け花を「犬の糞」といった理由

アップルユーザーではない私は、先日亡くなったスティーブ・ジョブズについて、特に個人的な思い出はない。彼の作った製品は、世の中を変えたと思うし、彼のいくつかのスピーチが素晴らしいことは間違いないのだけれど、それらについてはすでに十分語られているので、いまさら私が付け足すことはないと思う。

今日私が書こうと思うのは、ジョブズが自分の開発した製品『NeXT』の発表会に用意されていた生け花を「犬の糞」と言ったということについてだ。

以下、『ほぼ日刊イトイ新聞』「マイクロソフトの古川会長がやってきた。」より引用
http://www.1101.com/microsoft/10.html

日本では、NeXTの発表会を、キヤノン販売がぜんぶおぜん立てして、NKホールで、素晴らしいステージをつくって、人間国宝級の人が素晴らしいお花をアレンジして。
ところがリハーサルにジョブスが来て、壇上に置いてある花を見て、いきなり通訳を呼んだ。
この犬の糞を積み重ねたような醜悪なものをすぐどけろ。
 このことを、正しく通訳して、帰ってもらえ

……帰ってもらえ、はまだしも、犬の糞、を!?
しょうがないから伝えたといいますけどね。
その人はもう、青筋立てて帰っちゃったという。
自分自身のライフスタイルなり、信条と合わないものに対する拒絶反応。それをどういう形で伝えるかというとき、ものすごくストレートなやりかたをする人なんですよね。

このエピソードについて、何であれ自分の好みではないものを拒絶するのがジョブズらしいと評価する人もいれば、日本文化を蔑視していると不快に思っている人もいるようだ。

私の趣味は生け花だけれど、実はこのジョブズの発言は理解できる。

まず、生け花を評価するときには、絵やその他の創作物と同様に、上手い下手の他に好みという主観が入るのは避けられない。その分野に詳しい人であれば、技術や歴史の中での位置付けなどで評価する部分が多くなるけれど、そうでなければ、そうしたコンテクストを取り払って、好きか嫌いかが重要な要素を占めるのは当然だ。

次に、生け花は自己表現の手段となることがあるが、この場合は製品発表会に飾る花だから、その空間や目的に応じた作品を作るべきだ。

ジョブズは、シンプルなプレゼンを好む人で、しかもプレゼンにあたっては入念な準備をする人だから、自分よりも目立つようなものがステージ上にあることを嫌ったのではないかと思う。

Macworld Conference & Expoでのジョブズ

Macworld Conference & Expoでのジョブズ『Wikipedia』より
http://ja.wikipedia.org/wiki/スティーブ・ジョブズ

本当は、ジョブズが「犬の糞」とした生け花がどんな作品だったかわかればいいのだけれど、写真を探しても残念ながら見当たらなかった。

従って、以下に書くことは私の推測である。

生け花は植物を使う創作活動で、残念なことに花の大きさには限界がある。大きいものでも大輪のユリの花など、20cm程度のものでしかない。

すぐ近くで見る場合は、バラやユリは1輪でも存在感のある花なのだけれど、数十人、あるいは数百人入るような場所のステージに飾って、何メートルも離れると、小さくてよく見えない。

従って、大きな場所に飾る生け花は、遠くからでも見栄えがするように花をたくさん挿した作品になりがちで、そうした場合に、生け花本来の精神から離れて、なんというかごちゃごちゃした醜悪なものが出来上がることがたまにある(あくまで、たまにです!)。

しかも、この『NeXT』の発表会は90年前後に行われたらしい。当時の日本企業はバブルに酔いしれ、とにかく派手なものを好んでいた。

通常、企業から依頼されて生け花を制作する場合には、先方の担当者と多少は打ち合わせをする。もし、発表会をセッティングした企業から、「晴れの舞台ですから、華やかな作品をお願いします」と言われれば、その意図に合った作品を作ることになる(このケースがどうだったかは不明だけれど)。

そうすると、ジョブズの意向とかけ離れた派手なものが出てくる可能性がある。

そういうわけで、もし壇上に飾られていた生け花が、花をてんこ盛りにしたようなものであれば、シンプル好みで美意識が高く、プレゼンにこだわりのあるジョブズが、「犬の糞を積み重ねたような醜悪なもの」と言ったのも、わかるような気がする。

ジョブズは禅を好んでいたというし、もし壇上にあった生け花が、シンプルな銅製の器に白いユリや椿を1輪だけさしたようなものだったら、ジョブズの好みにあったかもしれないと思うのだ。

執筆: この記事は逍花さんのブログ『月明飛錫』からご寄稿いただきました。

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