日本酒『久保田』の選び方!初心者向け、贈答向けはどれ?そもそもどんな味?酒蔵の役員に聞いた
日本有数の米どころ・新潟県。日本酒にも銘酒がそろいますが、なかでも代表的な銘柄が『久保田』です。先日、その40周年を記念したイベント『KUBOTA CONNECTIVE TIME』が開催されましたが、このチャンスにブランドの特徴や選び方などを聞きました。ぜひ参考にしてください!
辛口食中酒の名作『久保田』は1985年生まれ
『久保田』は、現在の新潟県長岡市朝日で1830(天保元)年に創業した朝日酒造の銘柄です。同酒造の創業時は『久保田屋』『久保田の酒』として親しまれ、この名がのちの銘酒『久保田』の由来となります。
転機となったのは、1984年。新ブランドの立ち上げに向けた一大プロジェクトが始動し、日本一の淡麗辛口な酒を造ろうと試行錯誤の日々が続きました。そうしてついに、翌1985年に完成。
この酒には、創業の精神に立って真剣によいものを造っていこうという決心を込め、創業時の屋号から『久保田』と名付けられました。
朝日酒造の特徴のひとつが『農醸一貫』。“酒造りは、米づくりから”との想いから、農地所有適格法人『有限会社あさひ農研』を1990年に設立し、35年も前から酒造りに最適な米を育てています。
そして『久保田』は、水も酒米も新潟産にこだわることが特徴。米は新潟県で生み出された、淡麗辛口な酒質になりやすい『五百万石(ごひゃくまんごく)』が使われます。ちなみに、“淡麗辛口”とは新潟清酒の特徴を端的に表すものであり、『久保田』の味的な代名詞も淡麗辛口。
なかでもこの地の仕込み水は、やわらかい超軟水で知られます。この、さらりとクリアな水によってキリッと爽快で飲みやすい辛口となり、朝日酒造が目指す“食卓を彩り、料理を引き立て、杯を重ねたくなる酒”が生み出されるのです。
シーンや段階で『久保田』を選ぶならどれ?
そのうえで、特に食中酒としてオススメなのは、どの『久保田』なのでしょうか? 会場に駆けつけていた、朝日酒造の常務取締役、牧野恭(まきのたかし)氏に教えてもらいました。
「『久保田』は計17種あり、合わせる料理ごとにオススメが変わるものもありますが、オールマイティーという意味では『久保田 千寿』です。香りが落ち着いていて、特にキレがよい淡麗辛口なので、さまざまな料理に合わせやすい酒ですね」
「そのうえで、もし秋鮭やキノコなど、今の時季に旬を迎える食材の料理と合わせるのであれば、円熟味のある『久保田 千寿 秋あがり』をどうぞ。千寿の原酒が夏を越して熟成し、繊細な味の中にある味わい深さとまろやかさを感じていただけることでしょう」
では、これから日本酒を嗜んでいきたいエントリー層に適した銘柄は?
「好みにもよりますけど、20代前半の方でしたら『久保田 スパークリング』のような甘やかで酸が効いたものが親しみやすいかもしれません」
「また、ソフトなタッチとフルーティーな香味が魅力の『久保田 純米吟醸にごり』。あるいは、華やかな酒質の『久保田 純米大吟醸』も入門にはオススメですね」
寒くなる分、燗酒がおいしいこれからの時季。燗でおいしい『久保田』はどれでしょうか?
「ぜひお試しいただきたい銘柄は『久保田 碧寿(へきじゅ)』です。こちらはいわゆる山廃(やまはい)仕込み。山廃とは酒母(しゅぼ)造りのひとつで、乳酸菌の力を利用した複雑な味わいが魅力ですから、温めると隠れていた独特のうまみや香りが、より引き立ちますよ」
では、『久保田』の中でも代表的で、贈り物にもオススメな銘柄は?
「その意味で、最もご愛顧いただいている銘柄は『久保田 萬寿』ですね。期間限定出荷となりますが、『久保田 萬寿 無濾過生原酒』や『久保田 萬寿 自社酵母仕込』も贈答品としてご好評いただいています。共通となる味わいは、重厚でフルーティーな香りと、上品でやわらかな甘味や、スッとキレのある余韻。記念日のプレゼントにもオススメですよ」
個人的な推しは『萬寿』と『雪峰』
2025年の10月30日から5日間、渋谷スクランブルスクエアで開催された体験型ポップアップ『KUBOTA CONNECTIVE TIME』は、一升瓶で1万円近くする『久保田 萬寿』や秋限定酒など、代表銘柄12種類をワンコインの500円で楽しめる飲み比べセットが提供されるなど、太っ腹な内容となっていました。
イベントは大盛況で、5日間の総来場者数は約3000人。『久保田12種飲み比べセット』の販売総数は2,002セットだったそう。取材日となった初日も、開場前から行列ができる人気ぶりでした。
ひと通り飲み比べて筆者が気に入ったのは、何度か飲んでいますが『久保田 萬寿』でした。また、個人的にはアウトドアブランド『スノーピーク』との共創で生み出された『久保田 雪峰(せっぽう)』も思い入れの強い一本です。
▲数年前のキャンプで味わった『久保田 雪峰』。北アルプスの山々を一望できる、大自然の中で味わう一杯は至福のおいしさです
何はともあれ、本稿を読めばきっと『久保田』選びの一助になるはず。ぜひ参考にしてみてください。
(執筆者: 中山秀明)
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