『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』人気脚本家・古沢良太に聞く! 個性的なキャラクター達はどの様に生まれるの?
『ALWAYS 三丁目の夕日』『寄生獣』など数々のヒット映画を手掛け、テレビドラマでも『リーガルハイ』『相棒』シリーズなどの脚本を執筆する人気脚本家の古沢良太さん。オリジナル作品『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』が4月29日より公開となります。
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』は、野村萬斎さんが初めて現代劇に挑戦した主演作。物や場所に残った人間の記憶や感情=「残留思念」を読み取ることができる特殊能力を使い、難事件に挑む新しいサスペンス作品です。今回は古沢良太さんに映画についてから、脚本家を志したきっかけなど、色々とお話を伺ってきました。
―映画楽しく拝見しました。古沢さんが書かれる物語は、後半にかけて怒濤の驚きの展開になっていくストーリーが多いと思うのですが、本作にも非常に驚かされました。
古沢良太:自分ではいつも皆さんを驚かせるような上手い展開にできているとは思えてなくて、こうすればよかったとかそんな風に思ってばっかりです。こうした方がいいんだろうか、ああした方がいいんだろうかとか。やりすぎて興ざめなんじゃないかとか悩みながら書くしかないと思っていて、いつも自信がないんです。でも、見る人の気持ちを考えながら大きな展開でなくても、ちょっとした台詞を少し変えてみるとか。お客さんの気持ちが針金に引っかかるようにして、観てくれる気がするのでそういう小さな工夫は心掛けています。
―仙石の様に個性的なキャラクターを描く際に気をつけている事。モデルはいるのですか?
古沢良太:モデルになっている人は居ますが、深めていくとだんだん自分になっていくというか、自分の中のその人っぽいところを抽出して膨らませていくことが多いです。だから愛着も湧いていっちゃうんだと思うんですよね。
―古沢さんご自身が個性的なキャラクターに惹かれるのでしょうか?
古沢良太:この人が見たいから見るっていう人物を作りたいと思っているんです。そのキャラクターをなるべく深く作って面白いキャラにしようとしている。自分が共感できない行動を描いても意味ない、多分こいつはこういう気持ちなんだろうと。俺の中にあるところから、繋いでいると思うんですよね。だから、キャラクターを作り上げていく時にやむを得ず、自分の血や肉を分け与えているんだと思います。
お笑いは好きだし、落語やアメリカンシチュエーションコメディも好き。そこから影響を受けていると思います。子供のころから面白いことを言うのが好きなんですけど、人見知りだから心の中で言っていました(笑)クラスで面白いこと言ってウケてる子とかみると、心の内で今のはこういう風に言った方が面白いって。相手のツッコミで初めて成立する笑いとか、期待するんですけど言ってもらえなくて嫌な空気になることありますよね。今冗談で言っただけだから本気にしないでよっていう。僕はこういう誤解を台本に落とし込んで解いているんでしょうね。
―本作は萬斎さんと宮迫さんとの“バディ物”の要素が特徴的だと思うのですが、意識されましたか?
古沢良太:特にバディにこだわってないんですけど、人物を作るのが好きなので面白いキャラクターを作っていきたい、でも時間をかけると変人になってたり(笑)ちゃんとパートナーが居るのにツッコんであげないと成立しない仲が多くて、結局バディの形になっているんです。好きなことをして言い合える仲って、相手のことを好き・嫌いとして扱うのではなく、自分が嫌われても厭わずに言い合えるからで、どんな人でも憧れるところがあります。
―古典芸能にルーツを持つ野村萬斎さんを宛書で書かれた理由は何でしょうか?
古沢良太:キャストが決まっていたのは萬斎さんだけだったんですが、他のキャラクターも台本のイメージに沿ったキャスティングでした。他の方はイメージ通りで、でも萬斎さんはそういう演技するんだと意外で、面白い俳優さんだなと思いました。萬斎さん自身、明るい人柄なので暗いキャラクターをどうやっていくかよく仰っていらっしゃいましたね。彼の本質的な部分が演技に漏れている感じがして面白かったです(笑)陰のキャラクターをやっているんだけど、全体的に押し出すパワーがあるんです。
―古沢さんが脚本家を志すにあたり、きっかけになったドラマや映画等があれば教えていただけませんか。
古沢良太:脚本家になりたりたいと思ったことは本当はなくて。中学生のころは漫画家になりたいと思っていたんです。当時は脚本家なんて知らなかったんですけど。物語を考えるのに脚本の参考書を読み始めたんですけど、脚本を書くことが自分に向いているかもしれない気持ちもどっかにありながらも、人づてに聞くとどうやら大変な仕事らしいし、とてもできないと思いながら10代~20代を過ごしました。そして、試しにコンクールに応募したら通過して、そこから連ドラに入れられて、今に至るという(笑)。脚本家を目指そうとしてなった訳じゃないし、本当は自分に向いているものとか、やりたいことがあるんじゃないかと思っていたんですけど、今こうして人に求められる立場になって、やっぱりあなたが脚本を書きなさいと言われてるように感じます。仙石という人物は、本人が望んだものじゃないかもしれないけど、能力を持ってしまったために、その能力をみんなの為に使って生きる自分を受け入れなきゃいけない物語でもある。夢を持ちなさいとか、人が生きてくってそういう事じゃなくて、自分に与えられたものを全うする事なんじゃないかなって描きながら思いました。
―今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』ストーリー
物や場所に残った人間の記憶や感情=残留思念を読み取る能力を使ったネタで世間を沸かせたものの、その結果として神経をすり減らした仙石は芸能界を引退し、静かな生活を送っていた。そんな折、女子高生ピアニストの亜美から、行方不明になった音楽教師の雪絵を「マイティーズ」に探してほしいという依頼が舞い込む。当初は渋った仙石だったが、元相方のマイティ丸山とともに事件の謎を追い始める。
筆者よりヒトコト:本作の監督は『デスノート』平成『ガメラ』三部作の金子修介監督。『プライド』(2009)年では満島ひかりさん、『少女は異世界で戦った』(2014)では清野菜名さんや加弥乃さんと、美人女優を発掘する才能がスゴ過ぎる監督さんですが、本作でも美女達の撮り方が独特! 古沢脚本や俳優陣の演技を満喫するのはもちろん、金子監督らしい映像にも注目を。
(C)2016「スキャナー」製作委員会
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