【MobileHackerz X 竹中直純 スペシャル対談(1)】持ち歩いて楽しむテレビ動画 – MobileHackerzの飽くなき追求
2011年7月24日、地上アナログテレビジョン放送の終了により、これまで親しんできたテレビはどう変わっていくのでしょうか。ガジェット通信編集部は、新しいテレビの視聴形態を提案し、「テレビは面白い」と口をそろえる2名の論客、MIRO(MobileHackerz)と竹中直純(未来検索ブラジル取締役、PTPの仕掛け人)を迎えて対談を実施。テレビの未来を占ってもらいました。第1回は、MIROによる自己紹介。MobileHackerzの活動とその背景を語ってもらいます。
聞き手:ガジェット通信編集部・宮原俊介(shnsk)
■『eggy』で動画を持ち歩くために
— 「新しいテレビの楽しみ方を探る」というテーマの対談として、『MobileHackerz』のMIROさんと竹中直純さんに来ていただきました。まずMIROさんがMobileHackerz(http://mobilehackerz.jp/)として、どのような活動をしてきたかということを、簡単にご紹介いただけますか。
MIRO 根っこのところから話はじめると、基本的に何かしていないと気が済まない人なんですよ、僕は。家から駅まで歩いているときとか、駅から目的地に歩いているときとか、電車に乗っているときも、ヒマでヒマでしょうがないんです。
ボーっとしてる時間がもったいないんですね。じゃあ何をしてるかというと本を読んだり、ゲームしたり、最近だったら携帯電話でポチポチとネットしたりとかしてるわけですけれども、そういう諸々の作業って手をふさいでしまったり、意識を占有してしまうものなんですね。それなら音楽を聴くかっていうと、僕はふだん音楽はあまり聴かない人なので。
竹中 通勤時間が短い人ですか?
MIRO 前はそこそこあったんですけど、いまは短いですね。
それでまぁ、ヒマな時間に何をするかいろいろ試したところ、動画を観るのが楽しくなって。それがMobileHackerz以前の話なんですね。映画を観るというのではなくて、録画したドラマやニュースを観るとか、ちょっとした動画をボーっと観ながら情報を頭に入れていくっていうのが、すき間時間の過ごし方としてしっくり来たので、それをいろいろと試し始めたのが2002年とかそれくらいでした。当時、投げ売りで『eggy』っていうドコモのPHS端末が。
竹中 あー! 伝説のね。
MIRO そうそう(笑)。コンパクトフラッシュ(CF)が入ってて、動画も撮れて、写真も撮れて9800円くらいで買えたんですけど。
■人気サイト『MobileHackerz』立ち上げ
MIRO それで、録画した動画をCFに入れて外で観たりとかしてたんです。それから面白くなってきちゃって、動画がらみのプログラムを作ったりしていたら、だんだんまとまった場所が必要になってきて、サイトとして独立させたのがMobileHackerzなんですね。
— サイトを立ち上げたのは?
MIRO あれ、何年だったっけなぁ。記録を見れば分かるんだけど……。
Linux界の有名人「おごちゃん」という方が趣味で人に貸しているサーバーがあるのですが、そこでしばらくいろいろやらせていただきました。で、最近さすがにそろそろドメイン取った方がいいかなと唐突に思い立って、移転し終わったあとにおごちゃんに聞いたら、トラフィックの4分の3はうちだったっていう(笑)。
竹中 なるほど。
— では、MobileHackerzを立ち上げられて、いろいろ作ったものを発表する場としているんですね。
MIRO そうですね。もともとそういう経緯で動画をいろいろいじりはじめたので、動画を外に持ち出して観るっていうことに、とにかくひたすら執念を燃やしているんですね。
『携帯動画変換君』なんかもそうですし、今はニコンのヘッドフォン一体型ディスプレイ『UP』なんかにハマっていますけども、やっぱり最終的には両手フリーで動画が観たいというところに行き着いちゃうんですよ。UPの前にも、日記でヘッドマウントディスプレイを試したりとか、バカなことばっかりやっていましたけど。なんだかんだ言って、最終的にはすべてはそこに行き着くのかなと。
竹中 バーチャルリアリティが流行ったころって、何かやってみましたか?
MIRO いやぁ、全然なかったですね。ていうか、趣味ではバーチャルリアリティのゲームをしに行ったりはしましたけど、いわゆるヘッドマウントディスプレイが試したくて。趣味で見に行ったりはしても、自分で何か作るってことは全然しませんでしたね。
■ワンセグを24時間全局録画
— それから24時間全テレビ局を録画する『24時間ワンセグ野郎』というプロジェクトが今動いてるんですよね。どういう経緯でそれは?
MIRO すべては「外で動画を観たい」ということに行き着くんですよね。外で動画を観るってことをやりたくて、毎日毎日動画を変換して外に持ち出すことになると、毎日毎日繰り返す作業っていうのはちょっとでも面倒くさいとすぐやらなくなっちゃうんですよ。
できるだけそれを簡単にしよう、ということでシンプルなインターフェースの携帯動画変換君を作りまして。それでだいぶ楽になったんですけど、それでもやっぱりまだ面倒くさい。それなら、録画したものを後から選べば、そのままウェブ経由でストーリーミングで観れちゃうっていう環境の方がさらに楽だね、ということで始めたのが24時間ワンセグ野郎。
竹中 へえ、面白いなぁ。だけど、なぜワンセグがソースなのか?
— リアルタイム視聴じゃなくて、ため録りで観ようっていうのはどうしてなんですか?
MIRO リアルタイム視聴じゃない理由は単純で、普段さんざん外で動画を観ようってやってるのにかかわらず、普段はテレビを見ないんですよ。だから、リアルタイムに何をやっているのかとか、「今度やるNHKスペシャルはすごいらしい」って話を聞いても、その放送時間をすっかり忘れるんですね。だからまず、後から「あれは面白かったよ」って言われたらそれを観るっていうスタイルの方が、自分の性格に合ってるのでリアルタイム視聴は最初から考えないんですね。
次に、なぜソースがワンセグなのかっていう理由も単純で、チューナーが安いからなんです。あとデータの量もすごい少ないので。ウェブでストリーミングすることを最初から考えていたので、非常に軽いデータだと取り扱いがしやすい。本当に画質さえ妥協すればあとはメリットだらけなので、最初からワンセグしか考えていませんでした。
深水英一郎(以下、深水)
ワンセグって残ると思いますか?
MIRO うーん、まぁ、さすがにこれだけ受信機が出回ってしまったから、そう簡単にはつぶせないんじゃないかとは思ってます。
竹中 僕はデジタルラジオとのかかわりなんかもあって、人よりも詳しいはずなんですけど。電波の使われ方でワンセグっていったいどうなってるんだろうって、あんまりよく分からないんですよね。まぁ、勉強不足なのかもしれないですけど。ワンセグってこれからチャンネルが増えたりするんですか?
MIRO んーっと、ワンセグの現状の帯域を分割して複数チャンネルにするっていうのは今すでに東京MXやらで試されてるみたいなんですけど、ワンセグのチャンネル自体が増えるかどうかっていうのはどうなんだろう?
ワンセグの現状のシステムは、UHFの帯域で地デジ用の帯域が各局に割り当てられていて、地上デジタルの放送をしますよね。
竹中 そうか、UHFですよね。
MIRO 5MHz幅だったかな、その中でデジタル変調してガーッと送っていますけど。変調するにあたって、13セグメントに分けて。帯域そのものはいわゆる地デジのチャンネルそのものですよね。そこを13セグメントに分割して、セグメントごとにデータを割り当てて送ってるんです。たとえばSD画質の放送だったら、4セグメント分でSD画質を送れるんですよ。なので、地デジがSDだったら3チャネル、ハイビジョンだったら12セグメント分の帯域をまるまる使って地デジのHD画質のものを送る、と。ワンセグっていうのは、13セグメント分とってある1セグメントだけをモバイル用に開放してるんですよね。そこに1セグメントぶんの細いデータが通ってる。
竹中 そこに何チャンネルも乗ってるってわけじゃないですよね。そこに13セグメントのうちの一つを使って1チャンネルを送って、どこか分からないけど5MHzに区切られた電波の1セグメントを使って、たとえば日本テレビの中身そのまま送るみたいなことなんですよね? そのへんがあまり見えない、気にしなくていいものになってるんですよね。
MIRO 気にしなくていいですよね。チャンネルの位置そのものは、東京MXならMXに割り当てられた周波数の中の13セグメントのうちの1セグメントってことは変わらないんですけれども、要するにデジタル放送なので、その中にどのデータを流すかって、帯域にかかわらず結構自由にできるわけですよ。そこに流しているデータのなかに、複数編成分のデータを流しちゃう。だからワンセグのあの画質をさらにデータ映像2分の1にすると、複数チャンネル分流せるわけですよね。
編集部注:UHFの帯域を50チャンネルに分割し、ひとつのチャンネルの帯域6MHzを13のセグメントに分けたうちの1セグメントを利用するのがワンセグ放送。1セグメントをさらに2分割して、複数のチャンネルを放送できる。
竹中 でも結構、ARIB(電波産業会)が決めちゃったんですよね。データ形式については。
MIRO そうですね。
竹中 そうか。僕のイメージだと、0Hzから無限にあると思うんですけど、電波の帯域表があって、ここはテレビ東京、ここはフジテレビみたいな感じでわかりやすく表示してくれたらそれでいいのに、すっごくフクザツな感じがしますよね。データのストリームはここ、とか。
MIRO いやそれは分かれてるんですよ。
竹中 でもその図を見たことがないっていうかね。
MIRO あー。
竹中 FM波、AM波、短波、長波とかあるわけでしょ。ここがワンセグ日本テレビとか。そういうの。
MIRO それは細かすぎて(笑)。あの、『Wikipedia』に「テレビ周波数チャンネル」で載ってますよ。
竹中 それは大筋の話ではないんですけれども、ハイ。
MIRO すみません……。
竹中 いえいえ。
■「何を観るか?」を選ぶ
— このごろ、『2ちゃんねる』の実況スレッドの勢いを検出する『実況スレッド勢いブラウザ』というものを作られたと思うんですけども、これは24時間ワンセグ野郎と、どういう関連でできたものなんでしょう?
MIRO これは24時間ワンセグ野郎を作ろうと思ったときよりもさらに前、『コクーン』(ソニー)とかで録画していた頃から構想としてはあったものなんですけれども。何が面白い番組なのかっていうのも、自分で探したりするのは面倒くさいんですよ。面倒くさくなく、目の前に面白い部分がそろうといいなあ、うれしいなあというところで。
じゃあそれをどうやって、面白いか面白くないかっていうのを検出するかというので、実況スレッドの盛り上がりを見ればいいんじゃないかと思って。これはもう本当にずいぶん前から思ってて、いつかはやろうと思ってたんですけど、盛り上がりを検出してからチャンネルを変えて録画したんじゃもう遅いんですよ。いわゆるふつうのHDレコーダーとかではなかなか狙ったことができなくて。24時間選局録画という環境がそろったところで、後から盛り上がったところを切り出すことができるようになったので、まぁここでやるしかないなと思って。
竹中 いい考えだ。
『MobileHackerz X 竹中直純スペシャル対談(2)』に続く
MIRO プロフィール:
MobileHackerzの中の人。デジタルガジェットをこよなく愛するモバイル男。でも最近「自転車」にハマり、引越して電車移動の時間が短くなりでガジェットをいじる時間が少なくなってます……。
竹中直純プロフィール:
有限会社未来検索ブラジル取締役、武蔵野美術大学講師。インターネット草創期より、数多くのWeb サイトやシステムの設計・運営に携わるプログラマー。技術家を自称している。現在は、システム開発のみならず、Web関連のディレクションやプロデュースを多数手がける。
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
TwitterID: shnskm
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