温暖化対策で15年後の住まいはどうなっているの?

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温暖化対策で15年後の住まいはどうなっているの?

日本の温暖化対策は「2030年までに温暖化ガス26%削減」が新しい国際公約になった。その中には住宅の省エネ化についても具体的な対策が盛り込まれている。15年後の住宅はどうなっているのだろうか。
給湯器はガス・電気・燃料電池の三つ巴の競争

「温暖化ガスを2030年までに2013年比で26%削減する」と、今年6月にドイツ・エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議(サミット)で、安倍首相が宣言した。これを受けて内閣府の地球温暖化対策推進本部が7月に「日本の約束草案」をまとめ、国連に提出。そのなかで家庭部門での対策として、住宅の省エネ化についていくつかの具体策が示されている。

例えば給湯器。国が普及をめざしているのはエコジョーズとエコキュート、それにエネファームだが、このうち順調に普及が進んでいるのがエコジョーズだ。排気ガス中の熱を再利用することで効率をアップさせたガス給湯器で、大手ガス会社が標準化を目指すことで2030年までに2700万台が導入される見通しという。

オール電化住宅に欠かせないエコキュートは東日本大震災の影響で普及が低迷していたが、最近では保温効率を高め、入浴する人の好みでお湯の温度を細かく設定できるなど新しい機能を加えた機種が登場し、巻き返しつつある。2030年までに1400万台の普及見通しだ。

普及がなかなか進まないのが、燃料電池で都市ガスなどから発電・給湯するエネファームだ。「政府の目標は2030年までに全世帯の1割強に当たる530万台と野心的ですが、現状では13万台強に過ぎません。補助金を差し引いても現時点で100万円を超える導入コストは課題といえそうです」と、住環境計画研究所主席研究員の中村美紀子さんは話す。最近ではエネファーム付きの分譲住宅も増えてきているが、さらなるコストダウンが求められそうだ。HEMSのカギを握るスマートメーターの導入が進む

「約束草案」にはHEMSの活用も盛り込まれている。HEMSとはHome Energy Management Systemの略で、住宅設備や家電をつないで制御することで、エネルギーを節約しようというシステムだ。スマホやタブレット端末で電気やガスの使用量を「見える化」して管理できるようにしたり、自動制御したりする。

ひところはマスコミでも盛んに取り上げられ、タワーマンションなどで導入するケースも登場したHEMSだが、最近は目にする機会が減ったような気がする。建築コストの高騰などで住宅の供給側がそれどころではなくなったのかと思いきや、全面的な普及に向けた動きが着実に進んでいるようだ。

というのも、HEMS普及のカギを握るといわれるスマートメーターの導入を、電力会社が急ピッチで進めているからだ。スマートメーターとは各家庭に設置されている電力計の次世代版で、家庭の電力をリアルタイムで計測し、ネットワークで電力会社にデータを送るというもの。電力会社が人手を使った検針を自動化してコストダウンするのが主な目的だ。

「2014年の段階でスマートメーターの普及率は1%程度ですが、東京電力では2020年までに管内の普及率を100%にするとしています。スマートメーターからのデータをHEMS機器とつなげれば、スマホなどでもリアルタイムで電力を見える化することが可能となり、最適な電気料金プランの提案などが受けられるようになるでしょう。今後、家電などをネットワークに接続するIoT(Internet of Things)が進めば、家電ごとの電力消費をチェックして買い替え診断などが受けられるようになると予測しています」と話すのは、同じく住環境計画研究所の取締役研究所 所長・鶴崎敬大さんだ。

2030年ごろには帰りの電車の中で、みんながスマホに向かってエアコンのスイッチを入れたり、テレビの録画予約をしたりするのが当たり前になるかもしれない。ストーブや蛍光灯はこれから使われなくなりそう

住宅の省エネ化が進むと、逆に使われなくなる住宅設備や家電も出てくる。典型的なのが暖房器具だという。

「ガスストーブや石油ストーブ、ファンヒーターなどはエネルギー効率をこれ以上高めるのが難しい機器です。燃焼による排気ガスが室内に出るので、気密の高い省エネ住宅で換気をせずに使うと一酸化炭素中毒になる危険もあります。今後は床暖房などの輻射熱による暖房や、省エネ効率の高いエアコンが主流になるでしょう」(鶴崎さん)

また、照明もこれから急速に変わりそうな機器だ。すでに白熱灯を使った照明器具は大手電機メーカーが製造を中止しているが、蛍光灯の器具も製造を取りやめる動きが出てきている。

「今後はLED照明と有機EL照明が主流になると予測されます。国の計画では、2020年までに新築住宅で100%、2030年には既存住宅も含めて100%の普及が目標です。このうちLED照明は普及が進んでいますが、有機ELは発光効率の向上やコストダウンが課題でしょう」(鶴崎さん)2030年にはゼロ・エネルギー住宅が当たり前になる!?

ちなみに住宅市場全体の目標として、国では2020年までにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。「ゼッチ」と呼ばれる)を「標準的な新築住宅」としている。

【画像1】2020年の住まいのイメージ(出典:国土交通省HP)

【画像1】2020年の住まいのイメージ(出典:国土交通省HP)

ZEHとは省エネ性能が高く、かつ太陽光発電などにより家で消費する以上の電力をつくり出す住宅のことだ。住宅の省エネ性能を確保するには、家を断熱材で覆って窓ガラスを複層ガラスにするなど、断熱性や気密性を高める必要がある。国は2030年までに新築住宅の平均でゼロエネルギー住宅を達成する目標を掲げている。

「大手ハウスメーカーなどではすでに住宅の仕様をZEHにシフトする動きが広がりつつありますが、中小の工務店などはまだこれからです。またマンションは各住戸に十分な容量の太陽光発電パネルを設置するのが難しいなどの課題も残っています」(中村さん)

国の目標どおり2030年までにZEHが当たり前になるかどうか不透明な部分もあるが、今よりエネルギー効率が高まるのは間違いなさそうだ。これから家を買ったり建てたりする場合は、省エネ性能にも目を向けておかないと、将来の家の価値が下がってしまうことにもなりかねないだろう。●参考
・国土交通省/まち・住まい交通が一体となった創エネ・蓄エネ・省エネ化の推進
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/10/20/99398/

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