戦場ジャーナリストですら涙する被災地 報道に「無視」されたと憤る被災者も

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 広い範囲の地域を襲った東日本大震災。マスメディアも連日懸命に報道しているが、被災地すべてをカバーすることはできず、どうしてもこぼれ落ちてしまう情報がある――2011年5月5日放送のニコニコ動画の生放送「カメラが震えた!ジャーナリストが撮った原発と被災地」では、現地を取材したジャーナリストたちが撮影した写真や動画を持ち寄り、「隠れた」情報を伝えた。

■卒業式後の中学校を津波が襲った

 ジャーナリストの渋井哲也氏が紹介したのは、宮城県南部の亘理町で撮影された、町立荒浜中学校の体育館の写真。荒浜中は海から1キロメートル程度の地点にあり、津波で壊滅的な被害を受けた。地震当日は午前中に卒業式があったといい、壁には紅白幕がかかったままになっている。校舎の損傷が激しく、現在は立ち入り禁止で、新学期は近隣の中学校で授業が行われているという。学校は良くも悪くも思い出の場所。在校生・卒業生の気持ちはいかばかりか。

■火葬場はフル回転、腐敗が進み土葬になる場合も

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 同じく亘理町を紹介するのは、この町出身の戦場ジャーナリスト・村上和巳氏。悲惨な光景には慣れているはずの村上氏も、故郷の変わり果てた姿に、何度も涙しながらの取材になったという。

 写真は同町の観音院という寺で撮影した土葬の様子。発見から2週間経っても身元確認ができない場合、遺体の傷みが激しくなり、安置所には置いておけなくなるため、町側が遺体を無縁仏として受け入れ、寺に埋葬しているという。地元の土建業者が穴を掘り、その中にクレーンで棺を降ろし、土を被せている。身元が分からないので、棺の上には検死番号を振った札が掲げられている。しかし、仮に身元が分かっていても、火葬場が足りなかったり、遺体の腐敗が激しかったりという理由で、土葬せざるを得ないケースも少なくないという。

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 村上氏自身も震災で、従兄弟の妻とその義父母を亡くしたそうで、火葬場での様子を、

「すべてが異例なわけです。朝の6時半で火葬場の窯3基がフル回転。棺を開けたのですが、遺体がファスナー付きの袋に入っている。それを開けてお別れということでしたが、死後、火葬まで2週間が経っていたので、少し腐敗が進んで、目の周りが真っ黒になっていました。全部時間を省略するような感じでやり取りしていましたね」

 と語ると、スタジオには重い空気が立ちこめた。

■マスメディアから無視されていると感じている被災地

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 フリージャーナリストの烏賀陽弘道氏が取材したのは、岩手県北東部にある野田村。太平洋に面したこの村でも震災によって大きな被害が受けた。海の近くでは、津波で流された防潮林がトンボをかけるように周囲のものをなぎ倒していき、周囲の風景を平原と瓦礫の山に一変させてしまった。車が映っている写真は村役場の隣にある図書館1階の様子で、壁の色の変化から奥にある本棚の1番上の段付近まで水が押し寄せてきたことが分かる。

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 しかし、元が人口4500程度の小さな村であるため、その被害はなかなか報道されなかったという。烏賀陽氏は、

「マスメディアの報道というものは、どうしても死者の数を数字に表して、多い順にニュース価値を決めて行く。野田村の人は、自分たちがあまりにもマスメディアに無視されている、地元紙にすら取材されないと怒っていた。だから(取材に行ったとき)、『やっと来た』と喜ばれた」

 と述べた。氏は被災地支援が報道の度合いと比例する傾向があることにも触れ、「同じ被災地、長い500キロの海岸線の中でも、メディア格差というか世論の注目格差みたいなものが間違いなく出ていると思います」と指摘した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]渋井氏の報告部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv48037704?ref=news#01:54:34
・[ニコニコ生放送]烏賀陽氏の報告部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv48037704?ref=news#02:10:10
・[ニコニコ生放送]村上氏の報告部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv48037704?ref=news#02:27:30

(野吟りん)

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