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3.11後の原子力・エネルギー政策の方向性~二度と悲劇を繰り返さないための6戦略~

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今回は環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんからご寄稿いただきました。

3.11後の原子力・エネルギー政策の方向性~二度と悲劇を繰り返さないための6戦略~

2011年3月11日に、東北・関東地方を襲った巨大地震とそれに続く大津波の影響は、計り知れない被害をもたらした。なかでも東京電力福島第一原子力発電所は、巨大地震と大津波の影響で、全電源が失われた後に、冷却水の喪失から炉心溶融、そして大量の放射性物資の環境中への放出など、史上最悪の事態に陥り、今なお収束していない。
本記事は、事故の収束を見据えつつも、同時に新しい原子力・エネルギー政策の方向性を提起し、今後検討が必要な論点を提示することで、世論を喚起することにある。

【要旨】
1 原発震災の出口戦略

冷却・閉じ込めまでに数年単位、その後の管理に100年単位の長期化が予測されるため、それを前提として、安全最優先の対策を取る。
(1) “原発震災管理官(仮称)”の任命による統合体制の構築
(2) 石棺封じ込め方式への早期転換
(3) 放射能モニタリング(空気、水、土壌、食品)の広域・網羅的展開
(4) 実測および予測データに基づく避難区域・避難対策の全面な見直し
(5) 被ばく被害者の長期追跡・ケア体制の構築
(6) 恒久的な事故処理機関の設立
(7) 産業への影響把握と対応
(8) 東京電力の全賠償責任と原発埋蔵金(約3兆円)の活用

2 原発震災の教訓化戦略
国内のみならず国際社会において、二度と原発震災を引き起こさないために、技術から政策決定の面に至るまでの総合的な“事故調査委員会”を設け、事故の構造的な要因を徹底的に洗い出す。
(1) 当事者・利害関係者を排除した独立的な“事故調査委員会”の設置
(2) 国の政策にも踏み込む聖域なき調査対象
(3) 情報・知見の全面開示

3 原子力安全行政の刷新戦略
事前の指摘や数々の原発事故隠しの発覚にもかかわらず、原発震災を防げなかった既存の原子力安全行政を抜本的に見直し、人心一新して独立性の高い安全規制機関を新設する。
(1) 地震リスクに脆弱(ぜいじゃく)な運転中の原発(浜岡原発等)の緊急停止命令
(2) 既存の安全規制機関(原子力安全・保安院、原子力安全委員会)の廃止と、独立性の高い安全規制機関の新設
(3) 全リスクをカバーする無限責任の原子力損害賠償法の見直し

4 原子力・エネルギー政策の転換戦略
原発の大規模新設を前提とする既存の原子力・エネルギー政策路線は完全に非現実的であり、原子力・エネルギー政策を抜本的に見直す。
(1) 原発新増設(建設中含む)と核燃料サイクル事業の即時凍結
(2) 既存の閉鎖的なエネルギー政策機関(原子力委員会・資源エネルギー庁・総合資源エネルギー調査会)の廃止と、環境視点で開かれたエネルギー政策機関の設置
(3) 全国一体の送電会社の創設と電力市場の抜本的改革
(4) 自然エネルギーとエネルギー効率化(総量削減)を新しいエネルギー政策の柱に
(5) 気候変動政策・低炭素社会構築とエネルギー政策との相乗的な統合
(6) 原発国民投票による国民的な議論と原子力政策の見直し

5 緊急エネルギー投資戦略
短期的な対応として、電力需給、東電の一時国有化、自然エネルギーへの加速的投資を行う。
(1) 無計画停電に代わる戦略的な需要側対策の活用
(2) 自然エネルギーと送電設備への緊急集中投資と債務保証制度を用いた地域資金の活用
(3) 第一段階としての東京・東北電力の送電網公有化

6 段階的な原発縮小と整合する気候変動・低炭素社会戦略
気候変動政策・低炭素社会構築にエネルギー政策の転換を反映させる。そして、段階的な原発縮小と整合する気候変動政策を確立する。
(1) 2020年30%、2050年100%の自然エネルギー普及目標と実効的な支援政策導入
(2) 需要プル手法の省エネルギー・総量削減政策による2050年に現状比5割削減
(3) 段階的な原発縮小と実効的な気候変動政策策と低炭素経済社会構築戦略の立案・公表

1. 原発震災の出口戦略
福島第一原発への対応は、地震発生直後の初動から3週間を経過した今日まで、“新しい事態発生→その場しのぎの対応→より深刻な新しい事態の発生”という状況が繰り返し進行してきた。
もはや、この史上最悪の原発事故となった事態の収拾には、年単位の期間を要することは確実であり、事態収拾後も百年単位での管理を要することも避けられない。
そうした前提に立って、以下のとおり、具体的な対処方針を提案する。

1)全権委任した“原発震災管理官”を任命し、統合的な危機管理・事故処理体制を構築
東電原発震災の事故処理は長期化が必至であることから、現状のような官邸主導の体制では、戦略的な対応を迅速に取ることが困難であると考える。これまでの後手後手でドロ縄的に混乱した対応も、当事者である東京電力の対応のまずさや原子力安全・保安院の当事者意識や当事者能力の欠落に加えて、専門的な知見や経験を持たない政治家が前に出るかたちでの“政治家主導”が一因と思料される。規制官庁であるはずの原子力安全・保安院がモニタリングの体制をもたず、事故当事者の東京電力の発表データに全面的に依存し、分析も後手
後手にまわっていることは、OECD諸国から見れば信じ難い事態であろう。
そこで、迅速かつ戦略的な危機管理と事故処理に即応するために、危機管理と戦略的な思考、現場への想像力を持った人物を“原発震災管理官(仮称)”に指名し、これに全権委任した上で、国(原子力安全・保安院、原子力安全委員会、日本原子力研究開発機構、自衛隊など)や民間機関(東京電力、東芝、日立、東京大学、東工大など)、国際機関や各国研究機関などの全面的な協力を得て、これを統括できる体制を構築する必要がある。
また、国内外で広がっている不十分な情報開示への不満や不信は、そもそもガバナンスの混乱が主な原因と思われるため、情報発信・管理についても“原発震災管理官”に一元化することで、そうした不満へも徐々に対処できると考える。

2)異常事態終結に向けた石棺化への早期転換
現時点(4月4日)では、1~3号機の炉心や3/4号機の使用済み燃料プールの冷却のためにポンプ車で水を注入しているが、溶融した炉心の熱で蒸発するほか、高濃度の放射能で汚染した水がタービン建屋や海洋に漏れ出ていることが発見された。
その高濃度汚染水を取り除かないと全体の修復作業は不可能であるため、作業員が被ばく限度いっぱいに被ばくしながら、その高濃度汚染水を取り除く方向で検討されている。その汚染水の除去が成功してはじめて、通電による再循環ポンプ等の稼働試験ができるが、あれだけの大地震・大津波、そして相次いだ水素爆発や炉心溶融のあと、動作する見込みは乏しい。
しかも汚染した冷却水が圧力容器と格納容器から漏えいしているおり、高い放射線量下での補修作業も見通しが立たない。
このような中で、現状の施策を継続するままでは、いたずらに作業員の被ばくを増大させ、放射能の汚染を拡大するだけであることから、当面の水注入はやむを得ないものの、早急に石棺方式へと出口戦略を転換する必要がある。ただし、未だに膨大な崩壊熱を持つ福島第一原発は、チェルノブイリ原発と同じコンクリートによる石棺処理は取れないため、除熱も可能な石棺化(金属閉じ込め、スラリー化など)を早期に研究開発する必要がある。これは、かつてどこにも知見のない措置であり、国際級の研究開発実証チームを必要とする。

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