文部科学省「20キロ圏内空間放射線量率」データ公開が遅れた本当の理由

20km圏内空間線量率測定結果

20キロ圏内の放射線量計測データの一部公表が遅れていた問題で、文科省はガジェット通信からの「他に公表していないデータは存在するのか」という取材質問に対して「ない」と答えた。

また、産経新聞などが「官邸の指示で出さなかった」と報じている問題に関しては「データを出すなという指示があったわけではなく、もっと計測箇所を増やした詳細な調査が必要ではないかという指摘があったということだ」とした。

●一部データの公表が遅かった理由

福島第一原発20キロ圏内の放射線量モニタリング(計測)結果が昨日文部科学省より発表された。その中の計測データは大きく以下の2つにわかれていた。

A.3月30日から4月2日にかけて計測された50箇所分
B.4月18日から19日にかけて計測された120箇所分

Aの調査が行われてから20日程の時間が経過している。確かにこれはおかしい。この点について文科省に質問したところ「最初の調査は、測定ポイントが少なく、情報を面として捉えるには不十分だった。そのため、測定ポイントを増やした次の調査を待って一緒に公開した」との返答だった。言いたいことはわかるが、これらの情報は、その地点のその時点での計測値としては貴重なものなので、このデータが迅速に公開されなかったのは、やはり残念。50箇所調査した時点でそのデータはすぐに公表されるべきだった。「今後はすぐに公表されますか?」ときいたところ「すぐに公表する」との返答だった。

さらに「他に公表していないデータは存在するのか」ときいてみたが、それに関しては「公表していない放射線モニタリングデータは、もうない」とのことだった。昨日公表されたデータですべてらしい。

●「官邸の指示で出さなかった」とは?

この問題、産経新聞などが「官邸の指示で出さなかった」と報じているが、「官邸がデータを出すなという指示を出した」という意味かと思ったら、どうもそうではないらしい。文科省の説明によれば、「もっと計測箇所を増やした詳細な調査が必要ではないか」という指摘があり、そのときはデータを公表しなかった、というのが真相だそうだ。「官邸の指示で出さなかった」という字面そのものは間違っていないが、このままでは「官邸が情報公開にストップをかけた」と解釈をする人が多数だろう。新聞を正確に読み解くのは、なかなか難しい。

福島第一原子力発電所20km圏内の空間放射線量率の測定結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305283.htm


●参考リンク

【東日本大震災】「官邸の指示で出さなかった」 警戒区域4カ所で毎時100マイクロシーベルト超  – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110421/dst11042116400028-n1.htm

【放射能漏れ】文科省と枝野長官食い違い 放射線量公表遅らす? – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110421/plc11042123440023-n1.htm

引用:
文部科学省が21日、東電福島第1原発から半径20キロ圏内の150地点で、1時間当たりの放射線量を初めて公表した際、「首相官邸の指示で出さなかった」と説明したことをめぐり、政府内の風通しの悪さと官邸の機能不全がまた露呈した。

asahi.com(朝日新聞社):枝野官房長官の会見全文〈21日午後4時〉 – 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0422/TKY201104210628_02.html

引用:
――文科省の発表で、20キロ圏内の調査について今まで調査結果を公表してこなかった理由について、文科省は「官邸の指示だった」と説明しているが、官邸が止めていたのか。
 少なくとも私は承知をしていない。20キロ圏内の調査については、しっかりと調査したデータを整理してまとめて発表するという報告は受けていた。その報告を受けていたのみだ。逆に言えば、今朝方だったか昨日の夜だったか、こういった形で発表しますというのが報告されて、これなら第一段階で早く出せばよかったのにと思ったが、指示をしたものではない。
 ――文科省へ官邸から指示は出ていないということか。
 私が指示していないということは、私の決裁なくそういった指示が出ているとは一般的には考えにくいので、もしかしたらどこかで情報、意思疎通の齟齬(そご)があったのかもしれないとは思うが、重要なことなので確認したい。

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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