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みんなはいま、なにを思っているんだろう?

ふくいちライブカメラより

※作家田口ランディさんからの寄稿です
※ガジェ通サイトの記事下にコメント欄がありますので、そこにみなさんが今思っていることを投稿してみてください。

みんなは
いま、
なにを思っているんだろう?

(田口ランディ)

地震、津波、そして原発事故が起こってから、もうすぐ三週間が経ちます。
いま、この先の見えない状況のなかでみんなどんな思いを抱いているのだろう。それを知りたくて、友人のみなさんに声をかけて、現在の思い、考えをメールで送っていただきました。読んでみて、とてもほっとしました。みんなとまどっている。自分だけじゃないんだ。そう思えました。そして、勇気がわいてきました。いただいたメールをみなさんにご紹介します。

(とりまとめと編集は田口が行いました。発言のバックグラウンドを知っていただくために記名でお願いしました。文中の太文字は読みやすさを意識してのレイアウトです。それも田口が考えました)

 ひとつの単語、ギルティー(guilty)ということを考えています。大学教員である私は、研究室に室長として所属する女子学生から、3月16日に次のようなメールをもらいました。「当分の間、帰省する。海外メディアの報道に信憑性を感じる。一人暮らしの自宅の惨状と近隣環境は住めたものではない。研究室員は全員、自宅待機としてほしい。勝手な行動への叱責は甘んじて受ける。」そして帰省後に、「自分が女であることを悔しく思う」という追伸をもらいました。私はこの時の彼女の感情を明確な言葉として理解できませんでした。おそらく今も正確な理解はできていないと思います。
 妻は英国育ちのモーリシャス人に英語を習っており、震災5日後の彼との会話は、次のようなものだったそうです。あなたの同僚の英米人の多くは家族や海外メディアの呼びかけで帰国したが、彼らは何を思って帰国したのか?という問いに、彼は、皆が何らかのギルティという感情を抱きながら帰国したと答えたそうです。私は、そこで初めて、研究室長の感情が、東京に留まる仲間たちへのある種の罪悪感であることを理解しました。
 その後、私の心にも急速に私自身に固有の罪悪感が広がっていきました。そして私は娘に、もし多くの子供たちが被爆して発がんリスクを負ったら、私たち大人に復讐するだろうか? 原発施設に自爆テロを仕掛けると政府を脅迫して、全原発の即時停止を訴えるだろうか?と問いました。娘は、あっさりと「やるなら原発にサーバーテロを仕掛けると脅すでしょ」、と答えました。
 1960年代の公害(大気汚染による小児ぜんそくと六価クロムの吸引による慢性鼻炎)や環境問題(埋め立て)を身近に体験しながら、東京の下町で育った私は、現在、環境経済学者を名乗っています。しかし90年初頭の冷戦構造の解体以降、地球温暖化への問題意識の拡散と研究の新規性や厳密性への傾倒の中で、原発問題との真剣な取り組みを避ける傾向にありました。明治大学における2010年の水俣展の開催とそこでのランディさんとの出会いを契機に、ダイアローグ研究会の運営に携わりました。そして今回の震災と原発事故から目覚めた、未だ十分に自己了解できていない、次世代への罪悪感を引き受けて、これから、学び、語り、行動していこうと考えています。
――明治大学環境経済学 大森正之

私は医師の立場から、現場の病者の立場に心を痛めている。テレビでは避難のため迎えに着た重装備の自衛隊員におばあさんは、ほぼ寝たきりのおじいさんのために家に残ると言って追い返します。現時点で身体で分からない放射線よりも、今日と同じ明日を選ぶ。そんな病者の思いを支えることはできないのだろうか。
この先何ヶ月、何年も福島第1原発の周辺では放射線の被曝が続くであろう。原発には自然治癒力がないから。そして、テレビの老夫婦にも放射性物質が降り注ぎ続くことだろう。老夫婦を冷静に支え続ける医療者がまず被曝の安全性と危険性を理解しなくてはならない。短期的な善意と勇気だけでは老夫婦を支え続けることはできない。そして医療者は率先して被曝の恐怖から脱して欲しい。避難地域の病者を放射線への偏見からの診療拒否をしてはならない
今まで、レントゲン、CTスキャン、放射線治療、シンチグラフィと放射線と放射性物質を安全に扱い多くの病者を支えてきた医療者は、自ら扱ってきた道具と原発から降り注ぐ物質との相似性をどうか思い出して欲しい。
――社会保険神戸中央病院 内科(緩和ケア)新城 拓也

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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