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田辺晋太郎 「本当にあった旨い店」 第十八回 丸の内 ウルフギャング・ステーキハウス

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もう夜は明けた

 

ウルフギャング・ステーキハウス 二隻目の黒船が錨を下ろした港は東京 丸の内。

 

2013年のアメリカ牛肉輸入規制緩和を受け月齢30ヶ月未満の大きな個体が解禁になった。これは今までよりも安定してアメリカ牛が安価で提供できるという利点もあったのだが、それ以上に我々の心を踊らせたのは「Tとの再会」だった。

 

NYはブルックリンにある一軒のステーキハウス「Peter Lugar Steak House」

 

ここから熟成させた赤身肉のステーキの歴史は始まった。

この店で40年間ポーターを務めたのがこのウルフギャング・ステーキハウスのオーナーであるウルフギャング・ズィナーであり、今からおよそ10年前にマンハッタンに店を出し瞬く間にアメリカ国内にその味を広めた。

 

アメリカという大国の豊かさを体現するのに十分すぎるそのステーキの出で立ちはハワイに訪れる日本人観光客の心を虜にして話さなかった。

 

そんな中、輸入規制緩和を受けその期待の声が黒船を動かす原動力となり、BSE騒動以来日本では出会うことができなかった本場アメリカの「T-BORN」スタイルのステーキ。

 

それを引っさげてウルフギャング・ステーキハウスは2014年に六本木に入港した。

 

「Wの来航」

 

それからおよそ半年、東京の都心の中央である丸の内にまで黒船は進出した。

これぞアメリカ、まさにNYと言った雰囲気を醸し出す最高のシチュエーションに誕生したウルフギャング・ステーキハウス丸の内店はそこに一歩足を踏み入れたすべての訪問者に一瞬にして非日常を与えられるタイムマシンのような雰囲気を備えていた。

 

むろん日本にも幾つもある高級レストランやデザイナーズレストラン、グランメゾンなども非日常の演出という意味ではその役割を果たすのだが、肩肘を張らずとも非日常を楽しめる、大国を感じることができるのは、きっとこんな雰囲気。

 

カウンターに鎮座する牛、タイルで描かれた「W」がお出迎えしてくれるエントランスを抜ければ数々の極上ワインがいよいよ非日常の世界に来たことを教えてくれる。

 

低めの天井の下に広がる重厚なフロアーはどことなくグランド・セントラル・ステーションを思い起こさせ、客の会話やスタッフのハキハキとした活気のある声がなんとも心地よいBGMとなる。

 

長いカウンターの存在感

ウェイティングにも使えて、ここでサクッと肉を食べて帰りたくもなる魅惑のバースペースがもたらす華やかさが教える豊かさ。

 

気取り過ぎず、くだけすぎず

 

これこそがアメリカのステーキハウス

 

ウルフギャングスタイル クラブケーキ

アメリカのステーキハウスの前菜といえばクラブケーキ。

むしろ定点観測とも言え、クラブケーキの良し悪しで他のステーキハウスと食べ比べをするのも面白い。

 

スライスしたトマトとオニオンの盛り合わせ

誰もが驚く厚切りのトマトとオニオン。実はこれこそがNYのステーキの最高の付け合せということを声を大にして言いたい!

 

そもそも起源はPeter Luger Steak Houseに遡るが、このトマトとオニオンを美味しく食べるために開発されたのがステーキソースであり、それを肉につけて食べてみたら美味しかったというものなのだ。

 

玉ねぎとトマトを小さく切ってステーキソースをかけて肉とともに口に運ぶ。

すると口の中でミックスされた味は極上のハンバーガーのような、フレッシュ感と芳醇さと野性味すら感じられるWildな味を演出する。

 

いい映画に共通すること。それは名脇役の存在。

ステーキというこれ以上ないシンプルな料理をより華やかにさせるための脇役も抜かり無いのが一流店。

 

ロブスターマックンチーズ、マッシュポテト、クリームスピナッチ

いわばアメリカのおふくろの味をいかにレストランクオリティに高められるのか

その店の実力を推し量れると言っても過言ではない

 

そう、ステーキに向けたこれ以上ない花道であり導火線だ。

 

いよいよ、母艦がやってくる

 

「Sizzling!! Sizzling!!」

 

この声が店の空気を変える

 

940度で熱された極熱の皿にのったステーキが波間をかき分けるがごとく、肉を待つテーブルの下に運ばれていく。

 

それはなにか神々しささえ感じるほどの儀式的瞬間だ

 

我々はついに出会ってしまった

 

これがアメリカ、自由の国アメリカだ

 

28日間熟成されたUSDA PRIMEのポーターハウス、所謂「T BORN」が煙を纏いながらテーブルに到着した。

パイプを加えながら日本に降り立ったマッカーサー元帥を観た時に我々日本人が感じた敗北感と羨望が入り混じった感情は、きっとこんな感じだったのだろう。

 

「憧れ」

 

このステーキを表す日本語はこれしかない

 

我々は「憧れ」に手を伸ばすんだ

 

熱くて火傷しそうな手の届かない場所にある

 

今まで一度も経験したことのない世界が口の中に広がる

 

知っていたはずの、知り尽くしていたはずの世界が更に色深く鮮やかになる

 

噛みしめるごとに溢れてくる肉汁との駆け引き

 

そして残り香を追いかける

 

余韻は悲しいほどにまた新たな出会いを求める

 

だから「憧れ」はいつまでも「憧れ」

 

追い越せないことを嘆くのではなく、追い越さないことの美学を楽しむ。

 

追い越してしまう事こそ「悲劇」であり、追いつけない背中を見続けられる「幸福」を教えてくれる店

 

ウルフギャング・ステーキハウス

 

ここもまた

「本当にあった旨い店」

 

 

ウルフギャング・ステーキハウス 丸の内店

住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 丸の内MY PLAZA 明治生命館 B1F

tel : 050-5571-2086 (予約専用番号)

03-5224-6151 (お問い合わせ専用番号)

営業時間: 11:30~23:30 (L.O.22:30)

無休

予約がとりにくい場合がございます。ご了承ください

photo by Shuya Nakano

 

 

田辺晋太郎

1978年11月5日生まれ、東京出身。2001年5月「Changin’ My Life」のメンバーとしてEMIよりデビュー。その後は音楽プロデューサーとして、俳優の城田優をはじめ海外アーティストなどにも楽曲提供。2012年にはAKB48の渡辺麻友「ヒカルものたち」の作曲を担当しオリコン週間チャート一位を記録。その一方、文化放送「田辺晋太郎あなたへバトンタッチ」TOKYO MX「パ・リーグ主義!」などTV・ラジオでMC・DJといった実績も多方面に富む。MCスタイルは音楽テーマにとどまらず、社会一般に向けた話題など広く対応。また肉マイスターといった肩書きを持ち、監修した宝島社ムック『焼肉の教科書』はシリーズ累計14万部の大ヒットを記録。また2014年10月より一般社団法人 食のコンシェルジュ協会の代表理事に就任、焼肉コンシェルジュ検定を年四回実施するなど幅広く活動

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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