外国人が最初に覚えておくべき日本語で一番便利な言葉とは
突然ですが、外国人が、まず最初に覚えておくと便利な日本語、いわば日本語で一番便利な言葉とは、一体どんな言葉なのか思い浮かぶでしょうか。本書『もう一度学ぶ日本語』の著者であり、普段から外国人に日本語を教えているという、長尾昭子さんとデイビッド・セインさんは、その便利な言葉は「どうも」だといいます。
「こんにちは」「さようなら」「はじめまして」「よろしくお願いします」といった、いくつもの意味を兼ね備えた「どうも」という言葉は、とっさの会話で何か言わなければならないときに、便利な日本語なのだとか。
本書は、長尾さんとセインさんのお二人が日本語を教えていくなかで改めて気付かされた日本語の魅力や便利さ、そして日本人自身も使いこなせていないと感じる言葉に焦点を当て、正しい用法やその語源を紐解いていきます。
日本人自身も意味を間違えてとらえていたり、うまく使いこなせていない紛らわしい言葉—-たとえば、そのひとつとして注目されるのは「結構です」。
イエスなのかノーなのかはっきりとしない、この「結構です」という言葉を整理すると、「Wonderful.」「No problem.」「No, thank you.」「Quite.」という、4つの意味があるのだと長尾さんは指摘します。
順にみていくと、「結構なお住まい」「結構なお品」というように、主に名詞にかかることで、ほめる意味をもつ「結構」。続いて「何でも結構です」といったように、大丈夫という意味で用いられる「結構」。そして「もう充分、たくさん」という意味で使われる「結構」。最後に「かなり、思った以上に」というニュアンスを含む「結構」。もともと中国においては、建物の構造や文章の構成など、物事の組み立て方を意味する言葉であった「結構」ですが、日本ではその示す意味が広がったことがわかります。
あるいは「さわり」という言葉。
その使い方として、「歌の最初のさわり部分」といったように、「出だし部分」の意味で用いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、この使い方は誤用。「さわり」とは、義太夫節の一番大事な部分を示す用語であり、ゆえに歌であるならサビ部分、映画や小説ならばクライマックス部分を指す言葉なのだといいます。
さらに「しおどき」という言葉。こちらも「引退のしおどき」といったように、物事の終わりを示す言葉だととらえて用いている方も多いのではないでしょうか。しかし、これもまた誤用。正しくは、「物事を始めたり、やめたりするのに適当な時期」という、チャンスと同じ意味をもつ言葉。そのため、マイナスの事柄には使わないのだといいます。
日本語を母国語とする者であっても誤用しがちな言葉や、ニュアンスの複雑さがもたらす日本語ならではの魅力と奥深さ。普段何気なく使っている、本書で紹介される言葉のなかにも、意外な発見があるかもしれません。
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