インターネットがつまらなくなった理由(散るろぐ)

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インターネットがつまらなくなった理由(散るろぐ)

今回はチルドさんのブログ『散るろぐ』からご寄稿いただきました。
※この記事は2015年05月02日に書かれたものです。

インターネットがつまらなくなった理由(散るろぐ)

こんちは。ライターのチルドです。

きのうの夜は、インターネットも見なくて、すぐに眠ってしまった。疲れていたのかな。夢さえも見る余地がないほどに、とても深い眠りだった。

翌朝、目が覚めてスマホの電源を入れた。そしてインターネットに接続した。これから始まる憂鬱な現実へ立ち向かうための儀式。

よく眠ったせいか、いつもよりディスプレイが鮮明に見えた。混沌としていた頭のなかもほどよく整理されて意識もクリアだ。

その瞬間、散らかっていた思考が一気に整理されて、巨大な壁画が誕生した。独立した断片があるべき場所に収まったって感じだった。

失われたネットスラング

僕たちは、いつの頃からか、ネットスラングを使わなくなった。日常生活では使わない、いわゆるネット民だけに通じる共通言語。

言葉は文化だ。その土地、その場所に根ざした僕たちの歴史。それが、いつの間にか失われて、誰もが同じ言語をしゃべるようになった。

その特徴はキーワードを強く発音すること。人々は街で誰かに出合うと必ず自分の主張を伝える。それは「格安SIMカード!」だったり「カードローン!!」だったり「オススメのランキング100!」だったりする。

インターネットでは、誰もが自分の存在を証明するために、グーグル語を話すようになった。まるで、それだけが存在理由とでも言うかのように。

誰が為に文を書く

役に立つ記事ってなんだろう。ブックオフに行けば、ひと山いくらで売っている、自己啓発のことかな。

ウェブコンテンツは、限りなくテレビ的な物になった。ためしてガッテンがキラーコンテンツになり、テレビ企画の素人パクリが垂れ流されている。

インターネットの描いてみせた理想って、とても小さい現実だった。イノベーションなんかじゃなく、ただの持ち運べる小型テレビ。

そこに見えてくる人間像は、カードの審査もロクに通らない人々。ガチャに搾取される大衆。便の色が気になる偏食者たち。僕が無視していた広大な「世間」が、インターネットを埋め尽くしていく。

繰り返されるパクリ

インターネットは基本的にフリー(無料)であるべきだと僕は考えている。なぜなら「貧しい環境に生まれた者は一生貧しいまま」という絶望にわずかな希望を与えられるからだ。ゆえに違法コピーとフリーライダーはひとつの皿に盛って議論してはいけない。

その一方で、コンテンツを丸パクしてお金を稼ぐ闇の組織が誕生した。サイバーエージェントである。そこに登場するのが正義のパラディンSUZUKIDESU。「パクリ」と聞くとバキバキに仕上げて突撃していくスタイル。僕は昔から特撮ヒーローが大好きだったから、このシリーズを楽しみにしているんだよ。

毎回、痛快なアクションが繰り広げられるんだけど、これといったカタルシスもなく番組はフェードアウトしていく。そして悪役たちは、捨て台詞を残して去っていくんだ。「うちの客はパクリなんか気にしない。著作権に無知な方がコンバージョン率が高いんだ」と─。

PVバイブレーション

僕が命を削ってインターネットで文章を書くと、決まって言われてきた言葉がある。「お前の文章は自己満足だ。薄汚いおっさんの、醜い自慰だ」と─。

たしかにその通りかもしれない。圧倒的に肯定するよ。だけど最近は、ショーに参加するにはオーナーの前で全裸にならなきゃいけなくなった。そしてPVバイブレーターを埋め込まれるんだ。この装置はキーボードを叩き続けると振動する仕組みになっている。

インターネットがつまらなくなった

歳のせいか、インターネットが億劫になって、過激なことも書けなくなってしまった。この記事もスベっている気がして仕方がない。

つまらなくなったのは、僕のなかのインターネットだけで、みんなには相変わらず最高にゴキゲンなインターネットなのかもしれない。

僕には、ひとり用の退屈なゲームがお似合いなんだろうね。いつでもゲーム。ときどきネット。なにごとも中庸だよね。

ところで伝説のウォークマンの話を知っているかな。荒野に捨てられた、傷だらけのウォークマンだ。あの音を聴きたい。

執筆: この記事はチルドさんのブログ『散るろぐ』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2015年06月03日時点のものです。

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