特段話すことがない相手との会話を円滑にする方法
帰宅途中、近所の人に「お帰りなさい」と言われたとき、「ただいま」と返すのもどこか違和感があるようで、何と返したらよいのか思わず戸惑ってしまった経験はないでしょうか。あるいは、電車の中で隣の人の荷物があたっているとき、角を立てずに注意するには何と言えばよいかわからず、困ってしまったことはないでしょうか。
私たちは日本語を使いこなせているようで、ときにその表現方法について疑問を持つことが少なからずあります。
『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』の著者であり、『三省堂国語辞典』の編纂者である飯間浩明さん。
飯間さんはその職業上、普段から、「話す・聞く・読む・書く」という言語生活から生じてくる問題に意識を向けることが多いといいます。そのため「言語生活全般にわたるさまざまな情報を、私は、活字や放送、インターネット、自分自身の日常生活などの中から見つけ、日々記録」しているそうです。
それらの記録が生かされた本書では、冒頭の問いをはじめ、「話す・聞く・読む・書く」行為を行う際に、私たちが遭遇する問題――「お疲れさま」の正しい使い方、「あやまる」と「わびる」の違い、「大丈夫です」の使い方、よく知らない人との会話の繫ぎ方、人前でうまく話す方法、分かりやすい文章を書くためのコツといったものまで、それぞれの場合に応じた役立つ解決策が綴られていきます。
たとえば、電車の中などで、顔だけは知っているけれども、あまりよく知らない人と遭遇したとき、何を話したらよいのか話題に困ったというケースは意外と多いもの。
このような場合の解決策として、飯間さんは、相手に質問をすることをすすめます。自分が少しだけ困っていることについて、相手の意見を聞くのだそうです。
使用例としては、「ようやく仕事に区切りがつきまして、旅行にでも出かけようと思ってるところなんですがね、どうも近場でいい所が見つかりません。どこかご存じないでしょうか?」(本書より)といったように。
重過ぎず、かといって天気や最近のニュースのような、あまり気乗りのしない話題ではないため、有意義に時間を共有することができるのだといいます。
言語生活において遭遇する、様々な問題を解決へと導くヒントが散りばめられた本書。円滑なコミュニケーションを求めている方には、大いに参考になるはずです。
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