Album Review:サム・オック『GREY』“天使の歌声”を持つアーティストのマルチな才能が凝縮された新作
“天使の歌声”と称されるアーティストは少なくはないが、本当にその称号に値する人はそう多くはないだろう。最近だと、サム・スミスがその称号を得て世界中から高い評価を受けているが、コリアン・アメリカンのアーティスト、サム・オックも彼に並ぶほどの美しい歌声を持っている。その美声を持つサム・オックは、1年ぶりにリリースしたアルバム『GREY』で、彼の非凡な才能を改めて我々に示した。彼の作る音楽は美しく、柔らかく、聴き心地がとても良い。
サム・オックは、アメリカ・メリーランド州在住の24歳。メリーランド大学でミュージック・テクノロジーを専攻するようになったのを機に、ソロ・アーティストとしての活動を開始。作詞、作曲、プロデュースまで自分で行い、歌はもちろんラップもこなすマルチな才能を持っている。Jazz、Rock、Hip Hopなど幅広い音楽に影響を受けている彼の作る音楽は、ジャンルで語ることができない。ただ、共通して言えることは“ポップ”であるということ。その人気は、アメリカ国内だけでなくアジアでも高いが、日本では彼の作り出すエモーショナルなメロディーで高い支持を得ている。また、あのももいろクローバーZが、2012年に横浜アリーナで行った公演のオープニングやエンディングで、サム・オックの楽曲を使用したこともある。
アルバムは、美しいコーラスワークと壮大なメロディーの「Never Ending」からスタート。サビでは伸びのあるソフトな歌声全開で、彼の魅力が存分に発揮されている1曲だ。この曲は、FM宮崎、FM山口のパワープレイにも選ばれており、アルバムの押し曲の1つであろう。「Crown」と「Possible」の2曲には、女性シンガーのRuth Choがフィーチャリングされている。彼女は、サム・オックに負けず劣らずのスウィート・ボイスを持っており、ジャジーでメロウなサウンドの中で曲に華を添えている。アルバム終盤の「Make Me Smile」では、ラップでJ.Hanが参加しており、アップテンポで2stepのような軽快なトラックの上に、2人の掛け合いが絶妙にマッチし、思わず体が動いてしまう。
また、日本盤にはボーナストラックとして、音楽レーベル“GOON TRAX”の日本人勢よるRemix曲が3曲収録されている。中でも、静岡県沼津出身のサウンドプロデュースユニットre:plusによる「Made for More」のRemixは、晴れた日に散歩しながら聞きたいような1曲。「Made for More」は、『GREY』に収録されている楽曲で、元々のジャジーで爽やかなサウンドは残しつつ、より柔らかな音色にRemixされている。是非、聴き比べていただきたい。
サム・オックが創りだす音楽全体を通じて言えることは、“ポップでありソウルフル”であるということ。彼は、“美メロ”と呼ばれるメロディーを創りだすことができ、それは自身の持つ美声の魅力を最大限に活かすことができる。J-POPファンからコアな音楽ファンまで、1度彼の音楽を聴けばその魅力に心奪われるに違いない。5月8日からは、re:plusと共に名古屋、大阪、渋谷を周る来日ツアーがスタートする。そのパフォーマンスには期待せざる負えない。
text:中谷聡
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