WWEのザ・ミズと重なる。リアリティ番組発の脚本家コンビによるバカホラー佳作『フィースト』
90年代末、リアリティ番組が世界的に流行しましたが、日本では2000年代始めの職業養成・挑戦型番組「ガチンコ!」で、女子プロレスラー養成編(LLPW協力)なんてのも放送されています。
アメリカでも職業挑戦型の流行があり、2001年にはWWEの新人発掘番組「タフイナフ」や、映画作家発掘番組「プロジェクト・グリーンライト(以降、PG)」が登場しました。
このPGはベン・アフレックとマット・デイモンのプロデュースの元、一般公募から監督と脚本家(と脚本)を絞り込み、その勝者と優勝脚本で実際に製作を開始。キャスト選びから撮影、公開までを追うという番組内容。要は「¥マネーの虎」タイプですね。
今回は、PGシーズン3で製作された作品『フィースト』(2005)がお題。のちに『SAW』の4~最終作や『ワナオトコ』シリーズ、最近ではJ・カーペンター御大の『ハロウィン』”再調整版”への起用が報じられた脚本家コンビ、パトリック・メルトン&マーカス・ダンスタンのデビュー作。監督もPGでのオーディションを勝ち抜いたジョン・ギャラガー(『ワナオトコ』など)。
テキサスの荒野の酒場にたまたま集まった老若男女が未知のモンスターに襲われる籠城系スラッシャーホラー……なのですが、ドヤ顔で主人公ぶった男が最初に食われる、という、お約束の展開の裏をかいてくるのが売り。『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に近い空気感のバカ映画です。
ワンロケーション、寄り画が中心の映像から香る低予算感。出演者も微妙にB級揃いで、主要人物のひとりがハードコア・パンクの雄「Black Flag」の4代目ヴォーカル、ヘンリー・ロリンズってレアだなオイ!(※)
しかし、細かいカット割りと速いカメラワーク(目が疲れるけど)はテンポが良く、意外と頑張ってる部分と開き直ったやっつけ感の妙味もB級好きには高評価の模様。怪物「フィースト」の行動はお下劣なグレムリン風味で最高に最低です。
序盤はテンプレに従えば生存率が最も高そうな人物までゴゥトゥヘルしますが、中盤からは『トレマーズ』まがいの籠城戦から、お前そのまま逃げるんかい!という掟破り展開も。
はてさて、冒頭で引き合いに出したWWEの「タフイナフ(以降、TE)」は、候補者同士による共同生活を経て都度、試験で候補者を絞り込み、最終投票で優勝者決定・WWEとの契約発表までを追う番組でした。
PGもTEも夢の実現を追った番組でしたが、PGでのデビュー後、商業的な成功者といえるのは本作のメルトン&ダンストンくらい。TE出身者もWWE所属のまま活躍しているのは、シーズン4の準優勝者ザ・ミズ(マイク・ミザニン)、参加者のライバック(スキップ・シェフィールド)だけ。現実って厳しいネ。
そんなワケで一応、成功作の本作は、ニコラス・ケイジもどきやらミゼット・ルチャコンビやら新キャラがメインの2作目、さらに超能力者やカンフー野郎も出て来る3作目までシリーズ化。下ネタ度(特にゲロ)とSAWっぽさだけ無駄にUPした続編2本ですが、シリーズ完結を見届けたいなら止めはしませんよ!
(文/シングウヤスアキ)
※ 尚、シリーズ全作登場の老バーテンダーは西部劇やホラー映画出演作多数のクルー・ギャラガーですが、この方、監督の実父。さらに1作目のハーレーママ、2・3作目のバイカークイーン役の女優さんは監督の奥様。
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