慶應義塾大学医学部 アトピー性皮膚炎の炎症が起きる仕組みを解明
かゆみや炎症をともない、生活にも支障が起こる疾患として多くの人が悩むアトピー性皮膚炎。
ステロイドホルモンを含んだ軟膏を塗布するなどといった治療法が行われていますが、根本的な治療につながる方法ではないとして議論を呼んできました。
アトピー性皮膚炎自体は、ローマ帝国時代から記録が見られることから、相当昔から存在していたと考えられています。
しかしながら、アトピーの語源が「奇妙な」という言葉にあたることからわかるように、この病気で悩む人は少数でした。近年になって患者が急増した理由については、はっきりした原因がわかっていませんでした。
慶應義塾大学医学部の永尾圭介専任講師(元米国立衛生研究所主任研究員)が、乾燥肌とアトピー性皮膚炎を起こすマウスを人工的に用意して行った実験が22日に公開されました。それによると、皮膚に生息する様々な細菌のバランスがくずれ、炎症を引き起こす黄色ブドウ球菌ほか少数の菌類だけになることによってアトピー性皮膚炎が起こることが判明しました。
細胞の分化や機能を調節するADAM17という酵素を欠損させたマウスを人工的につくると、生後すぐは皮膚が健康なものの、生後6週間後くらいから乾燥肌になり、アトピー性皮膚炎を起こすことがわかっています。このマウスを利用して、健康な皮膚と病変が起きた皮膚を検査。
結果として、健康な皮膚には様々な菌類が生息しているものの、病変を起こすと黄色ブドウ球菌などの病気を引き起こす菌類だけが増えることを明らかになりました。
永尾圭介専任講師は、抗生物質を使って増えすぎた菌類を殺すと、健康な皮膚の上に存在する細菌群と似たような多様性を取り戻し、皮膚炎も改善することがわかったとしています。
現在、アトピー性皮膚炎の主力は、ステロイドホルモンを含む軟膏の塗布が主力となっていますが、今後研究が進めば、体に対する副作用も少なく、より健康的な皮膚を取り戻す治療が可能になるかもしれません。
※写真はイメージ 足成 http://www.ashinari.com/2012/09/28-370801.php より
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