Album Review: Radicalfashion ピアノのさらなる可能性を示唆する未来派ミュージック

Album Review: Radicalfashion ピアノのさらなる可能性を示唆する未来派ミュージック

 変幻自在のクラシカルなピアノを基調に、サウンド・エフェクトが隙間を縫って聞こえてくる。ヨーロピアンな薫りを漂わせながらも、どこか無国籍な響きをまとったユニークな作品が登場した。

 Radicalfashion(ラジカルファッション)は、神戸出身の音楽家Hirohito Iharaによるソロ・プロジェクト。2007年にヘフティ・レコーズから発表したアルバム『Odori』が、ピッチフォークなどの海外メディアで絶賛された。『GARCON』は、なんと8年ぶりとなる2作目である。前作は比較的エッジの効いた印象があったが、今作は洗練度を増している。メインとなるピアノの演奏は、彼が影響を受けたというフランスの印象派から着想を得たと思われる運指や和声が多用され、軽快さとメロディアスな部分が交錯する。昨今の静謐なポスト・クラシカル作品とも一線を画しているのが面白い。パリを拠点に活躍した画家、藤田嗣治に捧げた楽曲があるところなどは、やはりフランスへの憧憬が感じられる。

 しかし、彼の音楽をさらにユニークにしているのが、合間に挿入されるエレクトロニカ的なアプローチ。ピアノという古典的な楽器の音色に浸っている聴き手を、急に異次元へと連れて行ってしまうのだ。また、ピアノ演奏に手拍子を重ねた「Pointillism」や、ミニマル・ミュージックのように多重録音されたピアノのアンサンブルが不思議な「Drum」など、一筋縄ではいかない楽曲が揃っている。ピアノという楽器がまだまだ発展の余地があるということを示唆するような、未来派の音楽といってもいいだろう。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『GARCON』
Radicalfashion
2015/04/22 RELEASE
2,484円(tax incl.)

関連記事リンク(外部サイト)

Album Review: エンリコ・シモネッティ 知る人ぞ知るイタリアの名手のロマンティシズム溢れるピアノ楽曲集
Album Review: ペロタ・チンゴー さらなる可能性を秘める、アルゼンチン音楽界の新星による初の作品集
Album Review: ジョアン・サビア 心地ちよさを追求したアーバンなブラジリアン・サウンド

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. Album Review: Radicalfashion ピアノのさらなる可能性を示唆する未来派ミュージック

Billboard JAPAN

国内唯一の総合シングルチャート“JAPAN HOT100”を発表。国内外のオリジナルエンタメニュースやアーティストインタビューをお届け中!

ウェブサイト: http://www.billboard-japan.com/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。