心地好い春の宵に聴くジミー・クリフのポップでスピリチュアルなライブ。彼のパフォーマンスから元気をもらおう!

心地好い春の宵に聴くジミー・クリフのポップでスピリチュアルなライブ。彼のパフォーマンスから元気をもらおう!

 とにかく昨年の来日公演は大きな衝撃を受けたほど感動したライブだった。

ジミー・クリフ ライブ写真一覧

 ジャマイカン・ミュージックの始祖的スタイルであるナイヤビンギで祝祭的な雰囲気を醸し出しながら始まり、メント~スカ~ブルー・ビート~ロックステディ~ラヴァーズ・ロック~レゲエとジャマイカ音楽の発展をなぞりながら進行し、最後は再びナイヤビンギ・スタイルで終わるという、自らのカルチャーに根ざした実にベテランらしいライブを展開してみせたジミー・クリフ。その彼が去年の5月以来、約1年ぶりに今年も『ビルボードライブ東京』のステージに帰ってきてくれた。

 ジャマイカがイギリスから独立した年でもある1962年にレコード・デビュー。65年、ジャマイカ移民1世としてロンドンに活動拠点を移し、67年に最初のアルバムをリリース。72年にはジャマイカの窮状を全世界に訴えた映画『ハーダー・ゼイ・カム』に主演し、サウンドトラック盤にも参加して一躍有名に。その後もローリング・ストーンズの『ダーティ・ワークス』(86年)に客演したり、93年の映画『クール・ランニング』のサントラにカヴァー曲を提供して大ヒツトしたりと、常にポップ・ミュージックの最前線で活動してきたジミー・クリフ。そんな、まさにレゲエ・シーンの“リヴィング・レジェンド”であるジミーだが、彼のライブはポジティヴなヴァイブレイションに溢れていて、観ているだけで元気になれる。そして感動もできる、実にオーディエンスのハートを射抜くようなステージを披露してくれる。

 ハイ・トーンの美しい声、心に染みこんでくるメロディ、エモーションを身体いっぱいに表現するシンギング・スタイル、そして普遍的なメッセージを歌い込んだ楽曲の数々。そのどれもが、ジミーからでなければ受け取ることができないオリジナリティに満ちているのだから、ライブが感動的なものになるのは必然と言ってもいいだろう。

 「ボンゴマン」で始まった今回のライブも期待を大きく上回るステージで、代表曲の「レゲエ・ナイツ」や「ハーダー・ゼイ・カム」、そして限りなく美しい「メニー・リヴァース・トゥ・クロース」などをたっぷりと聴かせてくれながら、ストーリーのあるパフォーマンスを堪能させてくれた。ポップだけどスピリチュアル――そんなライブだったのだ。

 在英ジャマイカン1世として現在、70歳を目前にしながらも精力的にライブを行い、2世や3世による発展の著しいレゲエ・ミュージックのオーソドックスなスタイルを披露してくれる彼のステージは、今となってはとても貴重なパフォーマンスと言っても差し支えないだろう。

 僕は去年もライブを観てとても感動したが、今年はそれを上回るエネルギーを感じさせる、ジミーのソウルが遺憾なく発揮されたステージになっていたので、友人と一緒に、まさに涙ぐんでしまうほど感激した。彼がどうしてライブにこだわり、世界中を旅しているのか――それが手に取るように伝わってきたからだ。8名のバック・バンドも彼の音楽を熟知し、ピントの合った演奏を繰り広げてくれる。特にメンバーの大半がラスタ・カラーで塗り上げられたパーカッションを手に演奏するナイヤビンギ・スタイルのサウンドは素朴でありながら、どこか妖術的で、聴き手を引きこまずにはいない。ステージが終盤に近づくころには、観ている人の大半が席を立ち、身体を揺すっているのだから、音楽の持つ力を肌で感じさせてくれる内容になっていた。

 さぁ、迷っている暇なんてない! 寒い季節が去って、これから暖かくなるこの時期、一足お先にジミーのレゲエを聴きながら、心地好いリズムを身体に染み込ませて、来るべき太陽の季節に備えるのも楽しい。ラッキーなことに、ライブはまだ東京で15日と16日、大阪で17日にある。さらに18日には川崎クラブチッタで開催される『ビクターロック祭り 番外編』に登場。Special Othersとのツーマン・ライブを行う。

◎公演情報
ビルボードライブ東京
2015年4月14日(火)~16日(木)
ビルボードライブ大阪
2015年4月17日(金)
More Info:http://billboard-live.com

ビクターロック祭り 番外編 【IchigoIchie Join 1 】
Jimmy Cliff × SPECIAL OTHERS
2015年4月18日(土)
More Info:http://clubcitta.co.jp/

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。寒さもしだいに遠退き、心地好い春が到来したこの時期は、眩しいほどの新緑を感じながら甘めのロゼ・ワインをデザートと一緒に味わうのも楽しい。

Photo: Yuma Totsuka

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