エレベーターの『閉』ボタンを押す人は生きるのが下手?

エレベーターの『閉』ボタンを押す人は生きるのが下手?

 あなたはビルのエレベーターに乗った時、すぐに「閉」のボタンを押しますか? それとも、「閉」は押さずに、自然と閉まるのを待っていますか? どこにでもあるエレベーターの「閉」ボタンですが、これを押すか押さないかでは、随分と生き方に違いがあるようです。

 出版プロデューサーとして活躍し、生活経済評論家として新聞、雑誌などで執筆を行う川北義則さんは、自著『「いい加減」なのに、毎日トクしている人「いい人」なのに毎日ソンしている人』の中で、「生きるのが上手な人は、エレベーターの『閉』ボタンを押さない、生きるのが下手な人は、エレベーターの『閉』ボタンをすぐに押す」と指摘しています。

 たしかに「閉」ボタンを押して少しばかり時間を短縮することができます。しかし川北さんは、そうした”時短効果”では大したものは得られず、むしろストレスが増えるのではないかと指摘します。

「早く目的地に着きたいのなら、十分時間の余裕を見て出かければいい。私はいつも約束の時間より十五分か、ときには三十分くらい余裕を見て出かける。そして、途中を急がない」(同書より)

 川北さんは、高速道路を例えに、道中を急いでもそれほど得がないということを説きます。

「高速道路を走ってみればよくわかる。高速道路を走っていると、後ろからビュンビュン飛ばして追い抜いていく車がある。だが、次の料金所に近づくと、ずいぶん前に追い抜いていった車がすぐ前方に見えることがある。10台や20台の車を追い抜いても、目的地に着く頃にはほとんど差はないのだ。それに車をぶっ飛ばせば、事故の危険は格段に高まる。そんなリスクを負うだけの事情のあるときなどめったにないはずだ」(同書より)

 それほど差がないにも関わらず急いでいる車と、それほどの差がないことを知っていて急がない車。余裕のない前者は、事故の可能性を高めており危険です。目的地に急いで行きたい場合は、道中を急ぐのではなく、出発時間を早めたいもの。

 エレベーターでも、「開」や「閉」のボタンを必死になって連打して、一体どれほどの時間が確保できているのでしょう。逆に、すぐに扉が閉じないことにイライラし、閉じる直前に「開」が押されて新たに人が入ってきてイライラ……。ほんの僅かな時間を確保するために、自身はストレスをため込み、他の利用者にも嫌な思いをさせてしまう。確かに生き方下手と言えるのかもしれません。

「都会には都会の過ごし方がある。だが、心の余裕を持ちたかったら、できるだけ、エレベーターの開閉ボタンを押さないようにしてみたらどうか。エレベーターは黙って乗れば自然にドアは開いたり、閉まったりする。せめてそれを待つくらいの余裕のある都会人でありたい。実際にそれを実行するだけで心にゆとりが出てくるはずだ」(同書より)

 今まで、当然のようにエレベーターの「閉」ボタンを押していた人。これから乗るエレベーターは、「閉」ボタンを押さずに、心によとりを持って、少しだけ待ってみてはいかがでしょうか。

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