蒙古タンメン中本はなぜうまいのか?(Cooking Maniac)

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蒙古タンメン中本はなぜうまいのか?(Cooking Maniac)

今回はブログ『Cooking Maniac』からご寄稿いただきました。

蒙古タンメン中本はなぜうまいのか?(Cooking Maniac)

蒙古タンメン中本・・・
辛いラーメンを売りにするラーメン屋は数あれど、いまだに辛いラーメン界のトップを走り続け、他店の追従を許さない圧倒的な個性!!
もちろんおれも大好きで、よく北極やら、冷やし味噌やら食って、ひぃひぃ言いながら汗だくになって、ティッシュをハンカチ代わりに汗を拭き、隣席のカップル客の興を濁したものでした。

元々激辛料理は大好きで、ラーメンも大好きなので、色々な店で辛いラーメンを食べてきたのだが、中本だけが突出している。
それはなぜだろう?

前回の記事、【二郎はなぜうまいのか?】
「【二郎はなぜうまいか?】第一部 ~麺~」 2015年03月17日 『Cooking Maniac』
http://cookingmaniac.net/archives/24889182.html

「【二郎がなぜうまいか?】第二部 ~スープ~」 2015年03月18日 『Cooking Maniac』
http://cookingmaniac.net/archives/24964166.html

「【二郎がなぜうまいか?】第三部 ~具~」 2015年03月19日 『Cooking Maniac』
http://cookingmaniac.net/archives/25045533.html

「【二郎がなぜうまいか?】第四部 ~総括~」 2015年03月20日 『Cooking Maniac』
http://cookingmaniac.net/archives/25122522.html

で、社会現象を起こしかけ、いつTVの記者達が家に押しかけてくるか分からず怯えていた、そのおれが中本のおいしさをCooking Maniac流に科学的に説明していきましょう。

蒙古タンメン中本はなぜうまいのか?(Cooking Maniac)

[辛い×旨い]

中本では、”辛くて旨い”みたいな”辛旨”をうたっていますが、正にココに中本のおいしさのポイントが集約されていると思う。
というのがですね、中本のラーメンは本当に”辛くて旨い”んですよ。
どーいうこっちゃ!?って感じですよね。ちゃんと説明します。

(1) 唐辛子に含まれる旨味成分

実は、唐辛子というのは物凄い旨味成分を含んでいる。
しかもその旨味成分は、日本人が大好きな、グルタミン酸。
スコアで言うと・・・

〈グルタミン酸含有量〉
唐辛子:163mg/100g
トマト:232mg/100g

というトマトに迫るスコア!!
これは、本当に驚きで、トマトっていうのは多量のグルタミン酸を含んでいる食べもので、世界中でトマトソースの食べ物が多いのも、グルタミン酸が好まれているからなんですよ。
他の例だと、コンソメスープは[牛のスネ肉(イノシン酸)×トマト(グルタミン酸)]といった形でトマトのグルタミン酸が有効活用されている。
そのグルタミン酸界のエースに追従する唐辛子は隠れたダークホース的な存在。

そんな旨味をたっぷり含んだ唐辛子を中本では大量に使う。親の仇のごとく使う。
しかし、唐辛子を大量に使うといっても大量に使うと辛くなりすぎる。
唐辛子の量の目安として、コンビ二・スーパーで売ってる赤いキャップのついた小瓶。
あれが15g。
あれを全部一杯のラーメンに入れたら辛すぎる。
そこで、実は工夫がある。
それは・・・
「寒い土地で収穫された唐辛子を使う!」
です!なんと唐辛子は、栽培される土地の温度によって辛味・甘味のバランスが変わる作物であり、

暑い地域で育てられた唐辛子:辛味が強く、甘味が弱い→シャープな辛味
寒い地域で育てられた唐辛子:辛味が弱く、甘味が強い→やわらかい辛味と、甘味を感じる

となる。
だから、ハバネロとかは中南米とかの熱帯で育てられる唐辛子だし、韓国唐辛子は、日本よりも寒い地域で育てられるから鷹の爪(日本産唐辛子)よりマイルド。
つまり、韓国唐辛子であれば、大量に使用しても辛味を抑えつつ、旨味をたっぷりスープに溶かし込むことができる。

中本では唐辛子をたっぷり使うゆえに、凄く唐辛子を研究しているのだと思う。
予想されるのは韓国産唐辛子系の辛味が抑えられていて、旨味の強い唐辛子をたっぷり使用して、大量の旨味成分をスープに溶かしこんでいるのだろう。
そこが、辛さに比例して、”旨さ”が強くなる秘密だ。

(2) 味噌の旨味

中本は、スープの味のベースを醤油でなく、味噌で味をつけている。
ここにも、”辛旨”の秘密が隠されている。

味噌っていうのは、かなりたっぷりの旨味を含んだ調味料なのだ。
しかも、再び登場、グルタミン酸。
そのスコアの違いを醤油と比べてみてほしい。

〈グルタミン酸含有量〉
豆味噌:3300mg/100g
米味噌:2200mg/100g
醤油(こいくち):1600mg/100g
醤油(うすくち):1300mg/100g

って感じで、かなりの開きがある。
しかも、味噌は醤油よりも塩分含有量が少ないから、同じ塩分濃度を目指したときに味噌の方が多く使うことになり、旨味成分がさらにプラスされることになる。

唐辛子の旨味+味噌の旨味

によって、さらに旨味を増強させて”辛旨”の輪郭をはっきりさせているのだろう。

(3) 旨味を支え、辛味をマスキングする”甘味”

中本のスープは、実は”甘味”を非常にうまく活用しているラーメンでもある。
“甘味”というのは、料理の上で非常に魅力的な要素であり、味のバランスを整えるのに大役を担っている。
今回の中本のケースに当てはめると、

・旨味のボディの増強
・辛味のマスキング

という役割を担っている。
旨味というのは、味覚の認識上、甘味に少し似ている部分があり、甘味が加わることで、旨味のボディを厚くし”コクのある旨味”を作り出す。
化学調味料をそのままなめるとマズイが、醤油に入れてからなめると美味しく感じるのも、この原理が働いている。
そして、辛味というのは、甘辛という言葉があるくらいに甘味と相性が良く、辛味の尖りすぎている刺激を、甘味が和らげてくれる。

では、中本の”甘味”はどこから来ているか?

・唐辛子の甘味
唐辛子というのは、実は甘味も多く含んでいる食べ物である。
以下のスコアを見ていただきたい。

〈ブリックス糖度〉
唐辛子:8~9
トマト:トマト5~7

ちなみに、みかんとかで[ブリックス糖度:10~]が一般に流通しているものなので、かなり唐辛子が実は甘味を含んだ食べ物であることがお分かりいただけただろうか。

・野菜の甘味
中本では、調理工程で野菜を炒めて、スープを入れ、野菜がクタクタになるまで煮込んでいる。
その工程で、野菜に含まれる甘味成分がスープに溶出する。
この野菜の甘味成分のスコアについては計算することが出来ないが、しゃぶしゃぶを食べた後の鍋のスープの甘さを思い出してほしい。かなりの甘さを感じるはずだ。あれだけの甘さを野菜は含んでいて、その甘味を意図的にスープに溶かしこんでいるのだ。

こうして、[唐辛子の甘さ+野菜の甘さ]によって、旨味と辛味とのバランスをとっているのだ。

[辛さの快感]

今まで、辛さと旨さの関連性や、辛味のマスキングなどについて説明してきたが、それでも中本のラーメンは本当に辛い。
特に北極とかになるととんでもなく辛い。
しかし、その辛さが中本の中毒性の要因なのだ。

その説明をしよう。

とんでもなく辛いラーメンを食べた時に、通常であれば拒絶反応を示す。
しかし、中本のラーメンは”旨味が強い”ので、その旨味を求めてどんどん食べ進めてしまう。
そうして、どんどん「辛味=痛み」が蓄積されていくと、脳内でアドレナリンが大量に出て興奮状態になる。
そうなると、それを抑える脳内物質である「エンドルフィン(モルヒネと同等と言われるホルモン)」も分泌され、幸福感を感じ、快感になり、中毒化してしまう。

だから、中本にハマる人はどんどん辛いラーメンに挑戦していって、より快感を感じ、中本の虜になってしまうのだ。
な、なんと恐ろしいラーメン!!
そして、辛さのレベルを段階的に設定することで、達成感まで感じさせようとするシステム!!

中本とは、巧みに計算された旨味のデザインと、脳内物質の分泌までも狙った恐ろしいラーメンなのであった!!

「TOKYO OIL SHOCK」 『facebook』
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執筆: この記事はブログ『Cooking Maniac』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2015年04月01日時点のものです。

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