「著作権公訴を義務付けず」報道は誤報!? ”TPP著作権条項に関する緊急声明”政府に提出

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クリエイティブ・コモンズ・ジャパンや一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)などが中心になっているTPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム(thinkTPPIP)は、「TPP著作権条項に関する緊急声明」に70団体・283名の賛同を集めて政府に提出、西村康稔内閣府副大臣などの政府関係者とTPPの交渉内容について協議したことを発表しました。

※参考 非親告罪化導入を憂慮… コミックマーケット準備会がTPP協定交渉についてのコメント公開
https://getnews.jp/archives/843163 [リンク]

2015年3月13日の記者会見には、thinkTPPIPを呼びかけているジャーナリストの津田大介氏、弁護士の福井健策氏、国際大学GLOCOM准教授、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの渡辺智暁氏のほか、劇作家の平田オリザ氏、漫画家の赤松健氏、ドワンゴ会長室室長の甲斐顕一氏、青空文庫の大久保ゆう氏、田村善之北海道大学大学院法学研究科教授、中村伊知哉慶応義塾大学メディアデザイン研究科教授が出席。TPP交渉の妥結案からの知財条項の除外や十分な情報公開を求めました。

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会見では、福井弁護士がTPPにおける知財条項の問題点を整理。「米国は知財条項を最重要のテーマと位置づけている。ITやコンテンツは彼らの最大の輸出産業」と語り、2013年のアメリカの海外特許・著作権使用料は15.6兆円で年10.9兆円の黒字で、対する日本は6200億円の赤字となっていることを指摘。「世界的な知の偏在に力を貸すことになるのではないか」とします。
また、著作権保護期間が公開や作者の死後から50年後(映画は公開後70年)のものが、アメリカなどに合わせて原則70年後になることについては、孤児著作物の権利処理が困難になる可能性を指摘。非親告罪化についても、二次創作やパロディ、企業文化活動の萎縮につながる懸念があるといいます。

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声明では、TPP交渉終盤を迎えて協議の密室性が高まっており「政府説明会はほとんど”説明できないことの説明”に終始している」と問題視。津田氏も「生煮えの状態で交渉を見守るしかない」と述べて情報の公開を求めました。
一方で、2015年2月にはNHKなどで「著作保護期間70年・非親告罪化の方向性で調整」と報じられた後、2015年3月12日には共同通信から「著作権公訴を義務付けず」という一報が流れるなど、情報が錯綜しています。
政府への提出に同席した赤松氏によると、共同の報道は政府から「まだ何も決まっていない」と明確に否定されたといい、交渉の透明化が重要だとします。
また、内閣府知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会で会長を務める中村氏は、知財関連やクールジャパン関連の部局に情報の報告や共有について「まったくない。知財本部等でTPP交渉をどうすべきか、議論になったことはあるが深まっていない」と述べています。

thinkTPPIPでは、今後も4月中旬まで賛同する団体や個人を募り、フォーラムの開催も検討するとのこと。
福井氏が「TPPの知財条項の注目度は低い。何か事態を変えるにはまったく足りない。国外の密室で誰かが作った条項に従う未来を想像してほしい。嫌だと思うならば声を上げて下さい」と呼びかけ、津田氏が「今は問題を知ってもらうことが大事。その上で(TPP知財条項の内容への)反対の声が上がることを期待したい」と話しているように、2015年6月の合意を目指しているといわれるTPP交渉に影響を与えるためには問題意識の広がることが必須といえそうです。

※会見のアーカイブは『ニコニコ生放送』でタイムシフト視聴が可能
http://live.nicovideo.jp/watch/lv212939795 [リンク]

TPP知財条項への緊急声明案の公開と、ご意見・賛同の呼びかけ(thinkTPPIP)
http://thinktppip.jp/?p=519 [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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