株式会社日本レジストリサービスさんへの公開質問です

熊谷正寿さんのブログ

今回は熊谷正寿さんのブログ『【クマガイコム】GMOインターネット社長 熊谷正寿のブログ』からご寄稿いただきました。

株式会社日本レジストリサービスさんへの公開質問です

皆さん、こんにちは。

僕は現在「.jp」を独占的に管理している「株式会社日本レジストリサービス(以下JPRS)」さんの判断と行動に大きな不安を持っています。

今の「.jpドメインの卸値段」や、これから予定している行動が日本のインターネットの未来」にマイナスだと思うのです。

URL:http://jprs.co.jp/

皆さん、ご一緒に考えて頂けないでしょうか?

JPRSは日本国政府の推薦を得て、独占的に「.jp」の卸業と管理をされています。

「.jp」は累計で118万ドメイン。新規登録に加え、毎年の更新料金も定期的に入るので年商約35億円。税引き後の利益は3億円以上。利益剰余金は20億円を超えています。そして、現在の経営陣を含む株主(当社も少数株主です)に毎年約10%の配当しています。そして都内の立派なビルにオフィスを構えられてます。

一方、日本の.jpドメインは世界で最も普及している国別ドメインの5倍以上の値段です。

なぜ億単位の利益が出ているのに、値下げを通じたユーザー還元重視ではなく、配当を通じて株主還元しているのか?どうも理解に苦しみます。

もしもJPRSのような独占企業が、一部の人たちの利益を目的に価格戦略を決め、結果として私達が諸外国の国民よりも割高に.jpドメインを買わされていたら?

我々は、日本で一番たくさんドメインを販売しています。だから値段と販売数の関係を知っています。

値段が高いドメインは売れません。

事実 ドイツのドメイン.de 登録数は1400万件。日本の10倍以上。世界の国別ドメイン数は日本は16位。人口や経済力から比べて明らかに少ないです。

ドメインの数=webの数=ネットの情報量です。

つまり、.jpドメインが値段が高いので日本のインターネットの情報量に大きなマイナスになっているのではないかと憂いてます。

      ★  ★  ★

それだけではありません。これからJPRSが行おうとしている下記の内容は、健全な競争を行っているドメインの販売マーケットにおいて、その独占的な立場を利用し、これまで「.jp」の成長を支えてきた事業者に対して競合しようとする行為なのです。

僕は、他人の人々の判断や行動に口をはさんだり、意見することは好きではありません。ましてやこのような内容をブログに載せるのは本意ではありません。

しかしながら、質問をしようとJPRSの東田社長にお電話したのですが、忙しいのでお電話すらも2週間先でないと無理とのことでした。

止むを得ず、ニッポンのインターネットの未来を憂い、公開質問という形でJPRSさん、そして世論に問いたいと思います。

以下、詳細です。

      ★  ★  ★

株式会社日本レジストリサービス(以下JPRS)は2000年12月の設立以来、JPNICからの業務委託を受けて日本のccTLD(国別トップレベルドメイン)であるJPドメインの管理を担い、そして2002年からは日本国政府からの正式な推薦を受けてICANNとの契約を締結し、「.jp」の管理を行っています。この「.jp」ドメイン名は数百の国内の指定事業者を通じて販売され、JPRS自らもJPダイレクトというサービスを通じて一般に販売しています。

このccTLDは国ごとに割り当てられたドメイン名であり、その管理業務を任されるということは、国民の共有財産であるドメイン名の管理責任と、独占的な卸販売権を与えられたことに等しくなります。

先日、10月19日に開催されたJPRSの指定事業者向けミーティングにおいて、JPRSは指定事業者に対して「.com」や「.net」などのgTLD(分野別トップレベルドメイン)の販売を開始すると公式発表されました。このgTLDはICANNの定める条件に則り、ICANNから認められた事業者だけが公認レジストラとして販売を許されるもので、これまで日本国内では10社を超える事業者がICANNからの公認を得てgTLDの販売を行ってきました。

ここで、私の考えるJPRSによるgTLD販売について問題点を挙げさせていただきます。

・JPRSは国民の共有財産である「.jp」の独占的な立場を利用してgTLDの販売を行なおうとしている

・JPRSによるgTLDの販売は、JPRSが自ら掲げる「JPドメイン名とDNS関連技術を通して、社会に貢献する」という企業理念を大きく逸脱し、これまで「.jp」の普及に努めてきた指定事業者に対して競合となる動きである。

・gTLDの販売は「.jp」の普及促進に相反する営業活動とも言える。

JPRSに「.jp」の管理が移管された際に、郵政省からIANAに対して送られた書簡の中では、「JPRS has been established against a backdrop of sweeping changes to the environment surrounding the .jp top level domain such as rapid Internet development and the intensification of competition within Japan between the .jp top level domain and gTLDs such as.com.」という記載があり、そもそもJPRSはgTLDを「.jp」の競合と認識し、「.jp」の成長を促進するために設立された会社であると捉えられます。

・JPRSは関係各所や主要パートナーに事前の相談をせずICANN公認レジストラの 資格を取得し、それを公開すらしなかった。

JPRSは昨年2009年の11月にICANN公認レジストラの資格を取得した際には、これに関する発表を一切行いませんでした。そして、ICANN関係者からの情報でこの事実を知った我々のような事業者からの問合せに対し、このICANN公認レジストラの資格取得は「他のgTLDレジストリのシステムのしくみやポリシーに関する研究」が目的であり、「今後gTLDの販売を行う予定はない」と説明されていました。

私自身も今年の3月5日に弊社に東田社長が当社にいらっしゃった際、この件を確認しましたが、「あくまで研究と情報収集のためです。販売は考えていません」とキッパリおっしゃいました。

また、この件については「.jp」の公平性および中立性を担保する仕組みとして設立された組織であるJPドメイン名諮問委員会においては事前の議論、または事後の報告が行われた記録が公開されていません。また、JPNICの理事会においてもこの件に関する報告が行われた記録は、我々の知る限りでは公開されていません。

ICANNがJPRSとの契約を締結した際に、日本国政府とICANNが交わした書簡の中では、日本国政府とJPNICが協力して日本のccTLDの公共性確保を行う旨、記載されています。しかし、この一連の動きについてJPRSは総務省とJPNICに対してしかるべき報告を行い、理解を得てきたのでしょうか?

現状におけるICANNの取り決めの中では、各国のccTLD管理者がgTLDを販売することに関する制限はありません。しかし、JPRSが「.jp」の管理者としての独占的な立場を利用してgTLDの販売を行うという今回の動きが、これまで「.jp」の成長を支えてきた指定事業者に対して競合となり、JPRSが自らの利益のためにこの様な形で自らの事業を推していく姿勢に対して私は大きな疑念を隠せま
せん。

JPRSの経営陣には、この事態について深くご検討いただき、日本のドメイン普及(≒日本のインターネットの普及)の為に適切かつ聡明な意思決定をしていただくよう切にお願い申し上げます。そして、経営陣としてこの意見に対するJPRSとしてのお考えをお聞かせください。

以上

執筆: この記事は熊谷正寿さんのブログ『【クマガイコム】GMOインターネット社長 熊谷正寿のブログ』からご寄稿いただきました。

熊谷さん近影(ゲームやろうぜ発表会場にて)

文責: ガジェット通信

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