マンションの防災力を格段に高める、意外に身近な「7つ道具」とは
30年以内に7割の確率で起きるといわれている首都直下地震。みなさんは自宅でどんな備えをしているだろうか。あるいはマンションにお住まいの方なら、そのマンション(管理組合)でどんな対策が取られているか、ご存じだろうか。今回は、管理会社支店長、および被災マンション理事として、東日本大震災を体験した大京グループの金喜彦さんがすすめるマンションの防災力を高める方法について紹介しよう。「自助」ができてはじめて「共助」が可能に。自分と家族は自分で守る
災害時の考え方としての3つの「助」、「自助」「共助」「公助」があるのをご存じだろうか?
「自助」は自分と自分の家族は自分で守ること、「共助」はマンションや地域の人と相互に助け合うこと、「公助」は区や警察・消防・ライフラインなどの機関による対応活動などを指す。金さんによれば、「一般的に自助:共助:公助の割合は、7:2:1などと言われたりするが、災害が起きた直後数日間においては、実に9:1:0になる」という。
市役所の職員や警察官、マンションの管理会社の人間も実際にはみな被災者。それぞれに自宅や家族の心配があったり、実際に道路にものが倒れていて駆けつけられないということもある。そこで大事になってくるのは、「自分は被害者だ」「誰かが助けてくれる」という意識を取り除き、自分や家族は自分で守るという「自助」の心構え、そして周囲の人々と協力し助け合う「共助」の考え方を持つことなのだ。
【画像1】「自助」「共助」「公助」の連携が必要(画像提供:大京アステージ資料より編集部にて作成)
自助力を高める第一歩は水の用意。1人当たりに必要な水は1日3リットルだという。まずは3リットル×家族分×数日分を用意しよう。
次に自宅の家具・家電の転倒防止策も大事だ。ただ、マンション高層階では地震の揺れで突っ張り棒が外れてしまったケースなどもあるそうだ。転倒防止グッズをしているからと安心せず、寝室には高い家具を置かない、などの対策も考えてほしい。
【画像2】マンション高層階では揺れ幅が大きく、転倒防止の突っ張り棒は役に立たないことも。実際、地震の揺れで突っ張り棒が外れて壁に突き刺さってしまった例もあったそうだ(画像提供:大京アステージ)支援のための知恵がつまった、マンションに備えておくと安心な防災7つ道具
自助が整ってはじめて共助が可能になる。そのベースには「私たちは“被災者”であると同時に“支援者”でもある」という考え方があるそうだ。そして支援(共助)をするためには、そのための知恵や準備も必要となる。金さんがオススメするマンションに備えておきたい道具を紹介しよう。
●マンション(管理組合)で備えておきたい「7つ道具」
1.バール・ハンマー
2.プラベニヤ
3.南京錠・クサリ
4.ホワイトボード
5.テレビの室内アンテナと発電機
6.キーボックス
7.防災マニュアル
それぞれ紹介していこう。“玄関が開かない” “ドアの鍵がかからない”に対応できる救助と防犯グッズ
まずは救助に必要な備えから。扉枠がゆがんで玄関扉が開かなくなった場合に必要なのが「1.バール・ハンマー」。そして震災後の雨(雪)、風を防いだり、防犯対策として有効なのが、「2.プラベニヤ」と「3.南京錠・クサリ」だ。プラベニヤとは引越しなどの際に養生で使われるプラスチック製のシート。
震災後には壁に亀裂が入るなどして、マンションの廊下から部屋が見えてしまったり、玄関の鍵がこわれてしまうこともあるようだ。そこで一時的な応急処置として、マンションの廊下側の壁をプラベニヤで覆ったり、玄関の鍵をクサリと南京錠で施錠できれば、中の居住者も安心して過ごすことができる。
また、7つ道具には入れていないが、バルコニー側のサッシや出窓の鍵が壊れてしまう場合に備えて補助錠もあると便利。震災時・避難時にはバルコニーのパーテーションが破られたり、破損することもあるが、復旧工事は実に1年近くかかったりするので、そんな長期間鍵や窓を放置しておけないし、泥棒などの二次災害は防ぎたい。
【画像3】左上:玄関扉を開けるのに必要なバールとハンマー、右上:プラベニヤによる養生、左下:施錠できなくなった玄関の鍵をクサリと南京錠でカバー、右下:バルコニー側の壊れた鍵に補助錠を設置(画像提供:大京アステージ)「みなさまからの情報をください」このメッセージだけで協力的な雰囲気が
救助、防犯グッズの次に、被災した人々が必要とするもの、それは情報だ。電気・ガス・水道がいつ復旧するのか? といったライフラインの情報をはじめ、地域の店の営業状況などが役に立つ。
あるマンションでは震災翌日の3月12日に「みなさまからの情報をください」「皆さん、助け合い、頑張りましょう」という2つの貼り紙を出した。それだけで多くの情報が入ってくるようになったという。日ごろからコミュニケーションが活発なマンションに限らず、非常時にはそんな声掛け・貼り紙だけでも多くの人が主体的・協力的になる雰囲気が生まれるというのは金さんにとっても大きな気付きだったそうだ。
そして貼り紙の次に有効なのは「4.ホワイトボード」。マンションによくある掲示板では管理組合からの一方的な情報発信になるが、ホワイトボードの場合は住民も書き込めさまざまな情報が寄せられる。例えば、「紙おむつゆずります」「○○のスーパーが営業していた」「部屋の片づけ手伝います」などが書き込まれたという。まさに「共助」を促進するしかけとなる心強い道具といえる。
【画像4】左:掲示板に張られた管理組合からのメッセージ、右:ホワイトボードは住民からの書き込みも活発になる(画像提供:大京アステージ)
全体の災害状況などを知るために「5.テレビの室内アンテナと発電機」があると災害そのもののメディアの情報や政府の対応なども分かるので、お金に余裕があれば用意しておいてほしい。
また、防災備蓄品などを入れておく倉庫の鍵をしまっておくのに便利な「6.キーボックス」。倉庫の鍵を持っている人がマンションにいなかったために、備蓄品を取り出せなかったということを防げる。
「7.防災マニュアル」は、災害時の体制づくりや災害前に確認しておきたいポイントなどをまとめたもの。入居者層や立地、規模など、マンションの特性に見合った内容にしていきたい。
金さんいわく、備えと同様に必要なのは、人と人とのつながり、コミュニティだという。都会のマンションでは隣の人は何する人ぞ? というところも多い。そんなときでも「挨拶」、これだけはぜひやってほしいという。普段から挨拶をしている関係なら非常時の声掛けもよりスムーズになるはずだ。
個人でできる取り組みとして1.自助のための水、2.普段からの挨拶など、一見当たり前のように思える。でも、当たり前のことほど意外とできていないことが多いもの。もしそうならさっそく今日から心がけよう。そしてマンションにお住まいの方々は、今回の7つ道具をきっかけに自分たちの管理するマンションの備えについて話しあってみてほしい。●大京アステージ
HP:http://www.daikyo-astage.co.jp/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/12/09/74420/
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