Googleに「検索結果削除」命令「忘れられる権利」に与える影響
国内初?検索サイトに検索結果の削除命令
検索エンジンで「自分の名前」を検索すると、犯罪を連想させる検索結果が出ることで「現在の生活が脅かされる」として、検索大手Googleに対し、プライバシー権侵害を根拠に検索結果の削除を求める仮処分を申し立てた事件において、東京地裁は、検索結果の一部削除を認める決定を出した、という報道がありました。
具体的には、東京地裁は、特定の個人が削除を求めていた237件のうち、著しい損害を与えるおそれのある122件について、検索結果それぞれの「表題」と、その下に表示される「内容の抜粋」の削除を命じる決定を出したようです。
個々のサイトの削除命令はこれまでも多数認められていますが、検索サイトに対し、検索結果の削除を求めた判断は、おそらく国内初だということです。
「忘れられる権利」を認めたEU司法裁判所の判決が影響
確かに、これまでネット上のプライバシー権侵害や名誉棄損的な表現を削除する場合には、コンテンツプロバイダーを突き止め、その連絡先を確認して…という手間も時間も費用もかかる作業を経て、一つ一つ削除申し入れを行っていました。しかし、検索結果の削除が認められれば、仮にプライバシーを侵害するような表現があったとしても、実際にそこまでたどり着く蓋然性は低くなり、被害者側にとっては極めて有効な対処法といえるでしょう。
今回の裁判所の決定の背景には、今年5月にEU司法裁判所から出された判決があります。それは、いわゆる「忘れられる権利」(ネット上に残っている個人情報について、本人の申立てにより、削除を求める権利)を認めた判決と言われるもので、「検索エンジンも、ネット上に残っている違法な情報は削除しなければならない」という考え方からGoogle側の責任を認めた判決です。
今後、「忘れられる権利」はどこまで認められるか?
この「忘れられる権利」は、そもそもフランスで、ネットにコピーされていた自分の過去の映像の削除を求める原告が、Googleを相手に起こした裁判において勝訴したことを契機に議論が巻き起こり、EUでは、「忘れられる権利」を保障する内容の法案が議会に提出されるに至りました。
今回の決定は、この「忘れられる権利」を正面から認めたとは言えません。しかし、今後も裁判所はこの考え方を拡張させ、例えば単にリンク先に違法な情報があることを根拠にして削除を認めるなど、検索結果の削除範囲を広げていくのかが注目されます。
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