東証「取引時間拡大」に踏み切れないワケ

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東証の取引時間拡大には反対意見が続出

東証「取引時間拡大」に踏み切れないワケ

ASEANでの地位向上と収益の拡大にあたり、東京証券取引所は取引時間の拡大でこの両目標を達成しようとしています。しかし、それより先に東証の活性化に向けた根本的な議論や方向性を決めることが先決だとして、証券会社やファンド関係者等から「取引時間拡大」に対する反対意見が続出しているため、踏み切れないでいるのが現実です。

まず、全国の証券会社50社が「取引時間拡大に伴うシステム投資費用や人件費増をそれによる収益で回収できない」と主張しており、いわゆる投資倒れになると懸念しています。加えて、東証が「取引時間延長の目的と予想効果を示し、それに要する東証と各証券会社の費用増を試算し、その総コストを東証のスリム化や収益増によって捻出することをしていない」という意見もあります。

逆に言えば、東証が「取引時間の延長と同時にコスト削減を実現し、取引関係者の不利益も手数料の引き下げなどで補てんすれば、取引関係者も納得するし、そもそも東証は会員や上場企業の収入に依存しない自力での収益増強策を戦略的に進めるべきである」とも言っているのです。さらに、取引時間を拡大すれば市場が活性化するかどうかの議論は行われず、取引時間を拡大する目的と効果が明確でない、という意見も。過去2回、いずれも昼休み時間に30分の取引時間を延長していますが、売買代金は増加せず、逆に減少しマイナスになっているという事実も踏まえていません。

理解を得られれば、ASEANでの地位向上と収益拡大も?

また、東証は過去、企業情報開示を取引時間中に行えば「株価形成が混乱する」という理由で取引終了後にした経緯があります。にも関わらず、「取引時間を延長して夕方セッション・夜間セッションを増設すれば、その時間内に企業情報を開示しなければならず、なおさら株価形成が混乱するのではないか」という、東証自身の自己矛盾を指摘する声も上がっています。

夜間取引については、既に大手証券会社や外国証券「ダークプール」や「私設取引システム(PTS)」を使って取引所外取引を活発にしており、これから夜間セッションを開設しても、仕事を終えた後の個人投資家が取引に参加するかどうかわかりません。ただし、これについてはネット証券などが個人投資家の新規参入が見込めるとして賛成しており、楽天証券のアンケートでも賛成する声が多数を占めます。しかし、一方で株価形成に疑問を持つ人も多く、これらの人々は取引時間の拡大に反対しています。

以上のことから、東証が取引時間の拡大に踏み切るためには「取引時間拡大の目的と効果を明確にすること」、加えて自助努力でコスト削減を実現し、関係者の不利益も手数料の引き下げなどで対応すれば、取引時間拡大に対する理解は得られそうです。また、株価形成に関しては開示時間を決めれば、昔のように世界の三大マーケットとなる事は無理としても、香港・シンガポールとともに「Asia  including  Japan」として、ASEAN市場で日本の地位を向上し、アジアの投資家を呼び込むことはできるかもしれません。

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