『レナードの朝』原作者が垣間見たロビン・ウィリアムズの心の闇
今月8月11日にその生涯を終えた俳優、ロビン・ウィリアムズ。1992年公開のディズニーアニメ『アラジン』では、ランプの精・青い魔人のジーニーの声を茶目っ気たっぷりに演じるなど、お得意のマシンガントークとモノマネを生かした役柄の印象が強いロビンですが、意外なことに医師役を演じることも多く、その数は5回以上なのだとか。1997年『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の精神分析医役ではアカデミー賞助演男優賞に輝き、1998年『パッチ・アダムス』では実在の医師役を演じています。
ロバート・デ・ニーロが演じた、嗜眠性障害(脳炎後遺症)という難病にかかった青年・レナード役が有名な映画『レナードの朝』(1990年公開)ですが、この作品でロビンは誠実な人柄で患者と心を通わせていく医師、マルコム・セイヤーを演じていました。当時のロビンについて興味深い記述を残している人物がいます。
その人物こそ、『レナードの朝』原作者で医師でもあった、オリバー・サックス氏。
氏は、ロビン演じるマルコム医師のモデルとなった人物でもあります。原作本の第四章”映画になった『レナードの朝』”で、映画の役作りのためサックス氏の患者の病室を訪れたロビンについて、以下のように描写しています。
「その帰りみち、クルマの中でロビンはいきなり病室の喧噪を再現する信じられないような一人芝居をはじめた。ひとりひとりの声を真似しながら、完璧な正確さをもって。およそ信じられない聴きものだった」
ロビンは患者達の様態をほんの数分見ただけで、一瞬ですべて捉えて、まるで患者本人が乗り移ったかのように即興で再現して見せたと言うのです。サックス氏によれば、ロビンにとって”真似”は演技の第一段階。演技の対象を瞬時に観察し再現した上で、自分の人間性を吹き込み、オリジナリティを持った役作りへと深化させているのだろうと分析しています。
まるで『ガラスの仮面』の北島マヤばりの演技の天才ぶりですが、なんの前触れもなしに突然モノマネを始めるなんて、ちょっと常軌を逸した行動と言えなくもありません。実は、ロビンは長年にわたりアルコール依存と、極度の鬱状態に苦しんでいました。死因も自殺の可能性が高いとされています。サックス氏が垣間見たのは、ともすれば死へと向かいかねない不安定な精神状態だったのかもしれません。改めて、シリアスな役からユーモラスな役まで幅広く演じた名優・ロビンの死が惜しまれてなりません。
【関連リンク】
名優ロビン・ウィリアムズ、コメディー演技の裏で見せた影
http://www.afpbb.com/articles/-/3022908
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