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パナソニックの年功制廃止は英断か愚行か

パナソニック、年功要素を給与体系から廃止する方針

パナソニックの年功制廃止は英断か愚行か

パナソニックは、平成27年4月から全社員を対象として、年齢に応じて支給額が上昇する年功要素を給与体系から廃止する方針を固め、労働組合との協議に入ったそうです。「Japan as No.1」(1979)の著者、アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲル氏は、戦後日本の高度経済成長の要因は、「年功序列賃金」「終身雇用」「労使協調」による賃金格差の小ささ、長期的な利益の重視であると説き、日本的経営を高く評価しました。

終身雇用を前提としている年功制のメリットとして、次の4点が挙げられます。
①長期的な人材育成。離職率の抑制。企業が蓄積してきた知的財産と熟練労働者の流出回避
②組織に対する忠誠心やロイヤリティの醸成
③社員の連帯感が強くなる。組織単位での業務遂行が行いやすい
④人事管理のしやすさ

年功制は、急激な変化やリスクを好まず、「寄らば大樹」という日本人の気質にも合ったシステムでした。

バブル崩壊後、年功制の弊害が叫ばれるも成果主義は次々に失敗

しかし、バブル経済崩壊後からの「失われた20年」で、企業全体の成長が鈍化し、これまで最適と考えられていた年功制による人件費が経営を圧迫し始めました。年功制は、成長を大前提として成立するシステム。年功制のデメリットは、次の2点が挙げられます。
①企業の原資に見合った賃金を、個人の能力や成果に合わせて支給することができない
②企業に貢献をした従業員を適切に報いることができない

貢献と報酬のバランスがとれていない企業が、従業員に適切なインセンティブを与えることができないのは明白です。こうして、年功制の弊害が叫ばれるようになりましたが、1993年に日本企業でいち早く年功制を廃止し成果主義を導入した富士通を筆頭にどの企業も失敗し、10年と経たずに軌道修正を余儀なくされました。その理由として職場の環境悪化、人材育成の失敗などが指摘されています。

雇用や待遇の安定が満たされた上で、成果への欲求が湧き上がる

アメリカの心理学者マズローは、人の欲求を5段階に分け、人はそれぞれ下位の欲求が満たされると、その上の欲求の充足を目指すという欲求段階説を唱えました。下から順に、「①生理的欲求」→「②安全の欲求」→「③帰属の欲求」→「④自我の欲求」→「⑤自己実現の欲求」という5段階のピラミッドのように構成されていています。つまり、人は「雇用や待遇の安定(②安全の欲求)」がしっかりと満たされた上で初めて、より高い欲求「評価されたい(④自我の欲求)」「もっと良い報酬を得たい(⑤自己実現の欲求)」が湧き上がるのです。

パナソニック創業者の松下幸之助氏は、「よき人を擁する事業は繁栄する」と述べ、モノを作る前にまず人を作る「企業は人なり」という経営理念の持ち主でした。企業の成長は人で左右されると断言できます。形だけ年功制を廃止するのではなく、事前に年功制に変わる新しい評価システムが従業員に受け入れられる組織文化土壌を作っておくこと。人材育成に「成果」を与えること。今後のパナソニックやソニーの年功制廃止の成否は、かつて日本に成果主義が根付かなかった失敗の要因から学ぶことに尽きるのではないでしょうか。

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