子どもに必要な「こころ」の教育

最優先すべきなのは、子どもの「こころ」を見つめること

子どもに必要な「こころ」の教育

長崎県佐世保市の高校1年生の女子生徒が同級生を殺害したとして逮捕された事件は、犯行の計画性や残虐性などで日本中の注目を集めました。佐世保市では、2004年に小学6年生の女児が同級生を殺害する事件が起きて以来、市内の小中学校で命の尊さを学ぶ取り組みを続けてきたそうです。それでも悲劇は繰り返されてしまった現状を踏まえ、今一度、子どもにとって必要な「こころ」の教育について考えてみましょう。

語る人によってさまざまな意見があると思いますが、思春期・青年期の心の問題に携わってきた立場からすると、子どもに必要とされる「こころ」の教育はただ一つ。何よりも最優先すべきなのは、子どもの「こころ」を見つめることです。大人は子どもを自立させ、幸せな人生を送ってほしいと思いながら教育します。しかし、その教育方法は「学校にさえ行っていれば」「塾にさえ入れておけば」「親の言うことさえ聞いてくれれば」といった調子で、型にはまった行動ができていれば安心する保護者がほとんどです。子どものことを見ているようで、そこには子どもの「こころ」を見つめる視点がないような気がします。

「こころ」を見つめると、子どもの心に基本的安心感が芽生える

では、子どもの心を見つめるとはどういうことでしょうか。それは、子どもの心に基本的安心感が形成され、本当の自己が芽生えてきているかどうかが判断材料になります。基本的安心感というのは幼少時に形成されるものですが、存在そのものを愛し、受け入れるような関わりによって生まれるものです。悪いことをすれば注意しますし、成績が悪ければ頑張るよう励まします。これは、子どもの行動を正そうとして行う教育です。しかし、もし子どもの「こころ」を見つめるならば、そこにもう一歩踏み込んだ関わりを持つことが必要です。

例えば、「悪いことは悪いことでダメだけど、あなたという子どもがいるだけで私たちは幸せよ」「努力していい成績を収めるのはすばらしいことだけど、成績が悪くても耐えられる勇気を持つことができたら、それもすごいことだよ」など、ありのままの子どもを受け入れているというメッセージを送ってあげることが、「こころ」を見つめる関わりです。こうしたメッセージを受け取った子どもの心の中には、基本的安心感が芽生えます。基本的安心感のある子どもはいい意味で自信を持ち、一時的に素行が乱れることはあっても、周囲のかかわりに対して素直に耳を傾けることができ、行動を修正することができます。決して度が外れた行動を取ることはありません。

大人はみんな、子どものためを思って行動しています。しかし、大人自身が不安なため、子どもの行動だけを修正しようとしていないか。もう一度、自分自身を振り返り、子どもの「こころ」を見つめるという視点で見直してみることが大切だと思います。

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