未払い賃金に科せられるペナルティ

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刑事上では、懲役や罰金などのペナルティが

未払い賃金に科せられるペナルティ

先日、中華料理店チェーン「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する王将フードサービスが、従業員923人に対して計2億5500万円の未払い賃金があったと発表しました。ひとり当たり約27万円です。労基署から是正指導があって、それをきっかけに行った社内調査の結果、判明したといいます。今回は、未払い賃金を巡るペナルティーについて説明します。

■刑事的ペナルティ
まず、刑事上のペナルティとして罰則の適用があります。労働基準法119条、120条では、賃金の支払(同24条)、割増賃金(同37条)の違反について罰則を設けており、懲役や罰金が科せられます。

ただ罰則の適用は、よほど悪質なケースでない限りほとんどないのが実情と思われます。というのも、罰則の適用がある前に、労基署からの是正指導等によって未払い賃金問題の解決が図られることが多いからです。今回の「王将」のケースが、まさにそれにあたります。

もっとも、一旦刑事的なペナルティを受けると、例えば、ある程度の期間は介護施設事業の指定が受けることができなくなる等(介護保険法86条)の不利益を被ったりするので、注意が必要です。

経済的損失が大きい民事的ペナルティ

■民事的ペナルティ
次に、民事的なペナルティとしては「①未払い賃金の支払」「②遅延損害金の支払」「③付加金の支払」があり、経済的なペナルティが発生します。

①未払い賃金の支払
これについては「支払うべきものをきちんと支払う」ということなので、ペナルティと言えるかどうかは微妙なところです。なお、賃金債権の時効は2年(労働基準法115条)です。裁判になると2年分請求されるケースが多いのはこのためです。

②遅延損害金の支払
意外とダメージが大きいのが遅延損害金です。支払が遅れたことに対する損害金で、利息と同じようなものです。遅延損害金は、使用者が法人の場合、各支払期日を基準にして年6%かかってきます。また退職していた場合には、退職日の翌日からは年14.6%もの損害金が発生します。

③付加金の支払
付加金は、あまり知られていないかもしれませんが、労働基準法114条に定められている特別なペナルティです。これは、労基法違反があったからといって直ちに科されるものではなく、裁判所が事情を考慮して判断します。ただし、付加金は未払い賃金と同額が科せられるので、その経済的損失は大きいものといえます。

以上のように、未払い残業を巡っては、様々なペナルティが科せられます。未払い賃金問題を発生させないために、就業規則や雇入れ通知書のチェック、勤怠管理等、日ごろの労務管理をしっかり行うことが何よりも大切です。

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